意識するだけで穏やかな心を取り戻す『呼吸の本』
#本
あなたは1分間で何回呼吸をしていますか?
「●回以上は赤信号!」などと、どこぞの健康番組のようなことを言うつもりはないのですが、導入としては数が一番分かりやすいと思うので、つい。
アメリカの研究者によれば、「普通の人の1分間の呼吸回数は平均13回で、男性は12〜14回、女性は14〜15回、15回以上がストレス信号」だそうですが、「まあ10回から12回、13回でいいんじゃないですか。(中略)あまり多くを求めないでその人が健康で生きられればいい、という軽い気持ちのほうがいいと思います。(中略)一生懸命やっちゃだめです。呼吸は頑張らないのがいいんです」と、この『呼吸の本』(サンガ刊)で書いているのは、産業カウンセラーで、厚生労働省認定ヘルス・ケアトレーナーの加藤敏郎さん。いわば「呼吸の先生」です。
そして、生徒は詩人・谷川俊太郎さん。『呼吸の本』は、定期的に加藤さんから呼吸法のレッスンを受けているという谷川さんによる呼吸についての疑問・質問と、それに対する先生の答え、という形で構成されています。
息をする、という今この瞬間にも無意識に行っていることを、「呼吸法」として意識して行うのは何のためなのかという質問に対して先生は、「呼吸を意識することは、心を意識すること。意識して呼吸するのは心の汚れ(生きている中で溜まる、不安や怒りといった思い)を取るため」だと言います。意識して呼吸することで、穏やかで安らかな心を取り戻すことができるそう。
本書には、「気づき」や「言霊」、「宇宙」といった壮大な言葉も出てきて、読んだだけでは飲み込むのが難しい部分もありますが、この本では付属のCDで「加藤メソッド」の呼吸を「習う」ことができます。
このCDには、加藤さんによる呼吸法の誘導が収録されていて、言われた通りやればOK。誘導とは、例えば「足の裏を意識してください。まず最初は、足の裏で吐きます。ただそう思うだけです」といったもの。とにかく息を吐いて吸うだけなので、難しいことは一つもありませんが、これまで呼吸法に触れたことがない人にとっては、「呼吸といってもいろんなバリエーションがあるんだ」と新鮮に感じられるかもしれません。
ちなみにこのCDは、加藤さんがお寺で谷川さんにレッスンしている音声を録音したもの(谷川さんの音声は入っていませんが)とのことで、バックにウグイスの鳴き声やお寺の「チーン」という鐘の音が聞こえるのがいい雰囲気なのですが、カラスの鳴き声まで入っていたりして、「いかにも」なリラクゼーションCDらしくないのが、かえって心地良く感じられます。
長さは49分。毎日49分時間を確保するのは厳しいという方も多いかもしれませんし、仰向けに寝てやる部分もあるので、英語学習CDのように「通勤途中でもOK!」というわけにもいかないのですが、逆に、ジムに行ってヨガのレッスンを受けることを考えてみれば、時間的にも費用的にも手軽です。何よりも呼吸法をやった後は、「ア●パンマンが新しい顔をもらった時ってこんなかも!」と思うほどの清々しさですよ。
この週末の時間がある時にでも、いかがでしょうか?
(文=萌えしゃン)
●かとう・としろう
1946年広島生まれ。国際フェルデンクライス連盟認定公認講師。厚生労働省認定ヘルスケア・トレーナー。産業カウンセラー。横河電機グループや医療法人などを通して、加藤メソッドのレッスンを全国各地で開催。
●たにかわ・しゅんたろう
1931年東京生まれ。詩人。52年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。詩作を中心に作詞、翻訳、劇作、絵本、映画脚本・監督などジャンルを超え活動している。62年『月火水木金土日のうた』で日本レコード大賞作詞賞、75年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、82年『日々の地図』で読売文学賞、ほか受賞・著書多数。
スゥー。ハー。
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