オーナーのドヤ顔もご愛嬌 奇想あふれる世界のホテル24『可笑しなホテル』
#本
カウチサーフィンというサービスがじわじわと流行っている。コミュニティサイトに登録した会員同士が、無償で宿泊施設(自宅)を提供しあい、現地の案内をするという相互案内システムだ。旅行先現地の生活をそのまま味わえるとして、現在246カ国、約295万人の会員が登録しているという。
旅行に行くなら現地の空気と非日常を楽しみたいが、いきなりカウチサーフィンは少し心配かも。そんな人におすすめしたいのが『可笑しなホテル』(二見書房)。ホテル・ジャーナリストのベティーナ・コバレブスキー氏が、世界の一風変わったホテルを紹介した本だ。以前、当サイトで紹介した『可笑しな家』(二見書房)の姉妹本だと言える。北欧から南洋まで、著者が自身の足で取材した24軒の宿は、どれも奇想なアイデアにあふれたものばかり。ただ”ヘン”なだけではなく、一度泊まってみたいと思わせる宿だ。大きなサイズの写真がふんだんに使われ、宿の料金、宿周辺の見どころなども記載された旅行ガイド的側面をそなえた内容となっている。
昔、使われていた監獄を改装した「監獄ホテル」(スイス)や、世界遺産カッパドキアの洞窟に泊まれる「古代穴ぐらホテル」(トルコ)、アフリカの大地を屋根なしで楽しめる「サバンナの青空ベッド」(南アフリカ)など、いずれも一般の宿では味わえない特別な魅力にあふれている。本の表紙になっているのは木製犬型ホテル「ウィリーくん」(アメリカ・アイダホ州)。農場の真ん中にどーんと建っている、豪快で愛嬌たっぷりのかわいいお宿だ。
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他にも、大きなワイン樽を改装した「ワイン樽の宿」(ドイツ)や、インド洋の孤島にたたずむ「珊瑚礁ホテル」(モルディブ)など、収録された24軒のホテルは、いずれも現地の魅力を最大限に生かした造りになっている。『可笑しなホテル』は、実にその土地土地に深く根付いたものなのだ。ユニークなオーナーのドヤ顔も旅のスパイス、可笑しなホテルでのバカンスは、旅行会社のパック・ツアーでは決して味わえない素敵な旅になることだろう。
(文=平野遼)
●ベティーナ・コバレブスキー
トラベルライター、写真家。普通の観光旅行とはひと味ちがった旅が好き。とくに個性的で風変わりな場所や人物を好んで取材する。ドイツとイギリスのテレビ局で番組づくりにも携わっている。ある時オーストラリアの「地下洞窟ホテル」の噂を耳にして、世界中の”すごいホテル”を求めて旅立つ。ユニークなホテル・オーナーに出会い、その情熱に啓発されて本書が生まれた(ドイツ、イギリスでも刊行)。現在、ドイツのマインツに拠点を置いて、新たな発見の旅を続けている。
●【訳者】・松井貴子(まつい・たかこ)
1971年三重県生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、出版社勤務を経て翻訳家に。訳書に『女優の朝』『DEPP(デップ)』『ダ・ヴィンチ 天才の仕事』『人体解剖図』『月の歩き方』(以上、二見書房)などがある。
居心地はどうなんだろか。
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