学校からの帰り道、狂気の刃物男とのすれ違いが青年の夢を絶った……
#事件 #殺人 #犯罪 #日本"未解決事件"犯罪ファイル
何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。
第18回
京都精華大学生通り魔殺人事件
(2007年1月)
2007年1月15日午後7時50分ごろ、京都市左京区岩倉幡枝町の歩道で、当時20歳の千葉大作さんが、小型の鋭利な刃物で胸など全身を刺されて死亡した。刺し傷は十数カ所あり、きわめて残忍で強い殺意を感じさせる犯行だった。
事件当時、千葉さんは京都精華大学マンガ学部マンガ学科の1年生。仙台に育った千葉さんは、漫画家になる夢を抱き、1年の浪人生活を経て世界初のマンガ学部として知られる同大学の同学部に合格。将来への希望あふれる大学生活をスタートさせてから間もない悲劇だった。事件は、千葉さんが学校から友人宅に向かう途中の午後7時40分ごろ、自転車で学校の駐輪場を出た直後に起こった。
現場は京都市の北部、鞍馬山の麓に位置する叡山電鉄鞍馬線・木野駅から南に約100メートル、京都精華大学から南東に約600メートルの場所。周辺は一戸建て中心の住宅街で、周辺には田畑が多いのどかな光景で、とても残忍な事件が起きるとは思えない閑静な場所である。
千葉さんと同じく、刺した犯人も自転車に乗っていた。畑に沿った歩道で、千葉さんと犯人が自転車ですれ違った直後、事件は起きた。第一発見者の男性が現場を通りがかった際、「畑で倒れている千葉さんと、歩道に座り込んでいる若い男を見た」という。男は、顔を見られたくないかのように俯き、その隣には自転車があった。発見者の男性は一度通り過ぎたものの、不審に思って再び現場に戻ると、男性と反対の方向に逃げたためか、犯人の姿はなく、自転車も消えていた。歩道には、大量の血を流しながらも携帯電話で友人に助けを求めるメールを打つ千葉さんがしゃがみ込んでいて、畑の中には千葉さんの自転車とカバンが落ちていた。千葉さんは、全身十数カ所を刺されながらも、まだ意識があり、「通報してほしい……」と力を振り絞って発見者に懇願した。京都府警によると、通報があったのは午後7時52分。しばらくして救急隊員が到着し、千葉さんは病院に搬送されたが、直後に帰らぬ人となってしまった。
一体、何がきっかけで千葉さんは凶行に巻き込まれてしまったのだろうか? 千葉さんは、救助に当たった救急隊員に、「知らない男に刺された」と話している。また、事件が起こる直前、現場で犯人と千葉さんが口論しているところも目撃されている。犯人は上半身を左右に揺すりながら、「アホ!」「ボケ!」と言い放ち、関西弁をまくし立てながら激高していたという。千葉さんのカバンに入った財布には現金が残されていたため、金品目的の犯行ではなかったと見られている。
京都府警の調べでは、現場には2台の自転車の急ブレーキ跡があったことが判明。現場の歩道は自転車がすれ違うためのギリギリの幅しかなく、犯人と千葉さんのトラブルになった原因は、自転車同士がすれ違う際の接近や接触によるものではないかという見方も強い。しかし、普段から刃物を持ち歩き、突然の路上でのトラブルで殺人に及んだ犯人の”異常性と凶暴性”を考えれば、事件のきっかけにどれだけの意味があるだろうと思わざるを得ない。何かのトラブルや口論があったとしても、千葉さんに命を奪われる理由は微塵もないのだ。
千葉さんは明るく温厚な性格で、人望も厚かったという。友人や大学の講師は、「彼が恨まれるわけがない」と口をそろえる。また、「絵が抜群にうまく、とにかく研究熱心だった」という。事件から約1年後、京都精華大学で千葉さんを指導した講師が、「事件を風化させてはいけない」と、千葉さんが殺害された状況や犯人の特徴をマンガとして描いた小冊子を作成。遺族や友人たちと街頭で配布し、情報提供を呼び掛けている(現在、この小冊子のマンガはインターネットでも公開されている)。
現在も京都府警は数十人体制で捜索を行っているが、凶悪犯はまだ野に放たれたままだ。事前に準備された犯行ではなく、自転車に乗っていたことを考えても、犯人は現場からそう遠くない場所に住む人間であることは間違いない。それだけに、近隣住民の不安は尋常ではないだろう。
将来のある青年の夢を奪った凶行を、我々は忘れてはならない。漫画家の夢が潰えた千葉さんに、犯人が逮捕されたという報告ができる日を待ち望みたい。
(取材・文=神尾啓子)
<情報>
【犯人の特徴】
・20~30歳
・身長170~180cm
・髪はセンター分け(ボサボサ)
・上下黒っぽい服装
・黒っぽいママチャリ風の自転車に乗っている
・興奮すると顔や上半身を左右に振り言葉尻に「アホ」「ボケ」を連発し、目の焦点が合わない
<連絡先>
京都府下鴨警察署
「左京区岩倉幡枝町における殺人事件捜査本部」
TEL.075-703-0110(代表)
TEL.0120-230-663(フリーダイヤル/24時間受付)
告ぐ。
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