「特撮」6年ぶりの復活ライブ! 休止後の姿はソリッドでシンプルなロックバンドか!?
#さよなら絶望先生 #大槻ケンヂ
Ace of Spadesなど延々と流れていたモーターヘッドのSEがフェイドアウトし、メンバーが姿を現わす。
「6年ぶりの特撮、5年後の世界!」
大槻ケンヂが叫ぶと、ソリッドなタテノリの「5年後の世界」「オムライザー」で2005年以来、6年ぶりのライブが始まった。05年の前作『綿いっぱいの愛を!』(PRHYTHM)から6年後の6月29日に発売されたニューアルバム『5年後の世界』(キングレコード)の発売を記念した「特撮 2011 LIVE! 『5年後の世界』発売記念ツアー」。先日行われた新宿LOFTに続く東京公演第2弾、場所は渋谷O-EAST、時は7月9日。
「ソリッドでシンプル」――。それが2011年版特撮の本領だ。
そのわりにはお家芸的なご近所ネタMCを随所に挟み、特に若い女子の笑いを誘っていたのだが、芸能的な色を抑えて楽曲を立て続けに演奏した方がよさそうな雰囲気にはなっていた。
「特撮の場合はダラダラしゃべっていると、ありまっちゃん(ARIMATSU/Dr.)やナッキー(NARASAKI/G)の早く行けっていうのが……(NARASAKIのザクザクしたギターリフ)ちょっ、ちょっとしゃべらせて」
「先日こんな話があって、なんてことはしねぇよ!」
「先日ですね……」
80年代のパンク、インディーズシーンからは尖った人材が非常に多く現われた。大槻ケンヂと三柴理もその一人で、当時の筋肉少女帯で超絶プログレッシブロックナンバー「高木ブー伝説」を奏でていた。
筋肉少女帯の離合集散があり、アフター筋少の核たる「パンクチーム」(バンドにかぎらない)として大槻ケンヂが立ち上げた特撮にも、もちろんメンバーの変遷はある。それでも大槻ケンヂと三柴理は第一線で活動し続けているし、NARASAKI、ARIMATSUも同様だ。生き残り、フロントラインに立ち続けていることで、特撮と特撮メンバーの価値は増している。
幅広い音楽ジャンルを横断しつつ、ハードコアパンク/スラッシュメタルの安定したリズムに三柴理の変幻自在のピアノと大槻ケンヂの文学的な詩が絡み合う音像が特撮スタンダードとして確立しているが、そのイメージを増幅したのはアニメ『さよなら絶望先生』シリーズに用いられた楽曲群だ。4曲目で第一期『さよなら絶望先生』OPの「人として軸がぶれている」でそのイメージを押し出したこの日の特撮は、「ロードムービー」「アングラ・ピープル・サマー・ホリディ」といったハードコアではない面の特撮を訴求すると、再びMCに。ブースカのぬいぐるみを手にしたトークコーナーだ。
7曲目の「文豪ボースカ」からは、歴代シングルや初期アルバム『爆誕』『ヌイグルマー』(ともに徳間ジャパンコミュニケーションズ)に収録されたおなじみのナンバーが並ぶ。「パティー・サワディー」「ケテルビー」、ニューアルバムにセルフカバーを収録した「ルーズ ザ ウェイ」「ロコ!思うままに」、「アベルカイン」「バーバレラ」。
「ヌイグルマー」のあと、このステージでは不在である絶望少女達のコーラスパートをオケに任せた「林檎もぎれビーム!」で上昇感を醸し出し、ラストは「テレパシー」で締めた。
野郎の野太い男声による「特撮コール」に応えて出てきたメンバーは、ニューアルバム最長、8分近い大曲「追想~霧が晴れた日」でアンコールを始める。さらに「空想ルンバ」など3曲を演奏し、最後は前作アルバムのタイトルナンバー「綿いっぱいの愛を!」。6年後のタイトルナンバーに始まり、6年前のタイトルナンバーに終わる円環構造は計算し尽くされたもののようだ。
ナゴムレコードからのリスナーもいれば『さよなら絶望先生』のファンらしき少女もいるというカオスなオーディエンスすべての胸をいっぱいに満たす、そんなライブだった。
再始動。
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