ドイツ・ミュンヘンで「FUKUSHIMA」風評被害 脱原発から脱日本食への動き
#海外 #原発 #東日本大震災
東日本大震災の発生からまもなく4カ月が経過する。筆者は現在、ドイツ南部の都市ミュンヘンに滞在しているのだが、震災後間もなくだった4月の訪問時に欧州のあちこちで目にした「Fukushima-Daiichi (福島第一原発)」という言葉はすっかり姿を消している。
だからだろうか、ドイツ人は日本人を見掛けると、決まってその後の「Fukushima-Daiichi」の様子を尋ねてくる。ホテルで、レストランで軽いあいさつを終えると、「ところで」と切り出してくるのだ。
欧州で最も原子力に批判的とされるドイツでは、「Fukushima-Daiichi」の事故を受けて、反原発の動きが強まり、各地でデモが発生。原発全廃を先送りにしていたメルケル政権も6月、大衆の声を反映する形でついに完全廃止を宣言するに至ったほど。それだけに街の人々の原発に対する関心は高いのだ。
そんなドイツのミュンヘンで今、思わぬ風評被害に遭っているのが、日本食レストランだという。日本食レストランと言っても、肉・魚・野菜など食材のほとんどは欧州で調達されている。店を仕切っている人だって、大抵の場合は”なんちゃって日本人”。マレーシアやバングラデシュからやってきた日本とは無縁のアジア人だ。
ミュンヘン在住の知人は、「まあ、ラーメンに入ってる海苔なんかは日本から持ってきたものもあったんだけど、それも今は入ってない。完全な風評被害だね。ラーメンの具だって、白菜やゆでたまごぐらいだから」と言うが、客足は遠のくばかりのようだ。
「(ミュンヘンの位置する)ドイツ南部は、チェルノブイリ原発跡地(旧ロシア、現ウクライナ)からだいたい2,000キロぐらいの位置にある。それでも、空中に舞った放射性物質が雨で地面に落ちて土壌を汚染しており、爆発事故から25年が経ったいまでも、この地域では例えばキノコなどの栽培が禁止されている。だから、みんな敏感になっている」(同知人)
近年、日本食レストランは世界中でその数を伸ばし「Sushi(寿司」や「Ramen(ラーメン)」は日本を代表するモノとして認知されてきた。しかし震災後、原発の問題もあってその様子は変わりつつある。
日本で一部の地域の茶葉から高濃度のセシウムが検出され出荷停止に至る事態もあったが、それ以前からレストランでは日本茶を控えていた店も少なくないという。脱原発の次は、脱日本食の動き。風評は思わぬ地で、思わぬ広がりを見せている。
(取材・文=栗原正夫)
何が正しいのか。
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