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【散歩師・朝井がゆく!】vol.4

“ライター”のプライドを懸けて「売り込みナイト」にガチで挑戦! 

writer1.JPGいざ、出陣!

ゆるいものならなんでも大好き♪ ロリ顔ライター・朝井麻由美が気になるスポットをご案内します。

 今回足を踏み入れたのは、ノンフィクション誌「レポ」presents「フリーライター大募集!公開!ライター売り込みナイト!生ライブ!ライターオーディションイベント」。仕事がほしいライターや、駆け出しライターが登壇し、1人5分の持ち時間で企画をプレゼンして、審査員が評価。「レポ」(http://www.repo-zine.com/)編集長の北尾トロさんの目にとまれば、「レポ」から執筆依頼が舞い込む、というイベントです。また、観客には、書き手を探しているメディア関係者もたくさん見に来るとのこと。

 「『レポ』で書きたい」という下心と、「観客として来ているメディア関係者から新規の仕事をもらいたい」という下心と、「当連載のことをプレゼンで宣伝してPVを上げたい」という下心、そして、「壇上に上って目立ちたい」という下心――とにかくこれ以上ないたっぷりの下心ばかりを引っ提げて、会場の「東京カルチャーカルチャー」(運営:ニフティ/http://tcc.nifty.com)へ向かったのでした。

 出場者13人中8人が女性と、意外にも女性が多いことに驚きました。控えスペースは隅っこに数人の男性陣、真ん中に女性たちが陣取り、高校の文系クラス状態。表面上は「普段なんのお仕事されてるんですか~?」と仲良さげに振る舞う女性陣ですが、あくまでもライバル同士。キャッキャと楽しく談笑しつつも、内心で腹の探り合いをするような、微妙な空気が流れていました。

writer2.JPG写真右奥にひっそりと写っている2人が男性。あとはすべて女性。

 そんな中、一人、また一人と壇上でプレゼンをしていきます。そのプレゼン内容も、「昔、彼氏(現・旦那)が出家しました。私、”お坊さん萌え”してます」「私の周りには変なおじさんばかりが寄ってくるんです」「私、ノーブラで就活しています!」等、”ワタシ変でしょ! 個性的でしょ! ね? すごいでしょ?”と言わんばかりのツワモノ揃い。

 前のめりな出場者に反して、審査員は容赦なく手厳しいコメントを連発。審査員席に座っていたのは、北尾トロさんの他、「レポ」執筆陣の乙幡啓子さん、下関マグロさん、えのきどいちろうさん。

 専門的な内容を分かりやすくプレゼンした出場者に対し、

「それは”企画”ですか? 今プレゼンしていただいて、知らなかったことばかりで、すごく勉強になったなー、と思っただけだったので……」

 彼氏が出家したという「お坊さん萌え」プレゼンには、

「出家した彼氏は、今の旦那さんなんだよね? あなたそれ、ノロケ?(笑)」

 また、非常に練られていて上手なプレゼンに対してさえも、

「企画の立て方はうまいけど、それ、本当に実現できるの?」

 さらには、「ノーブラで就活していた」と渾身のカミングアウト、もとい、プレゼンをした美人現役女子大生の企画も、

「『レポ』で書くなら、”ノーブラ”程度では全然ダメ。パンツ一丁で生きていくくらいじゃないと」

 と一蹴されてしまいました。……キビチイ。

writer3.JPG歯に衣着せぬ審査員のみなさん。女子大生の
「ノーブラ発言」にもまるで動じません。

 そして私も檀上でプレゼンするも、例に漏れず、完膚なきまでにたたきのめされたのでした。

writer4.JPG恥を捨てて、”ロリ顔ライター”アピールを
必死に繰り返したのです……。

 「あの、日刊サイゾーで、”ロリ顔ライター”として『散歩師・朝井がゆく!』という顔出しの冠連載を持たせていただいてまして。他に、男性誌を中心にお仕事しています」

審査員・下関マグロさん 「あなた、僕よりも全然ライター経験おありですね(笑)」

 「えっ、とんでもない! えーと、企画なのですが、昔、児童劇団に所属していた経験があるので、経験者しか知らない子役オーディション事情などの裏話を語れます」

一同 「……。」

 「(くっ……)あと、私、実はコラムニストの泉麻人の娘です。私しか知らない家での父の姿についてを書けます」

 と、ズルいことを承知で切り札を出してみたものの、客席・審査員席ともにさほど盛り上がらず。中央線カルチャー臭がぷんぷん漂う「レポ」と親和性の高いネタかと思ったんだけど、……ダメ?

kyaku.JPGしーん。

 審査員の北尾トロさんは、「面白い企画だとは思うけど、『レポ』じゃなくて、もっとギャラの高い媒体で書いた方がいいでしょう。『レポ』なんかギャラ安いんだから」と苦笑。さすがは”ノーブラ女子大生”にも陥落せぬコワモテ審査員です、取り付く島もありませんでした。

writer5.JPGシビアなコメントに、ちょっぴり泣いた。

 この厳しい審査の中、見事大賞の座を射止めたのは「私の周りには変なおじさんばかりが寄ってくるんです」と、今まで寄ってきた変なおじさん遍歴を自作の紙芝居で発表した中島とうこさん。

writer6.JPG左端に立っている女性が、中島とうこさん。

 審査員による決め手は、「中島さんは、Mとか、不幸体質のような印象を与えるから、変なおじさんが寄ってくるのかな? そのあたりの事件遭遇率の高さに、”ライターっぽさ”を感じた」とのこと。実際、出場者でただ一人、谷間と生脚を見せつけるようなミニスカワンピに、バッチリフルメイク。控えスペースではやや離れたところで煙草をくゆらす中島さんの姿は、最初からどこか異様な雰囲気を醸し出していました。しかし、ライター未経験の中島さんが”ライターっぽい”と言われ、曲がりなりにもプロとして数年やってきた私は華麗にスルーされたわけです。この先、私はどうすれば……? 廃業の危機?

 審査員曰く、中島さんの”変なおじさん引き寄せ”や”不幸体質っぽさ”然り、「書き手自身が大変な目に遭っているような、汗臭さを感じるものを読者は読みたい。普通の人が持っている普通の生活や、仕事、家庭、そういったものを捨てる覚悟が必要」だそう。著名なエッセイストの方々の多くが、散々な目に遭っているプライベートを切り売りして、読者にウケていることを考えても、とても納得のいくお言葉。

 大賞授与を終えて、控えスペースに戻ってきた中島さんに対して、「すごいですねー! おめでとうございます♪」と素直に称賛の辞を浴びせる出場者たち。え、みんな悔しくないの? もっと、歯ぎしりとかしないの? そんな心が美しい彼らを尻目に、私は端の方でブスッとしながらこの日交換した名刺の枚数を、1枚、2枚、と数えていました。プレゼンを見て気になった人がいたら、観客が各々、出場者控えスペースに赴いて名刺交換にやってくる、という仕組みの中、私に名刺交換を求めにきてくださった人数は、実は、全出場者中、最多だったのでした(たぶん)。

meishi.JPG某版元編集者さんとの名刺交換。大賞は取れなくても、
一応、地味にモテてはいたんです!(負け惜しみ)。
交換した名刺の束だけが、私の心のオアシス。

 さらに後日、雑誌「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)の編集者さんから、「イベント当日は私用で名刺交換できずに帰ってしまったのですが、ぜひ朝井さんにお仕事をお願いしたい、と直感的に思ってご連絡差し上げました」とのメールが! わざわざ人づてに私の連絡先を調べてくださったようです。カルチャー好きにとっての憧れの雑誌「ダ・ヴィンチ」様からじきじきにラブコールをいただけるとは! なんだ、モテるじゃん、私。女としての自信……じゃなかった、ライターとしての自信を喪失しつつありましたが、これでどうにか面目を保てそうです。やれやれ、めでたしめでたし。
(写真=永利彩乃/取材・文=朝井麻由美)

ライターになるための練習問題100

名乗ったモン勝ちですが。

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最終更新:2013/09/12 15:45
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