“医学あるある”を徹底解説『あの医学都市伝説ってホントなの?』
#本
「おっぱいはもまれると大きくなる」「傷口は消毒して乾燥させると治りが早い」「筋肉痛が遅れてくるのは加齢のせい」といった、ちまたに出回る人体に関するうんちく。人々の間でまことしやかに語られ、聞いて「なるほど」と思うものも多いですよね。
でも、この手のトピックで困るのは、一体何が本当なのかよく分からないこと。ある日突然、真逆の説が持ち上がり、「あれ、どっちが本当?」なんてこともざらにあります。そんな「知識」というにはあやふやな、体や健康についての数々の説を「医学都市伝説」として取り上げ、そのウソ・ホントを医学的根拠をもとに解説したのが、森田豊著『あの医学都市伝説ってホントなの?』(青山出版社)です。
思えば「医学」と「都市伝説」というのは面白い言葉の組み合わせです。「都市伝説」と言えば「口裂け女」に代表されるような言い伝えのことで、聞き手の想像力を掻き立てる語り口によって、「もしかしたら本当かも」と思わせられる点がポイント。それに対して、「医学」と言えば、「根拠があって、結果がある」という理論第一、実証第一というイメージ。
ハーバード大学医学部で専任講師を務めたこともあるという現役の医師・医療ジャーナリストの著者が、その「医学」ネタを「都市伝説」として扱っているのは、ちょっとシュールに思えます。
とは言え、ホメオパシーなど「代替医療」が関係して人命にかかわる事件・事故が起きていることも考えれば、例えば本書でも取り上げられている「朝のジョギングは体にいい」など、一見害がなさそうで、「医学に基づいている」と思われるような説に対しても、本当なのか、どうしてそう言われるようになったのか、どういう根拠があるのか、という疑いの視線を向けてみるのは必要なことと言えるでしょう(実際、本書によれば、朝は脳梗塞などになりやすい時間帯のため、ジョギングはヘタをすると死につながる危険性もあるそう)。
と、少し難しげなことを書いてみましたが、本書はお堅いこと抜きで読めるものに仕上がっています。一つ一つの医学都市伝説について、まず「これはウソ」「これはホント」と書かれているので、最初はそれだけ見て、興味をそそられたものについて解説を読み進める、という読み方もできます。「医学的根拠」は分かりやすい言葉で解説されているし、コミカルでかわいらしいイラストが至るところに散りばめられているのも、見ていて楽しくなります。
ちなみに「健康・医学ネタ」が大好きで、メディアなどで入手したネタをあちこちで披露、そしてしばしばウザがられるのが趣味のひとつである筆者は、この本を読んで、「あれってどっちがホントだっけ」といった類のネタの白黒を再確認したり、「てっきりホントだと思ってたけど、ウソだった!」と常識をくつがえされたりしただけでなく、「男女の産み分け」についてなど、知らなかったネタを仕入れることもできました!「また始まった」と思われること必至ですが、披露する日が来るのが楽しみ。
また、筆者のような「健康・医学ネタ」ヲタを撃退したい人にも、ぜひ援護射撃として使ってもらいたい一冊です。
(文=萌えしゃン)
●もりた・ゆたか
1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師に。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組み、これまで言い伝えられてきた医学常識の真偽を徹底検証している
ダマされてた……。
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