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「リスナーを裏切っていきたい」サブカル系バンド・アーバンギャルドが目指す次のステージとは?

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 ポップでエレクトロニカで「病的にポップ。痛いほどガーリー」な音楽を目指し、日本の音楽シーンのアンダーグラウンドで活躍してきたトラウマテクノポップバンド・アーバンギャルド。「水玉」「少女性」「処女」をテーマに、音楽・映像・詩の朗読などを駆使した立体的なライブパフォーマンスにも定評のある彼らだが、7月20日にユニバーサルJからシングル「スカート革命」でメジャーデビューすることが発表された。


 キッチュで、時に暴力的ですらあるポップな世界観でファンを魅了し続けてきた彼らが、自由な表現を可能とするインディーズではなく、なぜメジャーシーンを目指すのか。そして、彼らが一貫して描き続けてきた物とは一体何なのか。次のステージに向かう今だからこそ、あらためて聞いておきたい質問をバンドのフロントマンであるヴォーカル・松永天馬と浜崎容子にぶつけてみた。

■メジャーに切り込む新曲「スカート革命」!

──いきなり新曲「スカート革命」を聴かせていただいて、PVも拝見したわけですが、メジャーに行っても全力で攻めてますね!

松永天馬(以下、松永) そうですね。今回はボーダーラインをユニバーサルJさんといろいろやりとりしまして、この形に落ち着きました。

──ユニバーサルJさんから「これはやめてくれ」とか「あれはダメ」とか制限はかからなかったんですか?

松永 それは意外に言われてないですね。野放しです。放牧されています

浜崎容子(以下、浜崎) ユニバーサルJさんからは「出してきたものがダメだったら、ダメって言うから」って言われています。今のところセーフみたいです(笑)。今は泳がせておいて、どういう所に入れたらいいのかなって探っているのかも。

松永 気が付いたら、だんだんユニバーサルJさんの年間許容量が増えていってるかもしれませんが。

──もし「この表現がダメだ」と言われたら、それは受け入れますか?

松永 ダメだと言われても、その枠の中で表現するのが面白いと思うんですよ。浜崎さんはゲンズブール(※1)が好きなんですが、彼はフランス・ギャル(※2)に「アニーとボンボン」っていう一見アイドルソングなんだけど、実はフェラチオを意識したような曲を歌わせているんです。ここで「フェラチオしたいぜ!」って言ってしまったら面白くもなんともない。隠ぺいし、ぼやかすことで出てくる面白みがあると思うんです。隠すことで燃える、みたいなものがあるので、我々もそういう方法で一番いい物を作りたい。

浜崎 「スカート革命」のPVでも、パンチラを全部イチゴで隠してるんです。「あー! もうイチゴ邪魔だよ!」っていうのがいいんですよ。それをコマ送りで見ちゃったり。

松永 あれも別にイチゴで隠せって言われたわけじゃないです。僕がそういうフェチなだけなんです。だから、たとえ制限されたとしても、僕らはそういう所を楽しむと思いますよ。

■アーバンギャルド的POP論

──ここ最近の芸能というと、どちらかというと安定したもの、変化しないものが市場に氾濫していますよね。テレビのバラエティー番組だと、ひな壇芸人が並んで身内ネタで盛り上がる。音楽だと「共感」を歌う。ある程度、予定調和に則った娯楽が世にあふれている中、アーバンギャルドはもともと芸能が持っていたアングラさ、何をやるのか分からない怪しさを持っていると思います。

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松永 そうですね。POPっていう言葉は「爆発する」とか「弾ける」という言葉なんです。つまり我々はPOP「される」んじゃなく、我々がPOP「しないといけない」んですよ。受け手の脳みそをPOP「する」ということだと思うんです。だから、自分たちがPOPされてやんわりしたもの、ゆるふわなものを作っていればいいということは全然ないんですよ。本来ポップスっていうものは、表現者がPOPするものだったんですよ。でも気が付いたら表現者がPOPされている。だから共感なんてねえ……。共感はしなくていいですね(笑)。

浜崎 共感っていうか、「痛いところを突かれた」っていうのがアーバンギャルドの歌詞にはある気がしますね。「言われたくなかった」「できれば隠したかった」ものをズバっと言っちゃってる。そういうところを嫌だと思ってもらっても構わないし、反対にドキッとして聴いてみよう思ってくれても構わない。ただ、この歌はこういう風に思ってくださいと投げかけるのは絶対にNGだと思っています。そう言ってしまったら、もうそういう風にしか世界観が広がらないから。受け取った人がどう受け取ろうと自由というスタンスでやっています。でも、それって無防備な状態ということでもあるので、攻撃される時はすごくされるんですけどね(笑)。

松永 自分たちはマイノリティーな人間というよりも、誰もが持っているマイノリティーな感情を歌っているだけなんです。僕らは奇をてらっているという意識はなくて、まっとうに作品を作っているという意識が強いです。

──一見してアーバンギャルドの作品は「病んでいる」側のものにも見えますが、実は普遍的なテーマを歌っていたと。

松永 僕には描かなければいけないものとして病や傷があって、それは自分の中にもある感情なんです。つまり自分の中にあるマイノリティーな感情を描いているだけなんです。だからアーバンギャルドってある意味硬派だし、汗臭いと思いますよ。

■目標は西野カナとの対バン!?

──アーバンギャルドはさまざまな音楽ジャンルを横断しているバンドですよね。

松永 パンクバンドがずっとパンクをやっていた所で、突然アニメソングみたいなのを歌い始めたらそれこそパンクじゃないですか。そういう意味ではアーバンギャルドはパンクだと思います。歌っている曲は全然違うけど、やっていることはパンクだと思います。

──精神的には反体制のような。

松永 元々、テクノポップというもの自体が資本主義に溶け込みつつ、資本主義に皮肉をぶつけるっていうパンクな存在だと思うんですよ。だからテクノポップっていう風に自分たちで名乗っているのは、その精神性──一見資本主義に則っていながらも、アイロニカル、シニカルであるというテクノポップの政治性にすごく意識的だからだと思います。

──そんなアーバンギャルドもメジャーデビューすることで、「今までと変わってしまうのではないか?」と心配するファンもいると思うんですが。

松永 自分たちのやるものが、「制限されるか否か」という意味で変わったりはしません。段階の移行としてメジャーデビューなんです。これまでに出してきた3枚のアルバムの延長線上にある通過点として、メジャーデビューがあると思っています。そして、自分たちがやっていることがマニアックだという意識もないです。自分たちがやっていることは普遍的だと思うので。

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──アーバンギャルドは、いわゆる「病んでいる」状態やそういう子達の心情を扱った、ややアングラな題材を歌ったりもしていますが……?

松永 現代人は誰もが病んでいると思うので、「病んでいる」という事実はメジャーなものだと思います。だから、それをより広いところに訴えかけていくための方便として、メジャーデビューを選んだんです。それに、うちはどんどんリスナーを心配させていきたいんです。だってバンドなんていつ解散するかわからない。今、バンドが続いていること自体が奇跡だと思うので、僕らの一瞬その一瞬を見てほしいからこそ変えていかないといけないんですよ。

浜崎 だから、「メジャーに行っても変わらないから安心してね」とは言わないです。メジャーに行っても表現のやり方っていうのが自分たちの中で、やりたいことが突然変わるかもしれない。今までのインディーズでの活動の間でも変わる時は変わっていたと思うので、危機感はずっと持っていてほしいです。

松永 誰もが成長して考え方が変わるように、アーバンギャルドも常に常に変わり続ける。でも、今のこの瞬間は大事にしたい。だから、皆さんもそのバンドが好きだったら好きなうちにCDを買うべきだし、ライブに行くべきですよ。一期一会です。いつその気持ちが変わるか分からないし、いつそのバンドが活動休止しちゃうかもわからないので、そこはけちけちするところじゃないと思います。だからぜひとも会いに行くべきですよ。AKB48みたいに。

──なるほど。それでは、今後どういう活動をしていきたいと思いますか?

浜崎 もう絶対にありえないイベントとか打ちたいですね(笑)。

松永 西野カナや青山テルマと対バンしたいですね。彼女達のファンのギャルとアーバンギャル(アーバンギャルドのファンのこと)が一緒にいるライブ会場って見たくないですか?

浜崎 それは見たい! 一緒にアンコールで歌ったりして、「なんで一緒にいるんだろう」って(笑)。

──わはははは! それ、すごく見てみたいです(笑)。そういえば「小悪魔ageha」(インフォレスト)でも、「病特集」とかやってましたよね。

松永 だから、僕らって意外とギャル受けすると思うんですよ。僕らのファンの中にもギャルの子とかもいるし。

浜崎 いるいる。ギャルの子も意外と手首を切ってますからね(笑)。

──いや~。本当にそんなイベントが実現したら、絶対に見に行きます(笑)。では最後にサイゾー読者に向けてのコメントをお願いします。

浜崎 我々みたいな人間がメジャーシーンに行こうとしているので、その姿を見ながら私達を笑ってくれてもいいし、勇気づけられてもいいですよ。

──ありがとうございました!
(取材・文=有田シュン)

※1 セルジュ・ゲンズブール
1960年代後半から1970年代にかけてフランスのポピュラー音楽において中心的役割を果たしたミュージシャン。『夢見るシャンソン人形』をはじめ、数え切れないほど女性アーティストに楽曲を提供した。

※2 フランス・ギャル
1960年代中期にフランス本国のみならず、日本でも『夢見るフランス人形』で大ブレイクした歌手。

●アーバンギャルド
21世紀東京生まれの「トラウマテクノポップ」バンド。狂った電子音に濃厚なアンサンブル、女性・男性ツインボーカルがはじける唯一無二のサウンド病的にポップ。痛いほどガーリー。童貞処女、オタク、サブカルチャーといったマイノリティへの愛と叱咤激励を込めた詞は現代日本の病理とシンクロし、ネットを中心に熱狂的なファンを生んでいる。
http://urbangarde.net/

スカート革命

7月20日発売。

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最終更新:2013/09/12 17:40
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