【震災3カ月】「サイゾー? 結構読んでるよ」主婦がそう言う福島県いわき市四倉町 現地レポ(4)
#東日本大震災
漁港で知られる福島県いわき市四倉町は、久之浜町と並んで県内で最も震災被害を受けた地域だ。同市の6月14日現在の被害状況は、死者306人、行方不明50人、住家被害は2万7,450棟(うち、全壊・大規模半壊9,300戸)。市内全域で道路や河川、橋梁などに損壊・浸水の被害が発生した。
取材班が前回(3月22日)訪れたときは、まだ街中が瓦礫の山で覆われていた状態。住民の一人が「瓦礫を寄せてやっと昨日あたりから車が通れるようになった。作業したのは地元業者。市外の業者は放射能を怖がって来てもくれない」(40代男性)と嘆いていたのは既報の通りだ(詳しくは前回記事参照)。
市では地震発生から2時間後には県知事へ自衛隊派遣を要請し、同日23時からは陸上自衛隊が災害支援活動を開始(現在も継続中)。復旧は地道に進められ、1カ月後の4月10日には、主要幹線である国道6号線の四倉町から久之浜町間の4km区間で応急復旧が完了し、法面崩落の恐れで通行止めとなった区間もようやく通れるようになった。現在、国道6号線は一部迂回路の利用も含めて全線で通行が可能となっている。
今どうしていることだろう。
3月に取材したエリアを、3カ月後の今回あらためて歩いてみると、住宅街や道路、施設の多くは見違えるように復旧されていた。国道6号線沿いにある道の駅「よつくら港」は、前回は津波の被害で爆撃を受けたかのような惨状をさらしていたが、今回訪れると既に新しいのれんや旗などが飾られ、活気を取り戻したような様相。住民によれば、「販売所だけ土日に営業してるけど、商品が限られているから売り切れたら終わり。駐車場もまだ使えないから、隣の海水浴場の場所を借りてる」とのこと。完全復旧ではないにせよ、できるところから始めていこうという住民の気持ちが伝わってくる。
同町で鮮魚販売を営む「大川魚店」は、自家製のかす漬けやみそ漬け、天日干しの干物などが人気の昭和25年創業の老舗店。今回の津波では多大な被害を受けたものの、6月中には店舗の修繕工事を終え、7月には再開できる見込み。一部で営業も再開している様子で、ご主人のTwitterには時折「本日9:00~16:30まで営業いたします」「脂ののっためじまぐろのお刺身がお勧めです」などのつぶやきも見られる。
一歩一歩前へ進みつつある四倉町だが、いまだ多くの住宅でライフラインが復旧していないのも事実だ。市水道局によれば「まだ550戸で水道が復旧されていません。道路や施設の復旧の道筋が決まらないと、地盤が決まらないところに水道菅だけ先に埋めて直すというわけにはいかないという事情があります」。14日現在で368人の避難所生活者がいるのもそのためで、3カ月が経過した今も厳しい生活を強いられている住民は少なくないのである。
直線だった。式子さんの乾物屋はこの通り沿いにある。
一方、前回の記事で、ゴーストタウン化した県道沿いで乾物屋を営む鈴木式子(すねこ)さんを紹介したが、今回寄ってみると平日ながらお店は閉まっていた。お隣に住む主婦の方にお話を聞いてみると、「今日は定休日だけど、普段は元気に商売してるよ」と教えてくれた。思わず安堵する我々に対し、この主婦は意外な(?)言葉を続けた。
「もしかしてサイゾーさん? こないだの記事読んだよ」
なんと! ここ福島県いわき市の四倉で、「サイゾー」の固有名詞が聞かれるとは。
「サイゾーなんて、ご存じなんですか」
「知ってるよー、結構読んでるよ。これ(携帯電話)でGREEに登録してて、ニュースも配信されてくるから、それ読んでるの」
「ご愛読ありがとうございます」
「サイゾーって、突っ込んでるけど、逆に突っ込まれたりもしてるよね」
その通り。さすがは四倉の母。鋭いつっこみに、こちらは返す言葉もない。とにもかくにも、日刊サイゾーが被災地で主婦層にも読まれていることが明らかになった。
その後、外資系通信社の記者にこのことを話すと、「非常に興味深い」と食い付いた上で、次のような”解説”をしてくれた。
「地方の主婦層にまで携帯ゲームが普及して、そこから情報を得ているという構図は、ある意味で日本的で、そして象徴的だ。ネット情報の影響力が、良くも悪くも強くなっていることの表れ。マスメディアだけが情報を発信する時代でなくなったことは確かだ」
ともあれ、サイゾーはこれからも被災地を含む全国のユーザーへ向けて情報を発信していくだろう。
(文=浮島さとし)
少しずつ、動き出している。
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