被災地レポート「仮払金支払い窓口で働く東電末端社員の対応」
#東日本大震災 #東電
福島第一原発事故の対処をめぐって企業としての威信が揺らいでいる一流企業「東京電力」。
東京電力は関東1都6県と山梨県、さらに静岡県の一部を独占的に事業地域とする電力会社だ。歴史は古く1883年(明治16年)に東京電燈が設立されたことに企業としての歴史が始まっている。その後は半官半民のスタイルで、ほぼ国営に近いインフラ企業として東証一部上場を果たしている。
東電に関する情報は連日のようにニュースなどで報道され続けてきたので、すでに周知のとおりだとは思うが、震災後のトップや役員の対応、企業自体の隠ぺい体質にも注目が集まった。学閥主義は官僚よりも官僚体質と揶揄されるように、社内の派閥争いは熾烈を極めるとの話もあり、世論の批判がその企業風土に集中しているのも事実だ。
それほどのエリート集団が勤めている一流会社であろうとも、原発事故の責任は取らなければならない。避難している住民への補償金支払い義務は当然発生する。しかも金額だけでなく、企業としての誠意も示さなければならない。誠意を示すため被災者への仮払い補償の説明の窓口対応にあたっているのが、このエリート社員たちなのだ。高学歴で一流企業に入り生涯安泰を約束されたはずの当人たちにしてみれば”まさか”の展開だろう。
彼らはどのような態度で被災者に接しているのか。そのことを確かめるべく、南相馬市役所内に臨時設置された窓口で被災者を相手に補償金の支払い手続きの説明に当たる東電社員を取材した。
「このたびはご迷惑をおかけしました」
開口一番、窓口を訪れた被災者に対して謝罪と同時に深々と頭を下げた。そして、補償金の仮払いについて懇切丁寧に説明していく。
世帯当たりの支払額や過払いした場合の返還方法など具体的に細々と説明する。その間、彼らは一様に腰が低い。
「1世帯当たり100万円、単身世帯は75万円を銀行などの口座に振り込みます」
東電社員たちの説明する言葉から聞き取れるイントネーションから、地元(福島)の人間でないことが分かる。今回の補償の件に絡んで、東京から出張してきたのだろう。
南相馬市役所に仮払い金の申請に来る人たちが、福島第一原発事故の被害をダイレクトに受けた地域の被災者であることは、彼らも十二分に承知しているはずだ。
実際、取材中にも怒りをあらわにしている人を何人も見たが、ひたすら謝罪を続けながらの誠心誠意を込めた対応に最後はみな「ありがとう」と言って立ち去っていった。
一人ひとりを相手にするのは、相当な心労であることは容易に想像できる。しかし、そうは言っても簡単に同情はできない。東電に賠償すべき責任があることは誰の目にも明らかで、放射能漏れの被害報告が後手に回ったことも問題視してしかるべきだろう。それほどまでに東電がもたらした被害は甚大なのだ。
現在のところ東電は200億円以上を避難住民たちに支払ったとしている。「お金だけで責任が果たされるものではない」、そんな意見も多く聞かれる。これから東電の責任をめぐる議論はますます活発化していくだろう。
実際に補償のために動く末端の社員たちには、テレビだけでその姿を確認できる経営陣への怒りがそのまま向けられる。だが、責められるべきはあくまで会社であり、その企業体質。そこで働く末端の社員にその場での謝罪を求めても根本的に解決するはずもない。
東電の社員ではなく組織と経営陣、そこにこそ問題の本質があることを常に忘れないように、そして問題の本質がズレることのないように、今後も責任問題の推移を見続ける必要があるだろう。
(取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/)
まさに伏魔殿。
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