エロはOK、脱獄と自殺はNG? “刑務所タブー”を破った問題作
#佐藤優 #プレミアサイゾー
──証券取引法違反により、元ライブドア社長・堀江貴文被告の実刑判決が確定した。彼いわく、刑務所の中では読書をして勉学にはげむというが、塀の中の読書事情とは一体、どのようなものなのだろうか? 刑務所のタブーを破った本を紹介しながら浮き彫りにしてみたい。
4月25日、堀江貴文の収監が決定し、それを受けて行われた会見上で読書にはげむという彼のコメントが一部で話題になったが、近年、”塀の中”の読書事情が劇的に変革したのをご存じだろうか? 2005年、およそ100年間にわたって受刑者に運用されてきた監獄法(1908年公布) が全面改正され、受刑者の読書事情が大幅に改善されたのだ。新法の名称は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」、通称「刑事収容施設法」。受刑者の処遇に関係する部分は06年5月に施行された。
新法の最たる特徴は、受刑者(法律では被収容者と呼称)の「権利義務と矯正職員の権限」を明文化した点と、「受刑者の本を読む権利」を保障(所長権限による、という曖昧な表現も多く見られるが)した点である。読書に関していえば、例えば旧法では、多数の本を所持していても手元における冊数は3冊(学習参考書や辞書類は冊数外の扱いになっていた)と制限されており、残りは”領置”と呼ばれ、倉庫に収めることになっていた。読み終えた本を倉庫に戻し、新たな本と交換する場合は、”領置下げ”という願箋を書いて、下付願いを出さなければ閲読は許可されなかった。それが新法では改正され、手元に何冊でも置けるようになったのだ。
もちろん、いまだに差し入れられる本に対して検閲がなされる(当特集【2】参照)のだが、後述のインタビューに答えてくれた元受刑者の笹倉哲平氏によると、「法改正云々にかかわらず、刑務所の読書事情は、一般のそれとそんなに変わりません」という。
「ケータイ小説がはやれば『恋空』(スターツ出版)が読まれていましたし、ハリー・ポッターの新刊が出れば、読書好きの受刑者はこぞって読んでいました。基本的に本は自分で購入することもできますが、親族や知人に差し入れてもらうことが多いですね」(笹倉氏)
だが、受刑者の中には、読書嫌いどころか識字能力に問題のある者、知的障害者、さらには要介護老人もおり、本を読む機会とは無縁の生活を送る受刑者も少なくはない。これら刑務所における弱者の現実を描いたのは、『名もなき受刑者たちへ 「黒羽刑務所第16工場」体験記』【1】であるが、作者である本間龍は、黒羽刑務所(初犯受刑者が主に収容されているA級施設)に服役(詐欺罪)していた経験をもとに、現実の所内を浮き彫りにしている。彼が就業した第16工場とは、認知症や知的障害を持つなど、介護が必要な受刑者が働く刑務所内の工場で、その日常におこる出来事や事件をリアルに描いているのだ。
一方、”塀の中の読書事情”にスポットを当ててみると、元外務省職員で02年に背任容疑で逮捕された作家の佐藤優は、『獄中記』(岩波書店)において勾留中に読破した書物を得々と論じているが、こういった書物は非常にまれである。
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