【震災3カ月】「昨日もここで遺体が出た」津波被害の岩手県・陸前高田市 現地レポ(1)
#東日本大震災
日本全土に甚大な被害をもたらした東日本大震災から3カ月が経過した。100年に一度といわれる大地震と津波、度重なる原子力発電所の爆発と核燃料の漏洩。かつて経験したことのない悲劇から立ち上がろうと、この間、日本はもがき苦しみながら闘ってきた。
津波で市街地全域が押し流され、死者1,465名、行方不明者738名(消防庁資料/5月10日現在)の被害者を出した岩手県陸前高田市では、今日も瓦礫の撤去作業が粛々と進められていた。同市高田松原で撤去作業を見守っていた建設会社の男性は「昨日もここで遺体が一人出た。もうこの時期なんで、本人が特定できたかどうか……」と顔を曇らせた。
「3カ月も経ってまだこんな状態かと思えるでしょう。せっかく自衛隊が撤去の救援にきてるのに、民業を圧迫するなという地元業者の声もあって……。仕方なく早めに切り上げざるをえなかったり。自衛隊の人たちも忸怩たるものがあると思う。民間業者もそんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけどね。もっとも、これでも『撤去』は他の被災地よりかなり進んでるほう。問題は『処理』。瓦礫は山になって 溜まってく一方だね」
そう言って男性が指差す「仮置き場」には、木材や金属、コンクリート、自動車のスクラップなどに”分別”された瓦礫がうず高く積み上げられ、時折突風で吹き飛ばされては四方に飛び散っている。その間を縫うように何十台ものダンプが連なって走る光景が、「ここ3カ月ずっと続いてる」と男性は言う。
「作業員の中には地元の人間がたくさんいるし、家族や親戚が流されたという奴らも多い。みんな、黙々と作業をしてるけど、あと3カ月後にどうなってるとか、年末にはこの街がどこまで立ち上がっているとか、具体的にイメージできてる人間はいないと思う」
礫撤去が粛々と進む中、ここだけは時間が3カ月前から止まったままだ。
一方で、仮設住宅の設置は「ここ1~2カ月でだいぶ進んだようだ」と男性は言う。自身の親戚や友人の多くも、既に入居を済ませて避難所生活から「ようやく脱却できた」のだそうだ。
住民にとって最も重要な生活基盤といえる仮設住宅については、災害救助法に基づく国の予算で設営が進められており、一戸当たりの広さは約30平米(2DK、2~3人用)。陸前高田市によれば、「10日現在で1,450戸の入居が完了している」という。以下は同市建設課。
された仮設住宅
「市の最終的な計画は2,210戸。建設完了が7月上旬から中旬と県から報告を受けているので、電化製品などの搬入までを含めても、7月末にはすべての希望者が入居できると考えています」
一方で、入居者には厳しい現実もつきつけられている。これまで国が行ってきた食料配給が11日から避難所住民だけに限定され、仮設住宅入居者は配給が打ち切られた。これについては厚労省が次のように説明する。
「国では災害救助法にもとづいて仮設住宅や食料、水などの提供を行っていますが、これらはあくまで避難所などで緊急避難的な生活を強いられている方々を対象としています。『仮設』とはいえ、水や電気のライフラインが確保された住居で生活をされている方は、自力で食糧調達ができるとの解釈のもと、自己負担での生活をしていただくよう、ご理解をお願いをしているところです」(援護局災害救助・救援対策室)
実際に仮設住宅で生活をしている数人から聞いたところ、「たしかに理屈では理解できる。甘えてばかりもいられない」(40代男性)と多くが理解を示す一方、「もちろんぜいたくは言えないけど、現実に現金が流されてしまったので、自己負担といわれても……」(30代女性)ととまどう声も聞かれた。
ともあれ、地域住民がこうした自治体からの支援で「なんとか今日という一日を生き延びている」(入居者の一人)という中、政府は内閣不信任案を巡るドタバタで遅れていた「復興基本法案」を、この10日に遅まきながら衆議院で通過させた。「復興庁」創設など、日本の復興へ向けた基本理念を定めた法案で、今後は参議院での審議を経て17日には成立する見通しだ。
もっとも、省庁設置のためには、さらに設置法案をも国会で成立させる必要があり、これについてはまだ「年内には成案を得たい」(枝野官房長官)との段階。さらに、法案の内容も曖昧な部分が多く、与野党の間でも権限の位置づけについて激しい綱引きが続いている。待ったなしでの事態収束が求められる中、今の日本に政局争いをしている余裕は残されていないだろう。
(文=浮島さとし)
まだこの国は、災害のなかにいる。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事