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文化人、タレント、脳科学者……それぞれの体験した3.11

watashi311.jpg『わたしの3・11 あの日から始ま
る今日』(毎日新聞社)

 誰もが忘れない瞬間として刻み込まれた2011年3月11日午後2時46分。この時間を境に、日本の風景は一変した。多くの人が、その瞬間にどこで誰と何をして過ごしていたかを語り合ったことだろう。その中でも著名人たちの3.11の記録をまとめたのが脳科学者・茂木健一郎の編集による本書『わたしの3・11 あの日から始まる今日』(毎日新聞社)だ。

 編者・茂木を筆頭に、本書に寄稿するのは堀江貴文やロケ先の気仙沼で被災したサンドウィッチマン、今回の震災でその精力的な活動が評価されたジャーナリスト上杉隆など16人。タレント、ミュージシャン、実業家、ジャーナリスト、作家、学者、それぞれがそれぞれの立場から3.11に何をし、どのように考えたのかが克明に記録されている。被害を受けた場所も、原発に対するスタンスも異なるそれぞれ。想定外の規模の災害に対して、客観的な正義も現状に対処するためのマニュアルもなく、だからこそ、自分の信じる正しさに対して真摯に行動するしかない。そこから垣間見えるのは、編者・茂木健一郎が「プリンシプル」と表現するような、寄稿者にとって信じられる原理・原則だ。

 中でも印象的なのが小説家・高橋源一郎による「レッツゴー、いいことあるさ」という掌編。3月11日に、長男である「レンちゃん」の卒園式を迎えた筆者が記録するその様子は、とてもほのぼのとしている。幼稚園児の合唱するポンキッキーズの曲「LET’S GO! いいことあるさ」に涙し、「お父さん、お母さん、ありがとう」という言葉に我が子を抱きしめる筆者。その直後に大地震が控えていることを知っている”その後”の我々からすれば、あまりにも緊張感がない風景かもしれない。しかし、そんな「3.11以前の日常」を選んだことに、筆者がこの掌編を書いた意味が込められているように思えてならない。3.11は特別な日の特別な出来事ではなく、あくまでも日常の延長に起こった出来事だった。3月11日の夜、余震が続く中を、筆者はレンちゃんとともに「LET’S GO いいことあるさ」の一節を歌いながら眠りにつく。「ひとのかなしみを わかってあげられれば」というその一節は、「頑張ろう日本」の合唱よりもはるかに強いメッセージとして読者に響いてくる。

 あの大災害からもう3カ月が経とうとしている。被災地ではいまだに「復興」などという言葉も遠く瓦礫撤去すらままならない場所もあれば、東京のように原発問題へと関心の中心が移りゆく地域もある。ただ、3.11は何かの終わりではない。何かが変わったとすれば、「3.11後」が始まったということではないだろうか。
 

わたしの3・11 あの日から始まる今日

もうすぐ3カ月。

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最終更新:2013/09/12 21:30
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