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島の専門家が手掛けた島図鑑の決定版『原色 日本島図鑑 日本の島433』

51Ewl1W9lwL.jpg『原色日本島図鑑 日本の島433』
(新星出版社)

 日本列島には、無人島を含め大小6, 852もの島が存在している。島とはオーストラリア大陸より面積の小さい、四方を水域に囲まれた陸地のことで、本州は世界第7位の大きさを誇る島である。領海と排他的経済水域の面積は世界第6位で、日本は世界でも有数の海洋国家であるのだ。

 『原色日本島図鑑 日本の島433』(新星出版社)は、”島のスペシャリスト”として知られる写真家・加藤庸二氏が、日本にある島の中から433の島を厳選し、紹介した本だ。北は礼文島から南は沖縄・南西諸島まで、日本の有人島を網羅している。人口・面積・地理・歴史など島々の仔細なデータのほか、特産品や観光名所、その島の見どころなども掲載されており、「るるぶ」(JTBパブリッシング)のようなガイドブック的側面も備えた楽しい図鑑だ。380ページ超の大ボリュームで、『釣りバカ日誌』の作者・北見けんいち氏も絶賛する出来栄えとなっている。 

 この本の優れた点は、プロの写真家が手掛けた美しい写真とその点数の多さにある。臭い泥を塗りたくる宮古島の奇祭パーントゥや、仮面神ボゼが舞う悪石島のボゼ祭りなど、土地に伝わる風俗も丹念に取材されていて見る者を飽きさせない。軍艦島の愛称でおなじみの長崎県・端島や、三島由紀夫『潮騒』の舞台となった三重県・神島なども見逃せないスポットだ。北海道南西沖地震(1993年)の爪あとを残す奥尻島、2000年の噴火で発生した火山ガスがいまだ漂う三宅島など、ページをめくれば災害の記憶もよみがえる。

 沖縄では「島ちゃび」という言葉がある。離島苦という意味で、物資の不足、運送・交通の不便、医療の不在、教育・福祉の格差など、島の生活にはさまざまな不便が生じる。電気が通り、飛行機が飛んでも、島の風景も生活も大きく変わることはない。この『原色 日本島図鑑 日本の島433』は、原色のままの島の風景とその暮らしをわれわれに伝えてくれる本だ。旅行計画に役立ち、写真を眺めて楽しめる。家庭に一冊、置いておきたい本である。
(文=平野遼)

●かとう・ようじ
写真家。東京都出身。島のスペシャリストとして知られる。旅・暮らし・文化・食・伝統・自然・辺境地・人物などを取材し、雑誌・新聞・ウェブなどで発表するフォトエッセイストでもある。1980年に創刊したダイビング・グラフィック雑誌「ダイバー」の初代編集長を務め、国内外で潜った島は150カ所を優に超える。最近では国土交通省の「島の宝100景」の選考委員を務めたほか、日本旅客船協会、国土交通省のフォトコンテストの選考委員長などを務める。(株)ワイドビジョン代表、(社)日本写真家協会会員。

原色 日本島図鑑―日本の島433有人島全収録

島好き必見。

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最終更新:2013/09/12 21:39
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