「油の浮いた揚げ物は許さん!?」”駅弁ハンター”ヨネスケが駅弁業者にモノ申す!
#インタビュー
晩飯時の、日本一好感度の高い不法侵入でおなじみのヨネスケ氏が、駅弁と空弁に驚くほど詳しいことを皆さんはご存知じだろうか。自身のブログ「ヨネスケの駅弁!空弁!食べて答弁!!」(http://blog.livedoor.jp/yonemeshi/)では、全国各地のさまざまな駅弁・空弁を約2年半にわたり、ほぼ毎日紹介。味はもちろんのこと、見た目・価格・量などあらゆる要素から細かく採点しているのだ。
そんな人気ブログが『ヨネスケの駅弁空弁600選』(辰巳出版)として書籍化され、グルメファンや鉄道ファンの間で話題だという。「日刊サイゾー」取材班は、浅草演芸ホールで高座を終えたばかりのヨネスケ氏を直撃! 駅弁&空弁への熱い愛を語ってもらった。
――駅弁・空弁ブログを始めた理由は、やはりグルメレポートのプロとしてわき上がる使命感みたいなものが……。
ヨネスケ ないない! だって正直な話、おいしいお店なんかは、皆に教えたくないから内緒にしてますよ(笑)。ただお店ってのは、テレビなんかで紹介すると常連客が嫌がる場合もあるけど、駅弁はそういうのもないしね。それに僕は月に10日以上は仕事で地方に行ってますから、普通の人じゃできないことをやろうと思ったのがきっかけです。
――ブログの更新はどのようにされてるんですか?
ヨネスケ 携帯電話で打ってます。食べたらすぐに打つから、その時の感情がかなり出るんですよ。
マネジャー メール打つの、めっちゃ速くなりましたもんね。
ヨネスケ 「63歳のじじぃが何でそんなに速いんだよ!」ってくらい、めちゃめちゃ早いよ。一時期、肩甲骨が痛くて医者に行ったんだけど、「何で痛いんだろう……あ、メール打ってるからだわ」って(笑)。あと「駅弁は駅で買って食べる、空弁は空港で買って食べる」っていうのがポリシーだから、物産展や駅弁フェアで買うのは自分の中でルール違反なんです。もっと言うと、東京駅の「GRANSTA」みたいなエキナカで売ってる弁当も、駅弁とはあまり認めたくないんだよねえ。
――ちゃんとルールを設けてるんですね。ほぼ毎日の更新は大変ではなかったですか?
ヨネスケ 苦ですよ(笑)。好きな物を食べられないし。もう一回食べてみたいお弁当もいっぱいあるけど、僕はブログのために基本的に同じ物は食べませんから。だからこそ900種類以上も食べてこられたんだけどね。
――書籍化されたことで報われましたね。
ヨネスケ 報われたね~。でも、まだ終わりじゃないから。第二弾のために今も食べ続けてるし。知らない土地に行って駅弁があると、めっちゃうれしいね! 宝物を見つけたような気になるよ。
――お弁当の評価は、ヨネスケさんのトレードマークでもあるしゃもじの数で採点(最高は5しゃもじ)されてますが、褒めるところはきちんと褒める一方、かなり辛口なことも書かれてますよね。やはりテレビのグルメレポートとは気持ち的に違うんですか?
ヨネスケ 全然違いますよ。テレビで「おいしくない」なんて言ったら、その店が被害を被っちゃうじゃない。僕は以前、ラジオである店のことを「料理人の風上にも置けない」って言って、弁護士料と慰謝料で150万円取られて痛い思いしてますから。
――そんなことがあったんですか!
ヨネスケ 逆に駅弁・空弁は会社組織だからビクともしないの。NRE(「株式会社日本レストランエンタプライズ」の略称。JR東日本グループで、駅弁で高いシェアを誇る)なんて、ある種、独占企業みたいなものだからね。あとは北海道の空弁なんかも高い! 僕も好きでよく買うんだけど、新千歳空港にある佐藤水産の石狩鮨本舗なんて、1,500円以上とかザラですから。
――NRE? 佐藤水産?……すみません、早くもマニアックで付いていけてないです。
ヨネスケ あとね、新型新幹線ができた記念なんかに、よく電車形の容器に入った駅弁が発売されるじゃないですか。あれ、中身は普通なのに1,400円とかするから、「足元見てんな」ってJRにちょっとムカッとくるのよ(笑)。逆に横川の「峠の釜めし」なんて、あの容器とうまさで900円だから安いよねえ。
――「そういうものだ」と思いがちですか、駅弁・空弁って高価な食べ物なんですね。ところでブログを見ていると、揚げ物への評価が厳しいように感じますが。
ヨネスケ 冷めたお弁当に、油の浮いたフライや天ぷらが入ってるのは許さない! 前は水戸駅で「いかっぺ」っていう、冷めてもおいしいいかのから揚げ弁当が売ってたんだけど、お店閉めちゃったんですよ……。あと許せないのが真空パックね。腐らせちゃいけないのは分かるんだけど、努力が足りない感じがするし、何より開けるときに手が汚れるんですよ。
(ヨネスケ氏ブログより)。
――だから、生ものにもかかわらず真空パックに頼らない「かつおたたき弁当」(高知駅)に「5しゃもじ」を付けられてるんですね。
ヨネスケ 「かつおたたき弁当」はナンバーワンだね! 小料理屋で出るようなかつおのたたきを、1,050円という安さでお弁当にするなんて、作る人の勇気に感動したなあ……。「5しゃもじ」はいまだかつてこの一つだけです。
――あの、個人的には、駅弁ってご飯がぎゅうぎゅうに詰まってるイメージがあって、そこがちょっと苦手だったりするんですが……。
ヨネスケ それはあるね。どちらも好き嫌いがあっていいと思うんだけど、ぎゅうぎゅうなのは、比較的北海道に多いかな。あと「藤川優里のいちご煮日記弁当」(八戸駅)や「濱松うなぎ弁当」(浜松駅)も、ぎゅうぎゅうだった印象があるね。逆に崎陽軒なんかは、ご飯が詰まってないからふっくらしてておいしいよ。
――今度、崎陽軒の駅弁を買ってみます。ヨネスケさんは鉄道オタクや旅行オタクではない分、駅や電車よりも”業者”を重視する視点が面白いですよね。
ヨネスケ 横浜の崎陽軒、千葉の万葉軒、小田原の東華軒を僕は「関東三軒」って呼んでるんだけど、この辺の会社はご飯なんかにも気を使ってるから、だいたいのお弁当はおいしいですよ。
――「焼肉小倉優子 焼肉弁当」(千葉駅・木更津駅)のように、もしヨネスケさんプロデュースの駅弁が発売されたら、ぜひ食べてみたいんですが。
ヨネスケ 作りたいなあとは思いますけど、これだけ言ってきたからには、相当こだわらないと納得できないですね。まず米はふわふわじゃなきゃいけないよね。でなければ、白いもち米にするね。あと、やっぱり揚げ物は絶対に入れない! で、まぐろと白身の刺し身を入れたいね。それから駅弁の煮物ってだいたい濃い味つけだから、僕は薄味の煮物を入れる。あとは卵焼きと、かまぼこを入れて、最後に煮込みハンバーグだな。これでOKだ。
――刺し身とハンバーグの組み合わせは斬新ですね。ちなみに、お値段はおいくらが理想ですか?
ヨネスケ これで800円だったらいいよね。ぜひやってもらいたいなあ。……でも、入れないんだよ!
――入れないとは?
ヨネスケ 駅の近くにもコンビニがたくさんできたし、このご時世、1,000円以上する駅弁はお客さんがあんまり買わなくなった。だから、人気商品を持っている業者か、昔から地元に根付いている老舗の業者じゃないとなかなか進出は難しいんですよ。
――急に現実的な話になりましたね(笑)。
ヨネスケ 僕と違って普通の人はたまにしか旅行できないんだから、それがいい思い出になるためにもよっぽど気合を込めて作ってもらわないと困るんです。だから僕も辛口な感想をブログに正直に書くのよ。『ヨネスケの駅弁空弁600選』は、弁当屋さんにこそ読んでもらって、「ヨネスケが食ってるなら、変な駅弁は作れないな」って思ってくれたらありがたいよね。生意気かもしれないけど、もしかしたら僕は駅弁・空弁業界にアンチテーゼを投げ掛けてるのかもね。
というわけで、ヨネスケ氏プロデュースのお弁当を開発したい駅弁・空弁業者の方からのご連絡をお待ちしております!
【ヨネスケ氏プロデュース弁当の内容】
●ふんわりとしたご飯 or 白いもち米
●まぐろと白身(鯛など)の刺し身(保冷材を添付し鮮度を保つ)
●薄味の煮物
●卵焼き
●かまぼこ
●煮込みハンバーグ
※揚げ物は入れてはならない
※価格は800円くらい
(取材・文=林タモツ 撮影=尾藤能暢)
●ヨネスケ
1948年生まれ、千葉県市原市出身。高校卒業後、桂米丸氏に弟子入り。高座名は桂米助。『突撃!隣の晩ごはん』(日本テレビ系)では16年にわたり、全国津々浦々の食卓風景をリポート。一躍お茶の間の人気者に。現在、寄席をこなす傍ら、全国各地で講演会やトークショーを行っている。
・CD「長生き音頭」(ソニー・ミュージックダイレクト)
ヨネスケが歌う、ハワイアン調「長生き音頭」。民謡の力武杏奈やフォークのサスケなど、年代やジャンルの違うアーティストによる競作で、お年寄りへの応援歌。
定価800円/好評発売中
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