「THE OUTSIDER第16戦」戦慄の舞台裏レポ! 不良の格闘技が日本を元気にする!?
#格闘技 #前田日明 #THE OUTSIDER
不良のタイマン、頂上決戦!──リングス・前田日明主催の不良系格闘技イベント「THE OUTSIDER(アウトサイダー)第16戦」が8日、横浜文化体育館で行われた。アウトサイダー選抜軍VSロシア特殊部隊の対抗戦はあえなく全敗に終わったが、プロ連合軍(ZST&P’sLAB)との5対5対抗戦では2勝を挙げる健闘ぶり。また、恒例のシングルマッチでは、札付きのワルが被災地に初勝利を捧げたり、アウトサイダー全勝同士の”重量級頂上決戦”が実現するなど、シビれる場面が相次いだ。試合結果の詳細は他媒体の報道にお任せして、日刊サイゾーは今回も、会場を沸かせたアウトローたちに突撃インタビューを敢行!
“ヨコハマメタルシティ 凌辱のバッドチューニング”
土橋政春(神奈川・29歳・出場5回目)
VS
“足利の筋肉バキバキ野郎 俺がリアルストリート”
R.S.RYO(栃木・26歳・出場3回目)
片や全身タトゥーまみれの変態ロックンローラー土橋。片や前回出場時に乱闘を巻き起こしたR.S.RYO。キャラの濃い問題児同士の対決は、ヒザ十字とアンクルホールドで攻め続けた土橋が、レフェリーストップで勝利を収めた。
勝者・土橋にインタビュー。
──戦い終えた感想は?
「相手の気持ちが強すぎて、ちょっとヤバかったっすね。だって絞めてる最中、相手の足、すんげえ音鳴ってたから。ブチブチブチって。それでも殴りかかってきたから、『変態だなコイツ』と思いました」
──試合途中、R.S.RYO選手がグラリとふらつく場面が印象的でした。
「あれ、完全に足がぶっ壊れてたんですよ。なのに立ち上がってこようとするから、『効いてねえのかよコイツ』と怖くなりましたよ」
──とはいえ、勝ちは勝ちです。
「勝ててうれしいけど、勝った気はしないっすね。気持ちでは負けてたかもしんない……」
勝ったのに、浮かない表情の土橋であった。
“宮永一輝推薦 ブラジリアン・ストライカー”
シャンドレ(静岡・30歳・初出場)
執拗とも言えるヒザ蹴りの連打でデビュー戦勝利。戦いぶりは冷酷そのもの。185センチの長身で、ご覧のコワモテ。黙っているとブラジルの殺し屋のような雰囲気だが、しゃべると日本語ペラペラで、おまけに愛想も良かったのが、このシャンドレである。
試合直後にインタビュー。
──キックが得意なんですか?
「ええ、3年ぐらいキックボクシングやってましたからね。それにサッカー王国ブラジル生まれだから、蹴るのは得意なんです(笑)」
──日本語が流暢ですが、いつ日本に来たのでしょう?
「親の仕事の都合で1991年に来日しました。僕が10歳のときですね。それからずっと静岡で生活してます。ちなみに父親はブラジル人で、母親は日系ブラジル人。僕は日系三世になります」
──日本での暮らしぶりを教えてください。
「僕が住んでる静岡はブラジル人も多いので、日本人との抗争はいろいろありましたね。地元の暴走族に追い掛けられたり、囲まれた末に喧嘩になったり。ただ、僕は日本人の友達も多いんで、日本人とブラジル人の間で何かもめごとが起きたときには、間に入って仲介することも多かったですね」
──昔から背は高かった?
「ええ。ただ、細いからナメられるのか、よく喧嘩を売られました。もちろん、そんなときは相手が3~4人でも逃げませんよ。後ろには目がないので、まず壁を背負うのが喧嘩のセオリー。そして前から来た人間を殴る蹴るしてノシてから、ブッさらいます」
──今までで一番恐ろしい目に遭ったのは?
「ブラジルのサンパウロにいたときに、強盗に遭いました。2人組の強盗に38口径の銃を突きつけられました」
──さすがに闘わなかった?
「闘ったら殺されますよ(笑)。ブラジルで強盗に遭ったら素直に手を上げた方がいいですね。向こうもプロだし逆らわなければ何もしない。下手に逆らうとパーン! でおしまい」
──映画『シティ・オブ・ゴッド』の世界そのもの?
「まさに、あの通り。ガキがマシンガン持って入り口を占拠してる建物があったりしますから。警察もその建物の中には入れないんですよ。まあでもそれは、ブラジルの一部の話。調子こいて裏のほう行けば危ない目に遭うのは日本も同じですよね。普通に生活してる分には安全だし、本当にキレイで素晴らしいところなので、ぜひともみなさん、ブラジルに遊びに行ってください」
次回サッカーワールドカップの開催地はブラジル。観戦に行こうかどうか迷ってる方はシャンドレの意見を参考にしよう。
“池袋 弐双龍の龍帝”
SHIN(東京・27歳・出場5回目)
かつて池袋を根城に悪名をとどろかせた元チーマーのSHIN。アウトサイダーに出場するのはこれで5度目だが、過去には対戦相手の頭を踏み付ける反則を犯したり、試合を止めたリングドクターを恫喝したりと、現役感たっぷりの凶暴ぶりを見せてきた。
その荒くれ者が、今回は東日本大震災の被災者へ勇気を与えるべく、リングに上がることを決意したという。そして見事、チョークスリーパーでアウトサイダー初勝利を収めた。
約3年前、SHINにインタビューを試みて怒鳴られた経験がある記者。果たして今回はどうなるか? 試合後に恐る恐る声をかけた。
──おめでとうございます。
「ああ、どうも」
──今回は被災者のためにも、どうしても結果が欲しい一戦だったのでは?
「というか、本当は殴り合いでバチバチに喧嘩するつもりだったんだけど、ああいう形になっちゃって」
──絞め技は練習していた?
「まったく。周りの江田(雄一)君とか三上飛鳥とかに聞けば分かると思うけど、まったく練習してないね」
──なのに、よくとっさにチョークスリーパーが出ましたね。
「そこに首があれば絞めるでしょ。前に大根(キング・ミダラ)と戦ったときも、そこに頭があったから踏ん付けちゃったわけで。ま、やれることはなんでもやるのが喧嘩の基本だから」
──デビュー以来、4連敗。普通ならめげるところだが、よくぞ出てきて、よくぞ勝った。まさに不屈の闘志。
「気持ち負けたら俺にはなんもないでしょ。気持ち折れたらそこで負け。でも例えば喧嘩でボコボコにされたとしても、気持ちさえ強ければ何度でもリベンジしにいくでしょ。で、最後に勝ちゃいい」
──いま日本全体が弱っているが、そんな中、気持ちを強く持つ秘訣は?
「自信を持つことじゃないかな、なんでもいいから。喧嘩なら喧嘩、パソコンならパソコン、勉強なら勉強──ま、俺は勉強できねえけど。なんでもいいから自信持ったらいい。なんか一つぐらい取りえあるんだから、人は。誰にも負けねえぞ! って思ったモン勝ちじゃないかな」
──大会前にはボランティアとして被災地めぐりもしたそうで。
「まず仙台に行って、避難所に物資届けて。あとは福島の避難所でもボランティアして。俺と三上、平野海志、あと中澤(達也)さんの4人で始めた活動。自分らの金出してあっち行って資材出して、やれることやろうって」
──なぜボランティアをやろうと?
「それはやっぱり、困ってるからでしょ。大勢の人が困ってるんだったら、今まで社会に迷惑かけてきたのは俺らだから、やれることはやる。そんだけ」
──今後の活動予定は?
「福島だね、やっぱり。あと仙台と、あまり報じられてないけど新潟も結構ひどいらしいから、そっちも行こうかなと。とにかくいろんな方面からやっていこうと思ってて。今度、三上飛鳥と二人でチャリティーソングも出すんですよ。それも収益は全額寄付するから」
──放射能は怖くない?
「怖がってたらボランティアなんかできないでしょ。現地に行って被災された方々の優しさにも触れたし。だったらこっちも気持ちで返さなきゃ、って。うん。やれることはやってくよ」
怖くて優しいアウトロー、SHIN。勝利者賞ならびにサイゾー賞は全額義援金に回すと表明。なんて男前なんだ!
“リアル アマプロレスラー”
ビッグバン・シバター(東京・25歳・P’s LAB・初出場)
VS
“宇都宮 オリオン通りの闇皇帝 栃木のラストエンペラー”
菱沼郷(栃木・32歳・出場9回目)
逆モヒカンに赤パンツのシバターが、ロープに向かって走ったり、モンゴリアンチョップを繰り出したり、相手のパンチをすべて避けずに受け止めたり……。
ガチンコの総合格闘技の場にプロレスを持ち込むのは是か非か? 物議を醸しそうな一戦だったが、会場がひときわ沸いたのは確かである。
最終的にはバックドロップからの腕十字で敗北、苦痛に顔をゆがめながらスゴスゴと退散中のシバターを直撃!
──ナイスファイト……と言うべきか?
「それは見てるやつが決めることだからよー!」
──そのヘアスタイルに込められた意味は?
「プロレスだよ! プロレス!」
──是非はともかく、印象度はピカイチでした。
「おお、ありがとよ! しかしこんなんじゃ終わらねえよ! 次もいつでもやってやるよ!誰でもいいよ!ロシア人でもなんでもいいよ!」
──菱沼選手に一言。
「おまえのプロレス愛を俺がとくと受け止めたからよ!」
一方の菱沼にも話を聞いた。
──独特の試合になりましたけど感想は?
「本日は私のために、新日本プロレスの方たちが応援に来てくれてたんですよ。ですから、負けるわけにはいかなかった。いま私がやってることはストロングスタイルですから、私はストロングスタイルで勝ちに走りました」
──シバター選手は「おまえのプロレス愛を受け止めた」と言っています。
「……分かってますよ、言わんとしていることはなんとなく分かりますよ。私としては、柴田勝頼 VS ミノワマンみたいな試合を目指したんですけどね。かみ合ったかどうかは、お客さんが決めることですね」
果たしてみなさんは、この一戦をどう受け止めただろうか?
“元・暴走族”陽炎”第十三代目総長”
大倉利明(愛知・31歳・出場3回目)
VS
“ストリートファイトの重鎮 人生喧嘩任侠”
中村トッシー(茨城・35歳・出場5回目)
共に無敗の重量級(リミット80kg)。事実上の「アウトサイダー重量級最強決定戦」として大きな注目を集めたのが、このカードだ。
まずは試合前、大倉に話を聞いた。
──今年の2月、関西の地下格闘技団体「強者」の看板選手であるサップ西成選手を判定で下しましたね。その試合を振り返ってみてどうでしょう?
「寝ても立っても自分の勝ちだったかな、と。自分の中で、不良格闘技の世界で強いと思う三人の選手がいて、サップ西成選手はその中の一人だったんですよ。格闘技では向こうの方が上だけど、タイマンとか気持ちでは負けるつもりはなかった。タイマンで勝ったかな、と」
──ちなみに「強いと思う三人」の、残る二人は誰ですか?
「ヒロ三河選手と、今日戦う中村トッシー選手です。実は『D-SPIRAL』という大会でヒロ君とやる予定だったんですけど、流れちゃって。まあでもサップ君がヒロ君には勝ってるんで、残るは中村トッシー選手だけかな、と思ってますね」
──今日の抱負は?
「強い選手とタイマン張れるので楽しみです。相手の選手は引退試合とのことなので、それには申し訳ない思いはありますが、今回自分は一切練習してないんですよ。プロのリングでやるんだったら練習しなくちゃダメだけど、不良の喧嘩日本一を競うのに練習しちゃうのは不良じゃなくなっちゃうかな、と思って。試合のプランはなんも考えてないです。自分の魂と根性を見せるだけです」
対する中村トッシーにも、試合前に話を聞いた。
──大倉選手いわく、トッシー選手は「強いと思う三人のうちの一人」だそうです。
「光栄です」
──大倉選手の印象は?
「負けてないですからね。強いと思います。ハートも強そうですね」
──勝っても負けてもこの試合で引退するそうで。
「どっかでケジメじゃないですけど、到達点を決めておかないと。ずっとダラダラやるわけにはいかない。格闘技に関してはそろそろかな、と」
──体力が落ちている?
「それはないです。勝って自分の名前が残るように、『そういえば中村トッシーなんていう強いのがいたな』とあとあとみんなに思い出してもらえるように、最後も印象に残る試合をやりたいですね」
──これまで圧勝シーンしか見ていないので、負けるシーンが想像できません。
「みんなできないと思いますね。ウチの道場のやつら、俺が負けたらたぶんみんなイヤになっちゃうんじゃないですか(笑)」
──中村トッシーはなぜ強いのか? 自己分析してください。
「不思議なもんで、ウチの道場には自分よりパンチが強いのもいるし、自分よりスタミナがあるやつも、自分よりスピードの速いやつもいる。何においても、自分より上回ってるやつがいるんですよね。ですけども、なぜかトータルすると、自分でも勝負になるんです。バランスがいいのか、あるいは何か一つだけ突出しているのか。突出しているとしたら、こっち(ハート)かもしれませんね」
横にいた幕大輔(60-65kgトーナメント初代チャンピオン)は、同門のトッシーの強さについてこう語った。
「本能的に何かが違うとしか言いようがない。トッシーさんのパンチを食らうと、金属バットで頭を殴られたぐらいのダメージがある。あと、打たれ強さもハンパじゃない。殴っても殴っても全然効かない。ターミネーターですね」
しかしトッシー、有終の美を飾れず! 接戦ながらもダウンを食らい、最後の最後で初黒星を喫した。
試合後、祝福の輪の中で大倉は「不良格闘技の天下を取った。今後はプロを目指す」と宣言。
その大倉の肩をたたき、「まだまだやるんだろ? 頑張れよ、頼んだぞ」と告げ、カランコロンとゲタを鳴らしてひとり去り行く中村トッシー。
アウトサイダー重量級、世代交代の瞬間であった。
次回アウトサイダーは、7月17日(日)に東京・ディファ有明で開催予定。出場選手募集中。詳しくはリングスホームページにて。
http://www.rings.co.jp
(取材・文=岡林敬太)
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