やり方次第で2日間使える? 震災で大幅減収のJR東日本が発売した「1万円パス」の実力
#JR
東北新幹線の新特急「はやぶさ」がデビューした直後に東日本大震災が発生し、無念の運休を余儀なくされたJR東日本。震災による大幅な減収を回復すべく、「復興支援」を名目とした新たな乗り放題切符「JR東日本パス」が発売された。
震災による交通網の混乱や観光旅行が自粛されるムードの中で、JR東日本の受けた損害は大きい。4月上旬には首都圏だけでも91億円も減収、さらに全社では288億円もの減収となったことが発表されている。
一部では客足の回復が見られたゴールデンウィークでも鉄道の利用は鈍く、JR東日本の利用客数は前年度比27%減となった。東北新幹線は、連休初日の4月29日にようやく全線が復旧したものの、客足の回復には結び付かず前年度比で33%減少、秋田新幹線に至っては61%減少と目も当てられぬ数字となっている。一方で九州新幹線が全線開通したJR九州は、震災の影響を受けなかったこともあり利用客は同じく前年度比の23%増と、大幅な伸びを見せている。
苦しい状況の中で、客足の回復を目指してJR東日本が5月11日から発売を開始したのが「JR東日本パス」、通称・1万円パスである。文字通り、1万円(子どもは半額)で、JR東日本のすべての新幹線と在来線が1日乗り放題となる切符だ。指定席も2回までは料金の中で利用できる。
通常だと東京~仙台間の新幹線自由席が往復2万1,180円、東京~新青森間が3万2,740円であるから、日帰りならば半額以下と大幅な割引運賃となる。ただし、利用期間は6月11~20日、7月9~18日なので、社会人には利用しにくい設定だ。
このあたりに、少々サービスの悪さを感じずにはいられない。「青春18きっぷ」の改悪や、ムーンライトながら(とその前身の大垣夜行)の臨時列車扱い、寝台急行銀河・ムーンライトえちご・急行アルプスの廃止等々、鉄道旅行の選択肢がどんどんと失われていったことへの怒りがわき上がってくる……。
とはいえ、首尾よく休暇を取ることができれば、お得に鉄道旅行ができることは間違いない。なにしろ、復興支援への利用を名目としているが、利用できる範囲はJR東日本管内すべてなのだ。最北端は、大湊線の大湊駅(青森県)。JR東日本管内の西の果てである大糸線の南神城駅(長野県)にも、南の果ての東海道線の湯河原駅(神奈川県)までもが、利用可能だ。なお、JR東日本管内の最東端の駅は、山田線の岩手船越駅(岩手県)なのだが、山田線は震災によっていまだに宮古~釜石間が代行バス運転の状況。乗り放題の魅力を生かして、東西南北の果てをめぐってみるのは、旅のプランとしてはスタンダードなのだが、ちょっと残念。ぜひとも早めの復旧を祈念したい。岩手県内には、秘境駅マニアにも知られる岩泉線の押角駅という名駅もあるのだが、岩泉線は地震より前の昨年7月から、土砂崩れが原因で、全線が運休でバス代行輸送中だ。こちらも、早めの復旧を祈念したいもの。
ただ、東北新幹線の全面復旧によって、岩手・青森方面は混雑しそうなので、むしろ目指したいのは、残り少ない寝台特急となった、あけぼの(上野~秋田経由~青森)を使った旅行プランだ。実は、最も1万円パスで得した気分になれるのが、この、あけぼのを使った場合だ。このパスは、利用中に日付が変わっても、その時に乗っていた列車から降りない限りは有効なので、実質的に2日間利用できることになる。
「1日限り」のパスで、そんなことが本当に可能なのか? JRの「旅客営業規則」を条文通りに解釈すれば確かに間違いないが、いざ改札口で駅員ともめそうな気も……。この「1日乗り放題」の解釈をめぐって、鉄道旅行を愛好する人々の間では、いま盛んに議論が交わされているのが実情だ。
おそらくは、利用者の理論武装と各駅員の認識によって結果は異なるのではなかろうか。まずは、実際に乗って試してみないと分からない。
(文=昼間たかし)
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