トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > あの原発でゲリラ撮影を敢行! 原発不安で話題の映画『原子力戦争』が見たい!

あの原発でゲリラ撮影を敢行! 原発不安で話題の映画『原子力戦争』が見たい!

lostlove.jpg『原子力戦争』

 一説には、原子力史上最悪のケースとも評される福島第一原発の問題。原因となった東日本大地震の発生から2カ月余りを経た今も、騒動は収束する気配を見せない。原子力発電の賛否は別として、日本の産業、そしてわれわれの生活を担うエネルギー政策が大きな修正を迫られていることは間違いないだろう。そうした中、一本の映画が一部で注目を集めている。

 それが、黒木和雄監督作『原子力戦争』(1978)だ。田原総一朗の同名ルポルタージュを原案にしたドキュメンタリータッチのフィクションである。


 すでに30年以上前に製作された作品にもかかわらず、原発問題が注目を集める今、リアリティーを感じずにはいられない。

 物語の舞台は、原発のある海沿いの村。その浜辺に、原発の技師と東京でトルコ嬢(劇中の表現)をしていた村出身の女の死体が打ち上げられたところから始まる。

 そして、情婦を殺した相手を見つけて金をゆすろうと村へやって来たヒモのチンピラ(演・原田芳雄)は、とんでもない事実を知ることになる。実は、村の原発ではとうてい隠ぺいできないような重大な事故が発生していて、それを告発しようとした技師は心中に見せかけて殺されたのだ。技師から書類を預かっていた男も首つり死体で見つかり、事件の背後には原発利権をめぐる巨大な闇が存在していることも、次第に明らかになる。

 ハリウッド映画ならばスムーズに事件は解決に向かうものだが、そうはいかない。事件の真相を追う新聞記者は、自己弁護を重ねながら手を引いてしまう。重大な事故があったことに気付いた科学者さえも「事故のパニックによる原子力発電所開発の中止の方が国民にとってよほど危険」と、かかわり合いになることを拒否してしまう。

 結果的に、救いも何もないまま原発の背後に巨大な闇が存在していることだけをにおわせながら幕を閉じる本作。注目すべきは、福島第一原発でゲリラ撮影を行っていることだ。

 物語の中で、原田芳雄が演じるチンピラは、原発の入り口にやってくる。中に入っていこうとする原田(と、撮影クルー)に、警備員たちは「無断撮影はできません」と、カメラを手でふさごうとする。一方、原田は構わず警備員に「(原発を指さし)大きいねえ」と話し掛け、警備員の詰め所の中にも勝手に入っていく。

 物語の展開には「まさか、そこまでは現実にはないだろう」と思うが、警備員の対応を見ると「やはり、何か隠しているものがあるのではないか」という疑惑を抱かずにはいられない。

 まさに、原発が注目される今、ぜひ再び見てみたい作品なのだがDVD化されておらず、かつて発売されたVHSも廃盤。容易に見ることはかなわない。

 実は、今年4月にはスカイパー!の「日本映画専門チャンネル」で放映が予定されていたのだが、震災後に「3月11日に発生した東日本大震災による福島原子力発電所への影響を勘案し」という理由で放送が中止になってしまった。

 いったい、何に気を使っているのだろうか? どう見ても過剰な自粛である。

 どこからかクレームをつけられることを、過剰に恐れているのか。あるいは、なにかしらの圧力が存在したのか。

 こうなると「意義ある作品だから見たい」というよりも、「封印作品っぽいから見たい」という欲望の方が高まってくる。

 名画座で上映される機会でも待つしかない『原子力戦争』だが、かつて販売されていたVHS版が一部のレンタルビデオ店では、現在も陳列されているそうだ。ただ、どこの店でも常に「貸し出し中」が続いているとか。原発不安の中で、映画の名も広く知れわたっているのだろうか。
(文=昼間たかし)

原子力戦争

原作本。

amazon_associate_logo.jpg

最終更新:2013/09/13 16:12
ページ上部へ戻る

配給映画