中国で流行するロイヤルウエディング事情
#中国
沿道に手を振るウエディングドレス姿の花嫁と赤い軍服に身を包んだ新郎を乗せた馬車を騎馬近衛兵が先導し、アストンマーチンの車列がそれに続く。彼らが向かうのはバッキンガム宮殿かと思いきや、新郎新婦は英国紳士・淑女ではなく、どこからどう見てもアジア人である。
実はこれは、中国で流行している”ロイヤルウエディング”の様子である。イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃をマネた結婚式が、中国各地で執り行われているのだ。
これまで中国では、ウィリアム王子がキャサリン妃に贈った婚約指輪から、キャサリン妃のウエディングドレス、さらに結婚記念品に至るまで、世紀のロイヤルウエディングに便乗したさまざまな模造品が出現してきた。しかし結婚式を丸ごとパクってしまうとは、もうあっぱれと言うしかない……。
しかも、広東省で偽ロイヤルウエディングを目撃した日本人によれば、仕込みの観衆まで動員した大掛かりなものだと言うのである。
「道路がやたら渋滞していたので不思議に思っていたら、公道の真ん中を馬車が走っていた。新郎新婦の姿は見えませんでしたが、馬車の頭上には五星紅旗ではなくユニオンジャックがはためいていました。沿道にも多くの住民が集まり、手を振っていたので、よほど人望のある人なのだろうと思っていたのですが、沿道の参加者いわく『誰の結婚式かは全く知らないが、こうして手を振ると引き出物がもらえる』とのことでした」
偽ロイヤルウエディングを行っている、浙江省のある結婚式プロデュース会社にコンタクトを取ったところ、その費用はおよそ20万元(約260万円)とのこと。これは、通常の結婚式に比べ3倍以上の予算に当たるということだが、「希望者は多く、予約待ちの状況」だという。
偽ロイヤルウェディングが中国で流行している背景について、ルポライターで『中華バカ事件簿』(扶桑社)の著者、奥窪優木氏はこう話す。
「中国では伝統的に結婚式が盛大に行われますが、現在、結婚適齢期を迎えている世代は一人っ子政策後に生まれたいわゆる小皇帝。特に富裕層では、両親や祖父母に至るまで家族の張り切りようは半端なく、ハデ婚が流行している。そんな中イギリスで行われた、ウィリアム王子の結婚式はまさに彼らのあこがれとなった。地方なら、警察にわいろを渡せば道路を借り切ることができるし、こんな結婚式が可能なのは中国ならではでしょう」
中国の富裕層には結婚式だけでなく、英国貴族のノブレス・オブリージュまでもマネてもらいたいものだ。
(文=高田信人)
すげーよ、中国!
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