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「客足戻らず……」震災2カ月 チャリティーと経営の間に揺れるライブハウス事情

loftbokinbako.jpg新宿LOFTに設置された募金箱。

 3月11日に発生した東日本大震災は、音楽業界にも多大な影響を与えている。復興イベントやチャリティーイベントが続々と開催されているが、本来行われるはずだったライブの連続キャンセル、計画停電や世の中に漂う自粛ムードによって、音楽業界を支えるライブハウスの経営が危ぶまれているのだ。

 GLAYなどを育てたと言われる老舗ライブハウス・神楽坂エクスプロージョンの小嶋貴氏も、ライブハウスの現状を憂う。


「店舗そのものに大きな被害はありませんでしたが、3月11日から1週間ほど全公演がキャンセルになりましたね。今までにない状況だったため、”こういう時にこうすべき”というガイドラインもない混乱した状態で、いくら店舗やイベンター側がライブをやりたくても、お客さんのことを考えると中止せざるを得ない状況でした。入る見込みだった売り上げが全部断たれているわけですから、その一週間の金銭的なダメージは大きいです。スタッフへのギャラもライブごとに払っているので、ライブがキャンセルされてしまうとそれもなくなってしまう。東北の方々の方が大変といえばもちろんそうなのですが、正直苦しい状況です」

 また、業界全体が「ライブイベントをするならチャリティーで」という空気になっており、それ自体はむろん好ましいことなのだが、会場やミュージシャン側もノーギャラというイベントが続いた場合、経営に響きかねないという問題が出てきてしまう。

 震災直後から、精力的に復興チャリティーライブを行っていた新宿LOFT店長、大塚智昭氏はこう語る。

「チャリティーライブをやるときに最初から考えていたことは、”アルバイトにはきちんと給料を払いたい”ってことでした。批判もあるかもしれませんが、こちら側の収益がないとダメだ、と。『チャリティーだから会場使用料も無料です、お金は募金箱に入れてください』と言ってしまうと、要は会場で働いている人が完全にボランティアになってしまうわけで、そうすると従業員が食えなくなってしまう。だから出演するアーティストにも、『収益の半分は募金して、もう半分は会場使用料にして、その中から出演者皆の最低限の出演料と交通費も出したい』という企画意図を伝えました」

 そういった意図の下、震災直後に救助の手が回っていなかった北茨城にスポットを当てたイベント「LIGHT UP IBARAKI」(水戸ライトハウスと共同開催)で集まった募金と救援物資は水戸ライトハウスを通して北茨城の被災地へ送られた。

 また、震災から2カ月がたち、都内のライブハウスは通常営業にほとんど戻りつつあるようだが、まだまだ停電や大規模な余震の可能性も残る今、ライブハウスはどのように対応しているのだろうか。

「今はキャンセルされた公演の振り替えや、通常通りのスケジュールでライブを行っています。節電に関しては照明の数を減らしたり、外の看板の電気を落としたりして対策をしています」(神楽坂エクスプロージョン・小嶋氏)

「一番怖いのが、ライブの最中にパニックが発生すること。例えば、緊急地震速報がお客さんの携帯に入って、皆が一斉に外へ出ようとして事故が起こるようなケース。なので『余震があっても慌てないで、こちらの指示に従ってください」と前説を入れる場合もあります。ウチは地震があっても照明などが落ちてこないようにシッカリ補強しているので、それよりも慌てて外に出ることの方が危ないですから」(新宿LOFT・大塚氏)

 しかしながら店舗側がいくら余震対策等をしていても、まだまだ都内も”普段通り”とは言えない状況。客足の方も、震災前と同様に、とはいかないようだ。

「震災以降、前売りチケットがほとんど売れていないんです。僕たちの企画力の問題なのかもしれませんが、まだ”来週好きなバンドのライブがあるから行こう”という気分になってないのかも。電車や電気もいつ止まるか分からない状況ではこちらとしても動員も読めないし、相当しんどいです。ただ、震災発生当日の3月11日に電車が止まって帰れなくなった人の受け入れをやっていた時、普段ライブを見ないような人やしばらくLOFTから足が遠のいていたという人も来てくれたみたいで、そういう人たちがまたライブを見にきてくれるとうれしいですね」(新宿LOFT・大塚氏)

 非常時に打撃を受けやすい娯楽産業、さらにその中でも音楽業界はもともと不況が続いている。ベテランから若手までミュージシャンたちはこぞって被災地支援に乗り出しているが、彼らを育て支えてきたライブハウスが今後どうなっていくかは案外、業界の鍵を握っているかもしれない。
(文=藤谷千明)

ライブハウスモンスター

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最終更新:2013/09/13 16:58
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