なんでこの娘が主演なんだ? 田代さやか、徹底追求!『18倫』
#アイドル #映画 #梶野竜太郎
アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。
●今回のお題
田代さやか、徹底追及!
『18倫』
監督:城定秀夫
女性主演:田代さやか、紗奈、持田茜、木下あかり
いきなり何ですけど、この映画大好きです。とことん高得点です。女の子をかわいく表現するっていうのは、こういうことを言うんです!
松本タカ原作コミックを映画化。
ある日、突然お嬢様からホーム
レス状態になってしまった女子
高生が、自力で生活するため
に飛び込んだAV制作会社で奮
闘する姿を描く青春コメディー!
田代さやか、河合龍之介ほか出演。
最初は「どうして田代さやかなんだろう?」って思いました。原作マンガのキャラにそこまで合ってるとも思えないし、芝居が上手いわけでもない。まー『かにゴールキーパー』のインパクトがあり過ぎて、どんな映画に出演してもそんな印象しか持てないか。
それでも、見れば見るほど、分からなくなってくる。なんで田代さやかなんだ? けど、その反面、見れば見るほど、映画自体は面白くなってくる。1回見ただけでも十分面白いんだけど、複数回見ることによって、味が変わっていく。なんだ、この深みはっ……いや、深くないのに、味が変わる……いや、変わらないんだ。これ、きっと変わらないんだ!
今はやりの長続きガムと一緒で、変わらないところがすごいんだ! そういう映画なんだ! なんでだいっ!!??
超お嬢様学校の優等生で、医者を志す超超清純派お嬢様の池内倫子(田代さやか)。
ある日、学校から帰宅したらいつもの豪邸はカラッポ。そして父からの1枚の置き手紙。手紙には会社の倒産と、母親との離婚と、「一人で生きてくれ」の言葉。
あっという間にホームレス女子高生になってしまった倫子。路頭に迷った倫子は、生きていくために仕事を探すが、女子高生だから……いや、超お嬢様過ぎて常識がないことから、仕事はまったく決まらない。そんな倫子が内容もよく分からないまま、飛び込んだ会社は……なんとAV制作会社だった!
まぁそんな、タイトルからも、ビジュアルからも、想像できる範疇の作品ではあるのですが、この手のアイドルの女の子を使って、エッチを題材に物語を展開しよう~的な作品は過去にもよくあったわけで、今の日本の映画&Vシネ市場を考えれば分かりやすいことなのですが、それだけ出まくっているこの手の作品の中で、この『18倫』をどうしてそこまで私は絶賛してしまったのでしょうか。
まず、この映画、65分という枠の中で「いろんなことを詰め込んじゃえ~~~」っていうアイドル映画にありがちな迷走が、まったくない。
65分間、徹底して、メインどころに悪人がいない。どうしよーもないチンピラがちょっとした役で出てくる以外は、とにかくいい人ばかりの映画だ。
ドMのくせに倫子を温かく見守る社長、口はものすごく悪いのに実は優しい撮影班。最初は嫌な女なのに倫子の優しさに心打たれるAV女優。
嫌なやつの設定にもできたはずの倫子の友達。ちょっと脚本を変えれば、『キャリー』に等しいイジメ映画に成りかねないところを心の底からラブ&ピースの世界を満喫できる……。うむむ、そこまで幸せだけの物語が面白い理由はなんだ?
普通、苦あれば楽ありだから楽しい。いわゆる「負け」のない漫画で成り立ってるのは、初期の『テニスの王子様』くらいだ。
ここで、田代さやかが何故起用されたのかが、浮かび上がってくる。分析してみよう。冒頭に書いた通り、どうして田代さやか??
別に巨乳で売る役柄じゃないのに……たどたどしいお嬢様言葉&医学用語……テキパキとしてないチンタラした芝居……しかし……しかし……頭にこない。
ムカつかない……気持ちのいいイライラが楽しい……うむっ!? ここか!? これって、作中のAV制作会社スタッフ側と同じ感触なのでは???
この映画で田代さやかは、先輩たちにとことん怒られるが、社長が温かく見守っていることにより、怒られている倫子に悲壮感はなく、なんか、微笑ましい。ということは、田代さやかのドジっ子っぷりは、芝居なのか、本当なのかは別にして、劇中内とバーチャルということか。
田代さやかの起用理由は、上手くない美味さと、危なっかしいヤバさということなのか。このジャンルだから許されるのかもしれないけど、そうだとしたら、この倫子の役は、田代さやか以外、出来ない。大抜擢。うむむ、お見事である。おっぱいを売らずしてここまでやるとは! お見事!
挙句の果てに、毎回毎回、衣装がコスプレ。Vシネにはありがちな手法でも、この作品には無理がない。
だって、ホームレス状態で入社、宿は会社。着る服は、AV制作会社に山ほど置いてあるコスプレ衣装。うん、納得。
このお嬢様言葉と、言えてないようで言えている哲学的医学用語を65分間、聞いてるだけで楽しくなる。
スタッフ&キャストは全員楽しい映画でした。このテイストのまま行くんであれば、とことん続いてほしい!! 『男はつらいよ』みたいに”撮影不可能”な状態になるまで続けてほしい! 妹はさくらって名前にして欲しい! タコ社長も出てきてほしい! ロケ地を葛飾柴又で~(話が壊れてきたのでこの辺で)!
(文=梶野竜太郎)
●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/
いいコなんですよ。
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【第22回】バレない浮気の疑似体験MOVIE『セブンカラーズ』
【第21回】『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビ VS ストリッパー5』思い切りさらけ出す演出と”AV女優”の必然
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【第19回】男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』
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