福祉から無視され続ける社会的弱者としての売春少女たち【前編】
#プレミアサイゾー
若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言
■今回の提言
「就学期間中に社会へ包摂し、売春に落ちる子を救い出す」
ゲスト/鈴木大介[ルポライター]
──今月のゲストは、裏社会の住人たちを中心に、ディープな”現場”での取材を続けるルポライターの鈴木大介氏。大メディアでは取りあげられることのほとんどない、路上に生きる女性たちによる”売春”という問題をテーマに据えて、同じく売春の量的調査を進めるチキさんと、がっぷり四つで論じてもらいました。
荻上 この連載では前々回、自殺の問題を取り上げました。昨今、自殺、ホームレス、ネットカフェ難民、失業による貧困化といった問題を、いかに社会的に解決していくのか、ということがようやくテーマに挙げられるようになっています。それ自体は前進であるものの、こうした問題は、その多くを「男性」が占めるものであり、社会問題化のジェンダーギャップがあるのもまた事実です。では、女性の場合、同種の問題がどこに表れているか。そのひとつに、昨今ではなかなか語られることのない、(風俗系ではない)「売春」の問題があります。典型的なケースでいえば、貧困、厳しい家庭環境、教育からの排除などを背景に、仕事も得られず、加えて精神疾患などを併発している女性が一定のボリュームで存在している。そうした女性が、政策的なケアを受けられず、社会的包摂から外れていった挙げ句、風俗産業の外にある売春行為に陥っていくというルートが存在しています。
僕は今、出会い系・テレクラ・出会い喫茶などを主なチャンネルとして、現代日本の売春についての量的調査や聞き取り調査を進めていますが、今回は、『出会い系のシングルマザーたち』などの著作でいち早くこの現実に注目されてきた、ルポライターの鈴木大介さんをお招きしました。対象にがっつり密着し、より不可視化された層へディープに切り込んでいく鈴木さんの取材アプローチは僕とは全く異なり、とてもまねできるものではありませんが、それでも見ている風景、伝えようとしている事実はかなり一致しています。
この数十年、売春という問題は、抽象的な自由や権利を絡めた象徴闘争の場ではあっても、それ自体を分析し、実態を明らかにしなくてはならないという対象からは外されていました。そこで、最前線で取材を続ける鈴木さんとの情報交換も兼ね、現状への理解を共有できればと思っています。
鈴木 最近では、「別冊宝島」に向けて、知的障害を持っていて路上生活をしながら売春をしている子を3人取材しました。ひとりは、「彼氏」と一緒にカラオケボックスで生活してる子。なぜその子を取材しようと思ったかというと、サイトで「車の中でフェラチオして2000円」という募集をしてたんですね。毎日何回かそれを書いていて、明らかに価格設定もおかしいのでアクセスしみたら、案の定、障害を持っていた。
何度かアタックしてみたところ、その子の彼氏と称する男からサイトを通して直接電話がかかってきた。会ってみて驚きましたね。最初は、ヒモ男のように売春させてるのかと思ったんですが、本当にカップルなんですよ。カラオケで話をしたら、女の子のほうはかなり重度の知的障害で、ほぼ日本語が通じないというか語る気力もなさそうな感じで、そのうち彼氏の膝枕で寝始めちゃって(笑)。それでほとんど彼氏のほうに話してもらう取材になりました。
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