井上真央の新境地! 『八日目の蝉』疑似母娘の逃避行の結末とは
#映画 #邦画
地上に出て7日目で仲間が死に絶え、1匹だけ生き残った8日目の蝉は不幸せだろうか、それとも……。孤独、虚しさ、渇き、哀しみを抱えながら生きる女性たちの姿を、そうした象徴的な問い掛けに重ねて感動的に描く映画『八日目の蝉』が、4月29日に公開される。
中絶手術の後遺症で子どもを産めなくなった希和子(永作博美)は、不倫相手とその妻の間にできた赤ん坊を誘拐し、逃避行を続けながら我が子として育てる。4歳になり両親の元に戻った恵理菜は、実の母親になじむことができず、心を閉ざし希和子との記憶を封印して成長する。
大学生になった恵理菜(井上真央)は親元を離れ、アルバイトをしながらアパートで一人暮らしをしていた。既婚者の岸田(劇団ひとり)と関係を持っていたが、ある日妊娠したことに気付く。恵理菜はそのころ接近してきたルポライターの千草(小池栄子)に誘われ、希和子との逃亡生活をたどる旅に出る……。
『対岸の彼女』(文藝春秋)で直木賞を受賞した角田光代のベストセラー小説を、『孤高のメス』(2010)の成島出監督が映画化。かつての「母」と過ごした土地を再訪する旅で、恵理菜が少しずつ記憶を取り戻し真実が次第に明らかになるさまを、過去と現在を行き来する巧みな構成でサスペンスフルに描き出す。
主演の井上真央は、現在放送中のNHK朝ドラ『おひさま』のヒロインのように、元気で明るくさわやかな少女といった役どころがこれまで多かったが、今回は複雑な感情や思いを内に秘めながら、過去と向き合う過程で徐々に変化していく難役で新境地を切り開いた。永作博美のにじみ出るような母性、鬼気迫る表情など、希和子になりきった熱演も忘れ難い。冒頭に裁判シーンがあり、必ず逃避行に終わりが来ると観客は知らされながらも、この疑似母娘の幸福な時間が少しでも長く続くことを願ってしまうだろう。
母性が大きなテーマになっているが、決して女性のためだけの映画ではない。むしろ男性が見ることで、自らは持ち得ない「母性」とは何か、また女性とはどういう存在か、といった問いについて考えるきっかけになるのでは。カップルで鑑賞するなら、さらに素敵な時間を共有できることだろう。涙腺の弱い方はくれぐれもハンカチをお忘れなく。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
「八日目の蝉」作品情報
<http://eiga.com/movie/55771/>
衝撃。
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