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吃音に悩んだ女性教師の実話がベース 青春小説『吃音センセイ~桜舞う校庭で』

kitsuon0427.jpg著者の佐藤文昭氏。

「……のどの奥に空気の塊がつかえたように、声が出ない。音が出ない。京子はやっとの思いで声を絞り出した。『あ、あ、あの、あの、あた、し……こ、こ、こえが……』」(本文第1章 小さな心の中でより)

 大好きな母が病で死んでしまうかもしれないとのショックから、突然、吃音(きつおん)になってしまった5歳の少女・京子。伯母からは「なんの遊び?」と怪訝な顔をされ、父親からは「はっきり言わんかい!」と叱られる日々。小学校入学後も症状は治まらず、教科書を強引に最後まで読ませようとする教師と、それを嘲笑する生徒たち。周囲の無理解と心ないイジメから京子を救ってくれたのは、同級生との淡い恋と、大学で出会った恩師の大きな愛だった──。

 『吃音センセイ~桜舞う校庭で』(佐藤文昭著/講談社)は、吃音というハンディを抱えながら教師になった、実在の女性をモデルに描かれた小説である。執筆したのは、函館市で経営コンサルティングなどを手掛ける佐藤文昭氏(30)。4年ほど前に佐藤さんが講師を務めた教材関連のセミナーで、モデルとなる井坂京子さん(仮名)と出会ったのがきっかけだった。

「井坂さんは以前から、ご自分が吃音を改善した方法を教材としてまとめ、同じように吃音で苦しんでいる人たちの役に立ちたいと考えていたようです。たまたまネットで私のセミナーを知り、教材作りの方法を尋ねてくださったのです」

 これを受けて佐藤さんは吃音改善の教材作りを進めていくが、その過程である考えが浮かぶ。それは、井坂さんの波乱に富んだ人生を一冊の本にまとめ、多くの人に伝えたいというものだった。

「壮絶なイジメに遭いながら、子ども心に死すら考えたという彼女が、どのように悩みを克服したのか。そして、人前でしゃべらなければならない教師という職業をなぜ選んだのか。井坂さんの人生は、同様の悩みを抱えている人々に強いメッセージになると思ったんです」

 佐藤さんの提案に対して、当初は「個人的な体験をさらけ出すことは……」と消極的だった井坂さんだが、「ノンフィクションではなく、あくまで架空の小説という体裁なら」と快く承諾。井坂さん以外の吃音で悩む人たちの体験談も織り交ぜながら、事実をもとにした「青春小説」に仕上げられた。

 吃音とは一般に「どもる」症状のことを指すが、厚労省の調査では国内の吃音者の約8割が自然治癒しているという。また、完治しない人についても「吃音とは人生を通して上手につきあっていくという選択肢もある」(日本吃音臨床研究会HPより)とする専門家の指摘もある。多様性を認めながら支えあう共生社会の確立が、今の日本には強く求められていると言えるだろう。

 著書の佐藤さんが言う。

「価値のある人生を生きなければと多くの人は悩みますが、井坂さんとお会いして、生き抜くことにこそ価値があるのだと思うようになりました。この本を通して、多くの人にそのことを伝えることができればうれしいですね」

 同著は現在、ドラマ化に向けても準備が進められている。実現すれば、より多くの人に佐藤さんの思いを伝えることができるだろう。

吃音センセイ -桜舞う校庭で

感動作。

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最終更新:2013/09/13 18:05
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