新宿駅痴漢冤罪暴行事件 原田信助さんの母親が警視庁を相手取り提訴へ
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大学職員の原田信助さんが2009年12月、JR新宿駅にて、通りすがりの大学生グループに痴漢の容疑をかけられて激しい暴行を受けたり、警察による冷徹な取調べが理由で自らの命を絶った、いわゆる「新宿駅痴漢冤罪暴行事件」。10年12月に当サイトで報じたところ(記事参照【1】、【2】、【3】、【4】)、4回の連載を通して5,000件を超えるリツイートがつくなど多くの反響があった。事件の背景に新宿警察署のきわめて強引な捜査や、現場となったJR東日本の不適切な対応があったことは既報の通りである。
警察の取調べに強い疑問を持った遺族の母・尚美さんは、裁判所を通して当時の警察の取調べ調書の開示請求を行い、その調書が昨年12月に開示された。この結果、痴漢の「被害者」を名乗っていた女子大生が、信助さんを犯人と「見間違えた」と証言していることが判明している。新宿警察は被害者の証言もないままに信助さんを痴漢犯として書類送検したことになり、組織的な犯人でっちあげの可能性が極めて高くなった。
そんな中、母・尚美さんは警察庁を相手取り、国家賠償請求の提訴をこのほど決断。その記者会見が4月26日15時より、弁護士会館(東京都霞ヶ関)5階で行われるという。
「明るい警察を実現する全国ネットワーク」(以下、警察ネット)代表で、今回の弁護団の主任弁護士を務める清水勉弁護士は、信助さんのような冤罪事件は「決して例外的なものではない」とした上で、警察の日常業務のやり方に構造的な原因があると指摘する。
「信助さんを取り調べた警官が特別にひどいという話ではなく、普段から警察の取調べというのは人権に配慮がなされているとは言えない状況です。仮に内部で誰かがそれを問題提起しても、『人権配慮なんて必要ない』『ミスをしたらもみ消してやる』というのが今の警察組織のスタンスです。警察の側にもひどいことをしているという自覚はあるのですが、『とにかく検挙率を上げろ』という空気の中で、警官たちは仕事をしている。その延長上にあるのが、足利事件であり、原田信助さんのような冤罪事件なんです」
日常的な職質や任意の取調べで酷い目に遭わされ、しかも不起訴になるようなケースは法廷ですら争われることもなく、ほとんどすべての人が泣き寝入りしているのが現状だというのだ。警察白書の数字に出てくる検挙数の中には、かなりの部分でこうしたケースが含まれていると清水弁護士は言う。
「今回は信助さんが、ICレコーダーで警察とのやりとりなど、かなりの部分を録音していてくれたわけですが、死ぬ間際のギリギリまで録音していたというのは、彼が『なんとかしてくれ』と我々に問題提起をしたのだと受けとめています。『警察ネット』では警察のあり方について、警察の側からも相談を受けているわけですが、その立場から考えても、今の警察の仕事の仕方には大きな問題があると言わざるを得ない。そのことを今回の裁判を通してしっかりと提起しなければならないと考えています」
不適切な警察の取調べが日常的に行われ、これにより冤罪が構造的に生み出され続けているとすれば、信助さんの事件はすべての日本人にとって他人事ではない。今後の裁判の行方が注目される。
(文=浮島さとし)
●母・尚美さんのブログとツイッター
<http://harada1210.exblog.jp/>
<http://twitter.com/harada1210>
●支援者のまとめブログ
<http://harada1210.blogspot.com/>
真実を。
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