今こそ考える自然エネルギーと原発の呪縛から逃れる方法
──ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地
3月11日に起こった東日本大震災は、数多くの被害を国内外にもたらしたが、その中でも福島原発問題は、震災から1カ月が経った現在でも収束する兆しは見えない。こうした中、原子力発電の必要性があらゆる所で議論されているが、原子力発電所や電力会社に詳しい飯田哲也氏は、瀬戸内海の島に建設が予定されている上関原発の問題点から、新しいエネルギーのあり方を提案している。いびつな電力会社の経営状況と原発の運営方法、そして民主党によるエネルギー政策の欺瞞とともに、今だからこそ考えるべき自然エネルギーについて考察してみたい。
(※本鼎談は、東日本大震災の発生前に収録されたものです)
今月のゲスト
飯田哲也[環境エネルギー政策研究所所長]
神保 今回は、自然エネルギーが専門で原子力発電所の問題にも詳しい、NGO環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さんをゲストに迎え、現在中国電力が建設を計画している山口県熊毛郡上関町・上関原子力発電所の建設現場で起きている反対運動を取り上げます。
私は先日、上関原発、およびその対岸に位置する祝島で取材を行いました。祝島は人口500人で、平均年齢がおよそ79歳という、高齢者が多い島ですが、現地の漁業協同組合は、原発建設に対する補償金の受け取りを拒否し、工事への反対運動を行っています。漁師の方々が船を出して、原発の建設予定地に建設資材を運ぶ船舶をブロックすることで、辛うじて工事が止まっている状況です。加えて、普天間基地の移設先とされた沖縄の辺野古の反対運動のように、全国から「虹のカヤック隊」と呼ばれるカヌー乗りの若者たちが集まり、祝島の漁師さんたちの反対運動を支援しています。しかし、2月に入ってからは、中電が工事を強引に進めるような動きを見せており、現場では繰り返し衝突が起きています。
飯田 原発の工事が本格化すれば、周辺の漁業は壊滅的なダメージを受けますから、漁協関係者の方は必死です。そして、同じくらい大事なのは、上関原発建設予定地である「田ノ浦の浜」には、世界遺産級の自然が残っているということ。同地は、世界唯一のカンムリウミスズメの生息地であり、瀬戸内海中を探しても、あれだけの自然が残っている場所はありません。
神保 またカヤック隊の皆さんはこの問題がテレビや新聞ではほとんど報道されない中、インターネットで知り、抗議運動への参加を決めたと話していました。彼らは現在、自分たちの活動をUSTR EAMで配信しています。飯田さんは、この祝島の反対運動について、従来の原発反対運動とは異なる性格を持っていると言われていますが、まずその理由からお話しください。
飯田 中電は現在、電力を余らせている状態です。なおかつ、島根原発3号機がもうすぐ完成するので、電力はますます余る。販売電力は減ってきているのに、その中でさらに原発を造ろうとしているんです。今回の原発計画は経営的に見ても、電力収支から見ても、恐ろしく非合理なもの。六ヶ所再処理工場と並ぶ、最もナンセンスで、無意味な原子力計画だといえます。現在、中電は”電力融通”という形で、関西電力を中心に余った電力を買ってもらっている。そして、この先も電力需要が下がっていくことは確かなのに、彼らはいきなり業績が回復するかのような空想的な計画を描いています。
神保 つまり、この原発計画はそもそも電力需要の点から必要がない上に、中電という企業にとっても過大な負担になる可能性が大きいから、原発への賛成反対を度外視してもやるべきではないと。中電による「将来電力需要が増えるという根拠」が、今後、中国地方の経済が飛躍的に伸びるという前提の上に立ったものであることに不安を覚えます。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事