トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 自粛ムードに性と生の熱気を吹き込むエロスの原点が結集した「昭和エロ劇画クロニカル」

自粛ムードに性と生の熱気を吹き込むエロスの原点が結集した「昭和エロ劇画クロニカル」

gekiga01.jpg

 表現の規制をめぐり、暗い話題が続くエロマンガ業界。その陰鬱とした空気を吹き飛ばすがごとく、熱気あふれる展覧会が銀座・ヴァニラ画廊で開催されている。

「昭和エロ劇画クロニカル『1970年代を疾走した愛と夢』」と題されたこの展覧会は、70年代に巻き起こった、いわゆる”三流エロ劇画ブーム”をけん引した劇画家たちの生原稿が壁一面に並べられている。 

 そもそも”三流エロ劇画ブーム”とは、70年代中期に勃興した一大ムーブメントだ。このブームの勢いはすさまじく、一時には月に50~60誌余りが発行、そこに増刊・別冊などの枠を加えると実に100誌余りが毎月発行されていたのだ。ネガティブに言えば、粗製乱造だ。しかし、そこには「エロがあれば、あとはなんでもアリ」という自由があった。どんな前衛的な作品だろうが、難解なストーリーだろうが、エロがあれば自由なのである。そこに、血気盛んな若い編集者や劇画家たちが飛び付かないわけはない。マンガ研究者の永山薫氏は自著の中で「今から見れば団塊・全共闘世代の最後の一暴れだった」と記す。

gekiga_nakajima.jpg(c)中島史雄

 今回、会場に並ぶ、あがた有為、石井まさみ、榊まさる、ダーティ・松本、つか絵夢子、つつみ進、冨田茂、中島史雄、羽中ルイ、早見純、間宮青児らは、文字通り「一暴れ」して、劇画表現の新たな時代を作った面々だ。

 その一人であるダーティ・松本氏は語る。

「あのころは、誰も個性が決まっていなかった時代。今と違ってお手本にできる作品がないから、編集も作家も、みんな手探りでやっていた。だからこそ、それまでにない自由な作品を描くことができたんです」

gekiga_matsumoto.jpg(c)ダーティ・松本

 ダーティ氏は「当時は人気投票もなかったから(自由に描けた)」とも話すが、ブームになり得たのは、単に自由だったからだけではない。創作に対するパワーが違う。ダーティ氏は現在も作品を発表し続けているし、コミックマーケットなどの同人誌即売会にも積極的に参加している。他の劇画家でも、あがた有為氏は近年では坂本六有の名で漫画原作者として活躍中(近作は、ふくしま政美氏と組んだ『女犯坊』)だったり。とにかく、誰もが40年近くにわたって現役感覚を失っていない。展示された作品群は、創作に賭けた人生の原点と言えるものだ。

 この展覧会は長年にわたって「いつかやろうと思っていた企画」だというヴァニラ画廊代表・内藤巽氏も熱く語る。

gekiga_tutumi.jpg(c)つつみ進

「この時代のパワーを持っている劇画家さんたちの原画を、ぜひ生でご覧になっていただきたいと思います。70年代初頭、町の書店には『ガロ』や『COM』と同じ平台に、赤塚不二夫編集の『まんがNo.1』が並んでいました。一方で町の米屋や牛乳屋のスタンドで、表紙を見せて売られていたのが、三流エロ劇画誌と言われる一群です。60年代の熱い空気が、行き場を求めてエロマンガという媒体に一気に流れ込んだ感じでした。何人にも束縛されない表現と、自由な編集方針で百花繚乱のごとく現れた三流エロ劇画誌を、今でも愛してやみません」

 4月23日(土)には、ダーティ・松本氏と高取英氏(エロ劇画誌の代表格である『漫画エロジェニカ』編集長にして、今や京都精華大学マンガ学部教授に!)による特別トークイベントも予定されている。ちまたに自粛ムードがあふれる中、何十年も創作のパワーを衰えさせない劇画家たちの作品は、見る者に活力を与えてくれるはずだ。

 これを見ずしてエロスは語れない!
(取材・文=昼間たかし)

<開催詳細>
昭和エロ劇画クロニカル「70年代を疾走した愛と夢」
日時:2011年4月11日(月)~4月30日(土) 入場料:500円
※7日(日)、4日(日)も特別に営業(17:00まで)。
※18歳未満入場不可

会場:ヴァニラ画廊
東京都中央区銀座 6-10-10第2蒲田ビル4階
TEL 03-5568-1233
<http://www.vanilla-gallery.com/>

■特別トークイベント:高取英/ダーティ・松本
日時:4月23日(土)17:00~18:30 
入場料:2,000円(1ドリンク付)

官能中毒家―あがた有為作品集

生粋。

amazon_associate_logo.jpg

最終更新:2013/09/13 19:35
ページ上部へ戻る

配給映画