欧米は大成功、日本では苦戦? グルーポンが陥った”落とし穴”と”胸算用”
#プレミアサイゾー
──50%を超える大幅な割引率や「おせち事件」など、良くも悪くも話題を振りまくグルーポン。現在では、多くの類似サイトが立ち上がった共同購入型のクーポンビジネスだが、その展望は明るいのだろうか?
『クーポン・プロモーション戦略』(ラッセル・D・ボーマン著/ビジネス社)によると、世界で初めて割引券という形のクーポンが発行されたのは1895年。アメリカの大手シリアルメーカー「C・W・Post」社(現ゼネラルフーズ)が「クレープ・ナッツ」という商品を販売する際、インセンティブとして1セントの割引クーポンをユーザーに配布したのが発端だ。その後アメリカでは、第2次世界大戦後の大量生産・消費時代を迎えてマーケティングの需要が高まり、クーポンはセールス・プロモーションの一環として生活に浸透していった。
一方日本では、1984年よりクーポン券が登場したという記録があるが、普及の契機が訪れたのは87年10月1日。公正取引委員が「雑誌業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約第7条および同規約施行規則第8条第3号についての運用基準」において「クーポン付き広告の掲載に関するガイドライン」を施行・制定した時だ。これはクーポン広告の掲載に関する規制緩和であり、90年になると新聞でも「クーポン付き広告に関する規則」が承認されたことで、各雑誌媒体や朝日、読売といった大手新聞がクーポンを掲載するようになる。そして、96年にインターネットグルメサイト「ぐるなび」、99年にはぴあの「グルメぴあ」、00年にはリクルートの「ホットペッパー」と、クーポン雑誌やウェブサイトが続々と登場して一般に浸透していった。
そして08年、アメリカでグルーポンが産声を上げ、短期間でサービスを販売するフラッシュマーケティングによるクーポンビジネスがスタート。一定数の購入者が集まれば、50%もの割引となるそのサービスは、10年4月、日本でも「グルーポン」に影響を受けて、フラッシュマーケティングの手法を導入した「ピク」が登場。同年6月にはグルーポンが共同購入サイト「Q:pod」を運営するクーポッドを買収して日本参入を果たしたのを皮切りに、同年7月にはリクルート「ポンパレ」、8月にはUSEN「ピタチケット」とシェアリー&SBIインベストメント&光通信「シェアリー」、10月には一休の「一休マーケット」、12月には日本テレビ「日テレぐるチケ」と、わずか1年足らずで雨後の筍のように共同購入型クーポンサイトが林立した。
「新しいサービスとはいえ、ほとんどが既存のテクノロジーを応用したものです。販売している商品を購入する人が増えれば増えるほど安くなるという『共同購入(ギャザリング)』は楽天やヤフーのようなショッピングサイトで行われていて、そこに『フラッシュ(短時間)』という概念を組み込んだだけ。あとは商材を確保する営業力があれば、小資本でも始めることができます」(リクルート関係者)
もちろん、サイトの知名度を高めてユーザーを集めるための広告費は必要(後述)だが、この手軽さからSNSに次ぐビジネスチャンスを求めていたIT企業が飛びついたのだろう。とにもかくにも、雑誌やウェブの”枠”を売っていた既存のビジネス形態の中に、クーポンの販売手数料を徴収するという新サービスが誕生し、活況を呈するに至った。
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