80年代の思い出がフラッシュバック! 『僕らのナムコ80’sトリビュートコミック』
#本 #オタク #ゲーム #サブカルチャー
「俺、ゼビウスが好きだったんだ」と誰かが言えば、「ああ、ノートで情報交換したよね」「バキュラって弾を256発打ち込まないと倒せないんだっけ?」「僕はマイコンで『タイニーゼビウス』をプレーしてたよ」「細野晴臣が『ビデオ・ゲーム・ミュージック』ってLPを出したよね」という具合に、聞いてもいないのに今も誰かが次々と答えてくれる。そんな熱気と愛情が、1980年代のテレビゲームにはあふれていた。
やがて彼らの話題の中心はゲームそのものから、当時の思い出話へと移っていく。「学校帰りに100円玉握りしめて駄菓子屋に通ったんだよね」「中学生にカツアゲされちゃってさ」「ファミコン版を買ってもらってうれしかったなあ」「そういえば、ゲーセンで知り合った友達もいたけど、結局最後まで名前が聞けなかったんだ」。
テレビゲームがごく身近な存在となった80年代。子どもたちの生活は、常にゲームとともにあった。その中でもとりわけナムコのゲームは、テレビゲーム黎明期より冒頭の『ゼビウス』をはじめ、『ギャラガ』『ドルアーガの塔』『ワルキューレの冒険』など、質・量ともに他メーカーから頭ひとつも2つも飛び抜けた作品ばかりだったように思う。
そんなテレビゲームにハマりまくった子どもたちだが、そのうち何人かはゲームを卒業していった。何人かは今でもゲームを愛し続け、プレーし続けている。そのうちさらに何人かは、ゲームに関わる仕事に就くようになった。彼らが再び一つの場所で交わることは、おそらく二度とないかもしれない。それでも、もし彼らがもう一度一つの話題で屈託なく盛り上がることができるとするならば、彼らが一生懸命攻略しようとした思い出のゲームを回顧する時ではないだろうか。
『僕らのナムコ80’sトリビュートコミック』(ジャイブ)は、そのきっかけとなりうる一冊である。80年代をゲームセンターや駄菓子屋の喧騒の中で過ごしたヤスダスズヒト、雑君保プ、押切蓮介、久松ゆのみら14人の漫画家たちがさまざまな視点とアプローチで一時代を築いたナムコゲームの魅力を、そして彼らのナムコへのほとばしる愛を描き出す。「ナムコ直営ゲームセンター・キャロットでの思い出」「ナムコットブランドのプラスティック製パッケージのかっこ良さ」「高校をドロップアウトした主人公が通っていたゲームコーナーでの小さな恋」「かつて存在したナムコの広報誌『NG』で連載されていた漫画『午後の国』の書き下ろし新作」など、「あったあった!」と膝を叩いて笑い懐かしんだ後に、ちょっとだけセンチメンタルで爽やかな感動が読者の胸を包み込む。そんな「あの頃」が蘇るような漫画が誌面を飾っている。
過去を振り返るという行為は後ろ向きな行為だろうか? いや、そんなことはないはずだ。何が自分たちの心をとらえて離さなかったのか。何が自分と友人を繋いでいたのか。そして何が自分たちに影響を与えたのか。そんな己のルーツを確認する行為は、きっと不安と波乱に満ちた現代を生き抜く活力を我々に与えてくれるはずだ。
先行きの不透明なこんな時代だからこそ、自分たちが熱中したゲームの思い出に浸って一休みしてみるのもいいかも知れない。
(文=有田シュン)
やっぱりナムコだね。
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