はかない青春の残酷さと切なさ 『わたしを離さないで』
#映画 #洋画
わが国を襲った未曾有の天災によって多くの命が奪われ、日常生活への無条件の信頼も大きく損なわれた。こんな時、自分の暮らしぶりや生きることの意味を、映画を通じて異なる視点から見つめ直すことも気持ちの助けになるのではないだろうか。
現在公開中の『わたしを離さないで』は、カズオ・イシグロの同名小説を、『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドの共演で映画化した作品だ。
外界から隔絶され豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。仲良しのキャシー(マリガン)、ルース(ナイトレイ)、トミー(ガーフィールド)は、絵や詩の創作活動に励みながら、「特別な子ども」として育てられた。18歳で学校を出て農場のコテージで共同生活を始めるが、恋愛感情から彼らの関係も変化していく。3人はヘールシャムの秘密に迫り、定められた運命に立ち向かおうとするが……。
作品の世界には、あるSF的な設定があり、それがヘールシャムの謎と寄宿生たちの運命に関係している。美しいイギリスの田園地帯を背景に、切ないラブストーリー・衝撃のミステリー・命の意味への問いかけという要素が絡み合いながら展開する本作。ストーリーが進むにつれて、隠された真実が少しずつ明かされていく。三者三様の生き様の中で、悲しみを抑えながら過酷な運命に静かに向き合うキャシーの姿が特に印象に残る。
趣は異なるが、ソフィア・コッポラ監督の新作『SOMEWHERE』(4月2日公開)も、自分の生き方を見つめ直すための気づきをもたらしてくれる一本だ。
ハリウッドにあるスター御用達の伝説的ホテル「シャトー・マーモント」で、華やかなセレブライフを送りながらも、むなしさを感じている映画俳優のジョニー・マルコ。前妻から預けられた11歳の娘クレオと穏やかな日々を過ごすうち、心境に変化が訪れる。
監督自身が父フランシス・フォード・コッポラと過ごしたシャトー・マーモントでの思い出や、2児の母となった実感を投影したという本作。享楽的なホテル暮らしを惰性で続けながら、どこか居場所のなさを感じているジョニーを、『バック・ビート』『パブリック・エネミーズ』のスティーヴン・ドーフが好演している。
クレオ役のエル・ファニングは、言わずと知れたダコタ・ファニングの妹。かつて天才子役として名をはせたダコタが新作『ランナウェイズ』で大人の女性に変ぼうしてみせたのに対し、エルは今がまさに旬の美少女。フィギュアスケートのシーンで発揮されるスラリと伸びやかな肢体、会話の中やプールの水中で見せる天使のように愛くるしい表情など、彼女の魅力を心ゆくまで鑑賞できる作品でもある。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
「わたしを離さないで」作品情報
<http://eiga.com/movie/55678/>
「SOMEWHERE」作品情報
<http://eiga.com/movie/55730/>
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