『まど☆マギ』視聴難民がネットに殺到! オタク業界変革期を直撃した震災の余波
#アニメ #オタク #東日本大震災
3月11日に発生した東日本大震災から早くも3週間。いまだ多くの被災者が眠れぬ夜を過ごす中、日本が世界に誇る文化を発信するオタク業界にも大きな影響が出始めている。
3月に開催される予定であった東京都主催の「東京国際アニメフェア2011」、及び都の表現規制の取り組みに反発する出版社が中心となって同日に開催を予定していた「アニメ コンテンツ エキスポ」の中止に始まり、大小問わず続々とアニメ・漫画関連のイベント・ライブは中止。また、ゲーム業界も人気シリーズ最新作『龍が如く OF THE END』(セガ)の発売が延期。災害脱出ゲーム『絶体絶命都市4』(アイレム)は発売中止。「東京ゲームショウ2011」の開催も危ぶまれるなど、見通しの立たない今後の展開に各業界は頭を抱えているようだ。
「角川書店は5月25日発売予定の『涼宮ハルヒの驚愕』が刷れないかもしれない、と戦々恐々としています」
と語るのはオタク業界に詳しい関係者だ。
3月25日に印刷インキ工業連合会が東日本大震災の影響から、「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況について」という声明文を発表。日本国内の出版業界に大きな衝撃を与えたが、早くもその影響が出始めている模様だ。
『涼宮ハルヒの驚愕』は、2003年に刊行スタートした角川書店のドル箱ライトノベルシリーズの最新刊である。これまでに9巻が刊行され、累計発行部数650万部を記録。さらに小説とそれを元にしたコミック版も大ヒット。同作は06・09年にはTVアニメが放送され、10年には劇場用アニメも公開されるなどゼロ年代後半のオタクシーンに多大な影響を与えた作品だが、原作の新刊は07年に刊行された『涼宮ハルヒの分裂』以来、4年ぶりの発売となる予定だった。
「『涼宮ハルヒの驚愕』は上下巻で計600ページという大作になっています。さらに初回特典としてオールカラー64ページの冊子も付きます。発行部数もこれまでの実績から考えて数十万部レベルだと考えられるので、当然必要となるインクや紙の量も莫大なものになるでしょう。角川は相当、危機感を持っているようです」(同業界関係者)
その一方で、震災後に発売された「週刊少年ジャンプ」(集英社)15号がネットで無料配信されたのに続き、講談社は「週刊少年マガジン」をはじめとする漫画雑誌の一部を期間限定で無料公開。この一連の流れを、電子書籍市場普及への大きな一歩だと見る向きも存在する。
また、アニメ業界でも、ちょっとした地殻変動が起こり始めている。
『フラクタル』(フジテレビ系)を手掛ける山本寛監督が、Twitter上で第9話の中に災害の影響でカットされてしまったシーンがあることをカミングアウトしたほか、3月19日公開の『映画プリキュアオールスターズDX3 未来に届け! 世界をつなぐ☆虹色の花』は津波シーンをカットして上映されるなど、表現のあり方が問われる事態となっている。さらに、報道特番などによって放送スケジュールが大きく変更され、番組改編期の4月まで放送が食い込んでしまうタイトルも出てくるなど、少なからず影響を受けているアニメ業界。
その中でも特に大きな話題を呼んだのが、2010年代最初にして最大のヒット作との呼び声も高い『魔法少女まどか☆マギカ』(TBS系)第10話の、関東圏での放送が震災の影響で流れてしまった一件だろう。
視聴難民となったアニメファンは、同番組がネット配信されている「ニコニコ動画」に殺到。第9話の倍近い視聴者がネットでアニメを視聴した。
「もともと、アニメのネット配信は少しずつ増えてきてはいたのですが、まだ地上波放送のおまけ程度の存在という感は否めませんでした。しかし今回の震災を通じて、多くのアニメファンはネット配信をテレビに並ぶチャンネルのひとつとして認識するようになったのではないでしょうか」
と、アニメ雑誌記者もコメントする。
偶然にも、この4月よりスタートする新作アニメ47タイトルのうち、4分の1以上にあたる12タイトルが地上波と同時に無料でネット配信も行うことが決定している。
昨年の同時期に比べて、放送タイトルの総数もさることながら、ネット配信作品数も急増している。
地上波では放送自粛傾向が強まる上に、7月に予定される地上波アナログ停波を経てますます進行するであろうテレビ離れの影響もあって、今後さらにアニメの視聴スタイルが変わっていくことが予想される。
インターネットの台頭とテレビ視聴スタイルの移り変わりに加え、突然の東日本大震災により大打撃を受けたオタク業界は、大きな変革の時代を迎えつつあるようだ。
(文=マーブル吉田)
オタクもテレビ離れ。
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