勝利を信じて闘い抜け! 困難に立ち向かう不屈の闘志『ザ・ファイター』
#映画 #洋画
東日本大震災の甚大な被害とその影響で、日本中が悲しみと不安に覆われている今日この頃。心の支えになるような何かを映画に求めるとしたら、困難に立ち向かう不屈の闘志だろうか、それとも気持ちやすらぐ癒やしだろうか。
3月26日公開の『ザ・ファイター』は、実在の名ボクサーとその兄を題材にした感動の人間ドラマ。マサチューセッツ州ローウェルに住む元ボクサーのディッキーは、かつてはスター選手とも戦う町の英雄だったが、麻薬に溺れ自堕落な日々を送っている。そんな兄にボクシングを教わったミッキーは、兄がトレーナー、過保護な母親がマネジャーという体制で試合に臨むが、対戦相手に恵まれず一向に勝てない。だが、恋人との出会いと兄の逮捕が転機となり、順調に勝利を重ね、ついには世界タイトルマッチへの挑戦が決まる。そしてちょうどその頃、兄が刑務所から出所する……。
努力家で真面目な弟と、天才肌でお調子者の兄という好対照のふたりを、プロ並みのトレーニングを3年続けて撮影に臨んだマーク・ウォールバーグと、役作りで13キロ減量し髪を抜き歯並びまで変えたクリスチャン・ベールがそれぞれ熱演。ベールと母親役のメリッサ・レオが先月の米アカデミー賞で助演男優賞、助演女優賞をそろって受賞したことも話題となった。
メガホンを取ったのは、『スリー・キングス』のデビッド・O・ラッセル監督。試合のシーンでは、対戦相手に本物のプロボクサーを、撮影にテレビ中継スタッフを起用するこだわりぶり。テレビ画面風の処理を施したショットの挿入も相まって、リング上で実際に行われているファイトを生中継で観戦しているかのような迫力だ。家族と恋人に支えられ、長く苦しい時に耐え、勝利を信じて戦い抜く主人公の姿は、観客の心を振るわせ、明日への活力をもたらしてくれることだろう。
アツイ映画もいいけれど、心を和ませてくれるような作品が見たいという向きには、現在公開中の『ファンタスティック Mr. Fox』がおすすめだ。『チョコレート工場の秘密』で知られるロアルド・ダールの原作小説を、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』のウェス・アンダーソン監督がストップモーション・アニメで映画化した。
野生のキツネMr.Foxは盗みのプロで、農家からニワトリやアヒルを失敬していたが、妻のMrs.Foxの妊娠と、罠にかかり絶体絶命のピンチに陥ったのを機に足を洗う。数年後、妻と息子の3人で穴ぐら生活を送りながら新聞記者として働くMr.Foxは、見晴らしのいい丘に立つ大木の家への引っ越しを決意。しかし丘の向こうには、意地悪な金持ちの農場主3人が住んでいた。泥棒稼業に復活し、人間たちの農場から獲物を盗むことを繰り返すMr.Foxら動物たちと、激怒してキツネを捕獲しようとする人間との穴ほり合戦が始まる。
これまで実写映画でもアンダーソン監督が一貫して表現してきた箱庭的な世界観と、愛らしい動物のパペットを1コマずつ動かして撮影したストップモーション・アニメの相性は抜群。作り手の愛情が伝わってくるパペットの造形と動きは、眺めているだけで自然と笑みがこぼれてしまう。動物対人間の冒険活劇も心躍るが、夫婦愛、親子愛もしっかり描かれており、大人から子どもまで幅広い世代が楽しめる作品だ。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
コンバットアドベンチャー。
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