ソーシャルメディアを生かしきるキュレーションってなんだ!?
#佐々木俊尚 #プレミアサイゾー
──激変するITビジネス&カルチャーの深層を抉る!
今、「ソーシャルメディア」が勃興期を迎え、花盛りとなっている。ツイッターやフェイスブックに代表されるこの情報流通形態は、とにかく流れてくる情報の多さが特徴のひとつ。これをさばくために欠かせない”キュレーター”の存在について考察する。
める”目利き”の存在が鍵を握る。
先頃、『キュレーションの時代』 (ちくま新書)という本を上梓した。マスメディアによる情報流通という形態が徐々に衰退に向かって、その代わりにツイッターやフェイスブック、さまざまなクチコミサイトなどのソーシャルメディアを媒介にした情報流通がこれからは主流になっていく。そういう時代においては、無数の情報の中から「どの情報が良い情報なのか?」という選別をしてくれる目利きの人が重要になる。そしてソーシャルメディア上ではそのような目利きの人=キュレーターがあなたの前に無数に立ち現れてくる、というような未来図を描いた。
たとえばツイッターで良い情報をRTしている人もキュレーターだし、たくさんのレストランの中から自分の価値観に基づいてお店を推薦し、「食べログ」などにレビューを書いている人もキュレーターだ。電子書店で書評を書いている人もそうだし、さらにいえば2ちゃんねるなどの「まとめサイト」も立派なキュレーションである。2ちゃんねるには多くの掲示板があり、無数のスレッドが日々立ち上げられている。これらを網羅的に追いかけるのは一般の人にはほとんど不可能で、そこでまとめサイトがどこからか面白いスレッドだけを拾ってきて、しかもその中から意味のある書き込みだけをすくい上げて並べ替える。
キュレーションの定義を、私は「多くの情報を収集し、選別し、意味づけを行って、人々と共有すること」と解説しているが、2ちゃんねるの膨大な書き込みを収集し、そこから意味のある書き込みだけを選別し、それをひとつのストーリーの中に配置してまとめサイトとして配信するという行為は、まさしくキュレーションそのものということなのだ。
そもそもキュレーションを自らの意思と共に行おうという場合には、次のような要素が必要となる。
【1】質の高い情報を紹介していること。
【2】それらの質の高い情報を「どう読み取ればいいのか」という視点をきちんと提供していること。
「質が高い」といっても、「誰が読んでも面白く読める」ということを目指すわけではない。そういう情報はテレビや新聞などのマスメディアに任せておけばいいのだ。そういうマス的な情報を提供するのではなく、もっと専門的な分野で「ニッチだけど、そういう情報を欲しがっている特定少数の人には必ず読んでもらえそう」という分野がキュレーションの主な舞台となる。
「専門分野」という言葉を使うと、「自分にはそんな専門分野はない」「ただの会社員だし」と思う人もいるかもしれない。しかしここでいう専門分野とは、医療とか学術とか企業会計とか、そういう大それた専門分野だけを指しているわけではない。たとえばコンビニでアルバイトしている青年だって、コンビニの仕事の実態やアルバイトという仕事のあり方については、きっと普通の会社員よりずっと多くの知識や考えを持っているはずだ。そうした専門性を、キュレーションで発揮していくような可能性を私は考えている。
そして、このようにして収集した情報に、キュレーターたち自らが、自分の価値観や考え方をコメントして加えていく。「いま注目の記事」「必読」といったコメントだけではなく、「なぜ注目しているのか」「なぜ必読なのか」「なぜお薦めするのか」という自分なりの視座がなければ、受け手の側はその情報をどのように読み解けばいいのかわからない。「注目の記事」「注目の店」という情報だけでは、「自分にとっても注目すべきなのか?」という文脈を認識できないからだ。その部分の文脈をきちんと加えていくことが必要なのである。
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