ウィキリークスは情報社会の9・11か 『日本人が知らないウィキリークス』
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2010年11月に起きたアメリカ外交公電リーク事件は、世界中の政府機関を震撼させた。公開された約25万点にもおよぶ公電の中、特に注目を集めたのが各国首脳に対する下品な悪罵で、アメリカ国内のみならず各国首脳が深い懸念を示した。アメリカの信用問題だけではなく、どの国、どの企業の機密もリークによって公開されてしまうという、情報の機密性がおびやかされている事態なのだ。アメリカおよび各国政府はウィキリークス編集長ジュリアン・アサンジ氏を「ハイテク・テロリスト」と危険視し、スウェーデンで性的暴行を行った疑いがあるとして逮捕。現在、軟禁状態にある。これに対し、シドニー、マドリードなど世界中で抗議運動が起こっている。
この事件で初めてウィキリークスの名を耳にした人も少なくないのではないだろうか。『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)は、「tsudaる」で有名な津田大介氏、元外交官・元防衛大教授の孫崎亨氏ほか5人の識者が、ウィキリークスについて語った新書だ。ウィキリークスの概要、過去のリーク事件との比較、ウィキリークスの匿名技術、事件に伴うメディアの変容、哲学的観点から視るウィキリークスなどが述べられており、メディアの未来やリークの善悪、公益・国益の問題などについて深く考えさせられる内容だ。
そもそもウィキリークスとはどういった組織なのか。
06年末に開設された、機密情報を公開する非営利目的のウェブサイトで、匿名で投稿された政府や企業の機密情報を、ウィキリークスに参加しているジャーナリストが検証して掲載するというシステムで成り立っている。その大きな特徴は、何十万件とケタ違いに膨大な文書の掲載数、既存メディアとの提携、複雑に暗号化された情報源の秘匿性にある。今までリークは死を決して行うものであったが、ウィキリークスにより秘してリークができるようになった。上記のアメリカ外交公電流出以外にも、アフガン紛争関連資料の公開や、イラク戦争の米軍機密文書の公開など、大きな反響を呼んでいる。特に米軍がイラクで民間人を殺傷している動画は衝撃的だ。ちなみに、掲載された米外交公電で日本に関連するものは5,697件。これらはすべてウィキリークスのサイトで閲覧できる。
昨年9月の尖閣諸島における中国漁船衝突映像はYoutubeで流出され、先日のエジプトの反政府デモではFacebookがデモを呼びかけるのに大きく役立ったと言われている。マスメディアではなく、個人から発信される情報が重要性を増しているのだ。
「公開は世界をより良くする。正しさは歴史が証明する」(ジュリアン・アサンジ氏)
今後もウィキリークスの動向から目が離せない。
(文=平野遼)
これが正体。
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