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裏社会と児童養護施設のキケンな関係【1】

必要なのはランドセルだけじゃない! 法整備が進まない児童養護施設と保護者なき子どもの行く末

──年末年始にメディアを賑わせた「タイガーマスク運動」。それと同時に脚光を浴びたのが、「児童福祉法」の改正だった。しかし、問題視されてきた”養護児童の年齢制限”は解決されず、未成年で放り出される子どもたちは、生きるために「裏社会」に行くしかないと訴え続けている──。

 2010年12月、群馬県の児童相談所にマンガ『タイガーマスク』(講談社)の主人公・伊達直人を名乗る人物からランドセル10個が贈られたことを皮切りに、全国各地の児童養護施設に寄付行為が相次いだ、通称「タイガーマスク運動」。暗いニュースばかりの中、久々に降ってわいた美談とあって、メディアでも積極的に報じられた。しかし、そのほとんどが美談のみを取り上げた内容で、児童養護施設の現状について焦点を当てた報道は、なされていないに等しい。

 そもそも児童養護施設とは、具体的にどのような施設なのか──。その規定は児童福祉法第41条によって定められており、「保護者のない児童(中略)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする」とある。また、設備や職員の配置などについても規定があり、主に児童たちの養育を行う児童指導員および保育士の総数は、満3歳に満たない幼児概ね2人につきひとり、満3歳以上の幼児概ね4人につきひとり以上、児童福祉法における少年(小学校就学から満18歳に達するまでの者。女子も含む)概ね6人につきひとり以上。運営資金は主に「措置費」と呼ばれる国庫負担金と、地方自治体から支給される補助金で賄われている。

 全国児童養護施設協議会の発表資料によると、10年6月時点で児童養護施設は全国に579カ所。入所対象となる2歳から18歳までの子どもたち約3万人が生活しており、教育評論家であり精神科医の和田秀樹氏は「入所する子どもは、確実に増えている」と語る。

「親による育児放棄や虐待の件数増加に伴い、児童養護施設への入所の措置が取られる子どもの数も増えています。それ以外にも親の自殺や不況による経済困難の問題もありますから、ここ数年は非常に多いですね」(同)

 そうした深刻な状況は、施設にもダメージを与えている。預けられた子どもたちの養育に当たる児童指導員や保育士の数が足りていないのだ。名古屋市内の児童養護施設に勤める児童心理カウンセラーのA氏は、現場の状況を次のように語る。

「児童福祉法では職員の数を子ども6人につきひとり以上と定めていますが、実情は”6人につきひとり”の状態。養護施設の”職員の人手不足”に対する問題意識が低すぎて対策が行われていないため、最低基準の人数で運営せざるを得なくなっているんです。子どもたちは年齢もバラバラだし、心に負っている傷もそれぞれ違うので、本来は一人ひとりと深く向き合っていかなければなりません。でも、6人も受け持っていたら、規則正しく生活させていくだけで手いっぱいですよ。虐待の件数は増え続け、心のケアを必要とする子どもの数も急増しているのに、職員の配置基準は約30年前から変わらないまま。制度が変わらない限り、どうしようもありません」

■施設から裏社会に誘う虐待と低水準な教育問題

 ひとくちに虐待といっても、主に性的虐待、肉体的虐待、精神的虐待、ネグレクト(育児放棄)などがあり、適切なケアの方法もそれぞれ違うという。虐待を受けた反動で、非行に走ってしまう子どもも多いのだろうか?

「虐待を受けた子どもは、感情のコントロールが利かなくなる『パーソナリティ障害』を引き起こしやすくなります。さらに親や学校による教育が満足に受けられず、社会の常識や秩序を学べていないケースが多い。そうなると、非行に走る危険性は必然的に高くなってしまうかもしれません」(和田氏)

 また、「児童養護施設は概ね18歳になったら退所しなければならない」といった原則も、子どもたちの非行……ひいては”裏社会”に足を踏み入れさせる一因になってしまっているという。

最終更新:2011/02/17 21:00
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