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ヘタレ漫画家の半実録漫画がまさかの書籍化! アラサー男子の心をくすぐる『ハナムラさんじゅっさい』

hanamurajk.jpg『ハナムラさんじゅっさい』(銀杏社)

 「30歳」と言うと、「節目の年」だの「人生の岐路」だのなにかとうっとうしいフレーズがつきまといがち。そんなプレッシャーのかかる年齢を目前に控えた売れない漫画家が、1円にもならないイラスト投稿SNS「pixiv」に趣味で投稿した半実録漫画が先ごろ単行本化された。その名も『ハナムラさんじゅっさい』(銀杏社)。

 主人公の漫画家・ハナムラは、某メジャー少年誌の新人賞に入選したはいいものの、連載とはまったく縁がないまま早6年、気がつけばもうすぐ30歳。連載を目指し日々ネームを切るもことごとくボツにされ、単発の読切りやアシスタント仕事でくすぶり続けている自分をよそに、同期や年下の作家たちは次々と連載デビューを飾っていく。

「もう漫画家、やめようかな……」


 そんな崖っぷちの状況から物語ははじまり、さらに「新人コンペ」に落ちた翌朝に1歳年上の彼女にこっぴどくフラれるというありさまで、ページをめくるたびに胃のあたりがキリキリする。このようなイタい身の上話をpixivにコツコツ投稿するのは結構しんどかったのではないかと思いきや、当のご本人にお話をうかがってみると、意外とあっさりしている。

hanamura2wa.jpg©ハナムラ/銀杏社

〈この年(作品の舞台は2009年)は僕にとってさまざまなことが起こった濃密な1年でした。ひとつひとつは何気ない些細な出来事でも、まとめてみると山あり谷ありで「実はすごい面白かったんじゃないか?」とふと思ったんです。それを誰かに話したい。でも、そんな長い話は誰も聞いてくれませんし、なにより自分は漫画描きですから、漫画にしてしまおうと〉

 ハナムラ氏が描く「些細な出来事」のうち、自身の漫画家ライフにとって大きな転機となったのが、18禁ケータイサイトでエロ漫画の仕事だ。そこで出会ったのが白井さんという美人編集者。しかも、彼女は巨乳な上にかなり天然ちゃんで、喫茶店での打ち合わせで大声で「痴漢モノがいいですね!!」なんて言い放ったり、まったく警戒心なしにハナムラ氏の仕事場(=自宅)に来ちゃったりする始末。

hanamura4wa.jpg©ハナムラ/銀杏社

 この白井さんの(一見思わせぶりな)言動に主人公は振り回される、というか、勝手に戸惑ったり変な期待をするわけで、うだつの上がらない漫画家の日常に彼女が彩りを添えるカタチになっている。また、30歳を迎えてなお童貞マインド溢れるハナムラ氏の脳内で繰り広げられる妄想もなかなかの痛々しさだ。

 一方で、基本的にはヘタレな主人公が抱えるリアルな不安や苦悩が描かれていく中、たとえばアシスタント先でふと「漫画を描くのは、やっぱり楽しかった」「何でもいいから(自分の)漫画が描きたい……!」といったモノローグがこぼれるなど、たまに見せる前向きな一面にホッとするし、つい応援したくもなってしまう。

hanamura5_03.jpg©ハナムラ/銀杏社

 かくして、地道な投稿がとある有名ブログに取り上げられたことで閲覧数が一気に伸び、無料コミックサイト「漫画街」(http://www.manga-gai.net/)での連載を経てまさかの単行本化。現在も同サイトにて連載中で、原則ウェブのみの販売だった単行本も書店での取り扱いが増え、pixivから生まれた新しいタイプの漫画家として注目されるに至っている。が、まだ不安もあるという。

〈僕は知識が浅く視野も狭いので、漫画で使える引き出しが少なくて苦労しています。唯一、連載・単行本化したのが自伝的漫画というのもそれを端的に表しています〉

 作中の姿と同様にヘタレな……もとい控えめなコメントだが、単行本が発売されてむしろこれからが本番。今後についてはどう考えてらっしゃるのか。

hanamura40.jpg©ハナムラ/銀杏社

〈まず、『ハナムラさんじゅっさい』を最後まで描き切ること。それでしっかり読者の評価を得た上で、また少年誌の連載に挑戦したいです。今まで描いた漫画はほとんどがボツになっていて、正直、僕の「面白い」と世間の「面白い」は違うんじゃないかとずっと悩んでいました。でも、こうして『ハナムラ』が支持されたことで、自分のスタイルをもう一度考え直してみようかなと。その先に少年誌連載があると思っています〉

 ハナムラさん、心配しないで! ちゃんと面白いですから! と思わず檄を飛ばしたくなるくらい、やっぱり謙虚な姿勢は変わらないが、思わぬカタチで崖っぷちから脱した現在、充実した日々を送られているようだ。最後に、世の30歳前後の男性に向けてメッセージをいただいた。

〈僕みたいな、ある意味で世間の同世代とは乖離した生活をしている漫画家の日常に、読者から「まるで自分のことのようだ」といったコメントが寄せられるたび、「悩んでいるのは僕だけではない」と気づかされます。また新たな気概を得て、勇気と自信を持って再スタートを切れる、そういう状況に喜びを感じています。30歳というのはいろいろな変化のある年齢だとは思いますが、「ハナムラがわりかし大丈夫だったんだから、みんな大丈夫なんじゃないか?」そんな感じで乗り切ってみてください〉
(文=須藤輝)

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●ハナムラ
東京都江東区出身。 2003年某週刊少年誌新人賞入選、同作が週刊少年誌に読み切り掲載。現在、漫画街にてweb漫画「ハナムラさんじゅっさい」を連載中。

ハナムラさんじゅっさい

早くも第2巻発売決定!

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最終更新:2011/02/10 18:19
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