忍者の祖は徐福!? 忍者の技と秘密、その実態を記した虎の巻『忍術教本』
#本
1980年代後半、『ニンジャ・タートルズ』の流行などにより「NINJYA」は世界共通語となり、日本だけにとどまらず大変な人気を誇っている。変身などしなくとも、生身の人間が鍛錬することでスーパーマンになれるのがその魅力の由縁だろう。山田風太郎、白土三平作品に始まり、『忍者ハットリくん』『科学忍者隊ガッチャマン』『仮面の忍者赤影』など忍者ものは脈々と受け継がれ、現在でも『NARUTO』『忍たま乱太郎』など、忍者人気はとどまることをしらない。そういえば「忍者」というジャニーズのグループもありましたね。
忍者は武芸百般に優れ、火薬、鉄砲をも自在に操る。軽業、伝達術、陰形術を駆使して諜報活動に暗躍し、敵忍者のセキュリティ対策”防忍”をも行う。さらに占術、幻術、天文学にまで通じているというスーパーエリート集団、戦国時代のCIAと呼べる存在だ。
そんな忍者の魅力について語ったのが『忍術教本』(新人物往来社)。伊賀流忍者集団「黒党(くろんど)」を主宰し、各地で忍者教室・忍者ショーを開催している黒井宏光氏が、忍術や忍者について記した書だ。黒井氏は”最後の忍術継承者”甲賀流伴党21代目宗家・川上仁一氏に師事した、いわば本物の忍者。手裏剣の投げ方、水蜘蛛の正しい使い方など忍術の仔細な解説から、忍者の装束、忍者の道徳観、忍者の隠語・合言葉まであまさず紹介している。さらに忍者の起源、忍者と深いつながりのあった歴史上の人物について考察がなされており、忍者のすべてを記した”忍者パーフェクトブック”だと言える。本書を購入した人だけがネット上で見られる『忍術教本』映像版も必見だ。
一見、トンデモ本の類にも思える内容だがとんでもない。史料的価値の高い文献を元に裏づけのある考察がなされ、結論についても断定はせず、「●●は▲▲であったかもしれない」と可能性を示唆する程度にとどめている。出典がはっきりしていると、荒唐無稽な話も信憑性があるように思える不思議だ。
伊賀忍者の始祖は御色多由也(おいろたゆや)という人物であるとされているが、そのルーツは古く、修験道の祖・役小角(えんのおづぬ)と深い関わりがあったり、天武天皇が”多胡弥”という者を敵城に忍びこませたとも、また聖徳太子が大伴細入(おおとものさいにゅう)という人物を”志能備”として使っていたという記録もある。奈良時代よりさらに古く、秦の始皇帝の命で不老不死の秘薬を求め、日本に渡来したといわれる徐福が伝えた神仙術が忍術の源流であるという。忍術が渡来人と鉄に関係しているという考察が興味深い。
この本はマンガに描かれるような夢とロマンの忍者像とは違う、忍者の実態を描いた良書だ。影に徹し、汚い仕事を生業とする。忍者の生き方には現代に生きる我々へのヒントがたくさん詰まっている。
(文=平野遼)
・くろい・ひろみつ
1960年奈良県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。最後の忍術継承者と呼ばれる甲賀流伴党21代目宗家・川上仁一氏に師事し忍術を学ぶ。各地で忍者ショーや忍術教室を公演する伊賀流忍者集団「黒党(くろんど)」を主宰。伊賀流忍者復興保存会会長。伊賀流忍者博物館顧問。主な著書に『忍者図鑑』(ブロンズ新社)、『忍者の大常識』(ポプラ社)、『伊賀流忍術秘伝之書・煙りの末』(伊賀上野観光協会)他。
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