映画『ソーシャル・ネットワーク』に見るソーシャルメディアの本質
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──世界最大のSNSフェイスブック。創始者であるマーク・ザッカーバーグを中心に、その創業にまつわるエピソードを映画化した『ソーシャルネットワーク』が公開中だ。ナードでギークな26歳の億万長者が生まれたのは、彼が非コミュだったからだった!?
ザッカーバーグは完全体となった……!?
本誌が発売される頃には、アメリカ映画『ソーシャル・ネットワーク』が公開されているはずだ。世界最大のSNSであるフェイスブックの黎明期を題材にしたデヴィッド・フィンチャー監督の作品である。『セブン』や『ファイト クラブ』『ゲーム』など、奇妙奇天烈な後味を残す映画ばかりを撮っている監督だ。この『ソーシャル・ネットワーク』も一筋縄ではいかない内容になっている。これはフェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグをはじめ、ナップスターの創業者ショーン・パーカーなど全員が実名で出てきて、しかも彼らがみんな「人でなし」として描かれるという、恐ろしい暴露映画なのである。
フェイスブックは世界最大のSNSとして知られていて、ユーザー数は5億人を超えている。国家の人口と比較すると、中国、インドに次いで大きい。創業者でCEOのザッカーバーグはまだ26歳。今や世界最年少のビリオネアとして知られていて、最近も69億ドル(約5800億円)にも上る資産の半分を、ビル・ゲイツらがやっている慈善団体「ギビング・プレッジ」に寄付することを表明したばかり。
彼はユダヤ系アメリカ人で、ニューヨーク郊外の高級住宅地として知られるホワイトプレインズで生まれ、超難関進学校として知られるフィリップス・エクセター・アカデミーを経て、ハーバード大学に進学したという超エリートだ。しかし映画にも描かれているように「超」のつくナード(オタク)で、大学で女性には全然モテなかった。友人も少ない。
そこでザッカーバーグは、コンピュータの才能を存分に発揮し、同じ授業を履修しているほかの学生を見つけられる「コースマッチ」や、女子学生を顔写真で評価する「フェイスマッシュ」などのネットのサービスを作って学内で話題になった。そして19歳でフェイスブックを立ち上げることになる。
当初彼は、キャメロン&タイラー・ウィンクルボス兄弟というボート部のマッチョな学生(のちに北京五輪に出場して6位入賞している)から「ハーバードコネクション」という新しいSNSの計画を打ち明けられ、「プログラミングを手伝ってくれないか」と誘われる。ザッカーバーグはこれを承諾しながら、催促のメールが来ると「まだ忙しくて」「今やってる」と引き延ばし、実はその裏側でこのプランを盗んで別のSNSを立ち上げるべく、プログラミングに精を出していた──。ザッカーバーグがこのようにして次々と周囲の人たちを裏切っていくというのが、この映画の中心コンセプトになっている。
裏切りについてこの映画で描かれる最大のお話は、共同創設者のエドゥアルド・サベリンをめぐるものだ。サベリンは1982年生まれと、ザッカーバーグの2歳年上のブラジル系アメリカ人で、ハーバード大学でザッカーバーグと出会って親友になる。共にフェイスブックを立ち上げてサベリン本人はCFOに就任するが、途中でフェイスブックから追い出され、本来は60%以上あった会社の持ち株比率も勝手に希薄化されて、0.03%に引き下げられてしまうのだ。
その後、彼は裁判所に訴え出て和解に持ち込み、「フェイスブック共同創業者」の肩書の復権と、持ち株比率の大幅な引き上げを認められた。
現在は5%程度のフェイスブック株を所有しているとされ、それだけでもものすごい金持ちだ。ちなみにこの人はいつもどこで何をしているのかさっぱりわからず、と思ったら突然いろんな場所に出没して人を驚かせたりしていて、「サベリンは今どこにいるのか?」というのが話題になったりするほどだ。現在はシンガポールに在住しているという。
■ユーザー数増加の発端はアイビーリーグへの憧れ!?
話を戻そう。映画では、ウィンクルボス兄弟が「彼女を作るにはSNSだぜ」みたいな発言をして、ザッカーバーグが実際にフェイスブックを立ち上げた時も、「プロフィールに『独身』『交際中』『既婚』って表示できるんだ。だから女の子に近づく時もすぐに相手の状態がわかる」というようなことを友人に説明するシーンが出てくる。
実際のフェイスブックでもこういう出会い系の目的が当初はクローズアップされたのかもしれないが、しかしフェイスブックにはもっと大きなビジネス的な実利もあった。
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