心機一転 新しい一年の始まりに見たい、上質ヒューマンドラマ
#映画
今年を振り返り、また新たな年に期待するこの時期。今回は人生について、大切な人について、じっくりと考えさせてくれる上質の娯楽映画を3本紹介したい。
まずは年の瀬の定番、忠臣蔵を題材としながらも、吉良邸討ち入りの後に生き残った2人の赤穂浪士を描く『最後の忠臣蔵』(ワーナー・ブラザース映画配給、公開中)。池宮彰一郎の人気歴史小説を、テレビドラマ『北の国から』を手がけた杉田成道監督が役所広司、佐藤浩市主演で映画化した作品だ。
赤穂浪士の吉良上野介邸討ち入りの後、大石内蔵助から命を受けた寺坂吉右衛門(佐藤)は、討ち入りの真実を世に伝え、各地に散った赤穂遺族たちの生活を助けていた。事件から16年後に京都を訪れた寺坂は、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門(役所)と再会。瀬尾もまた、大石の隠し子を育てるという密命を受けていたのだった。
親代わりの瀬尾に対し、恋にも似た感情を抱く大石の娘・可音を、桜庭ななみが清楚にたおやかに演じている。この時代の男と女の生きざまは、”日本人の心”を改めて気づかせてくれるはず。京都を中心に撮影された四季折々の風景、由緒ある神社や寺院、人形浄瑠璃が上演される芝居小屋など、日本の伝統美も堪能できる名作だ。
続いてのおすすめは、ウッディ・アレンの監督第40作となる軽妙なコメディ『人生万歳!』(アルバトロス・フィルム配給、公開中)。05年の『マッチポイント』以降ヨーロッパが舞台の作品が続いていた同監督が、久々に故郷ニューヨークに帰ってきた。
マンハッタンのアパートに一人暮らす偏屈な初老の物理学者ボリスはある夜、南部の田舎町から家出してきた娘メロディに懇願され、仕方なく泊めてやることに。だが世間知らずのメロディは、ボリスを「運命の相手」と思い込んでしまう。初めこそ相手にしなかったボリスもすっかりその気になり、年齢と知能指数の差を乗り越えて2人は結婚。そこへ、愛する娘を追って田舎から出てきた母親と、メロディに好意を寄せる青年が現れて……。
他人をこきおろしてばかりなのに、なぜか憎めないボリス役を演じるのは、人気コメディアンのラリー・デビッド。無知だが純真で心優しいメロディ役は、『ダイアナの選択』『レスラー』のエバン・レイチェル・ウッド。”人生、うまくいくなら何でもあり!”という本作のポジティブな教訓に、心励まされる向きも多いのでは。
そして3本目は、ドリームワークスによる大ヒットCGアニメシリーズの完結編、『シュレック フォーエバー』(パラマウント配給、公開中)。4作目にして初の3D作品でもある。
“遠い遠い国”で最愛の家族に囲まれ、平和な毎日を過ごしていたシュレック。だが繰り返しの生活のなか、一日でも自由な怪物の暮らしに戻れたら、と願ったのが間違いの始まり。魔法使いのペテン師、ランプルスティルスキンの罠にはまり、別次元の”遠い遠い国”に送り込まれてしまう。そこではランプルスティルスキンが王として君臨し、怪物たちは追われる身。親友のはずのドンキーも長ぐつをはいたネコも、そして愛するフィオナ姫も、シュレックのことを全く知らない。シュレックは果たして、元の世界に無事戻れるのか。
空飛ぶホウキに乗って繰り広げる空中チェイスや、終盤の城内で鎖を活用したバトルなど、高低差や奥行き感という3D映像の持ち味を活かしたアクションシーンは、大人も子どもも一緒になって楽しめる。だが本作のストーリーに込められたメッセージは、大切な家族やパートナーのいる大人にこそ、しっかりと伝わるはず。冒険の世界をしばし楽しんだあとは、平穏な日常のありがたみをかみしめつつ、新たな心持ちで仕事に恋に人生に向き合えることだろう。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
「最後の忠臣蔵」作品情報
<http://eiga.com/movie/55071/>
「人生万歳!」作品情報
<http://eiga.com/movie/55716/>
「シュレック フォーエバー」作品情報
<http://eiga.com/movie/54258/>
2010年のうちに見ておきたい。
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