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のり・たまみのへんな社会学 第13回

女性サンタからブラックサンタまで 世界のクリスマス事情

santa.jpg『さむがりやのサンタ』(福音館書店)

世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。

 「♪真っ赤なお鼻のトナカイさんは~」で有名な、あの赤鼻のトナカイの名前は「ルドルフ」です。「ルドルフ」が世に初めて現れるのは1939年のこと。この年に児童書『赤鼻のトナカイ』が大ベストセラーになり、その後、同タイトルのお馴染みのクリスマスソングも作られ、こちらも大ヒットしました。

 かつて、サンタクロースの橇(ソリ)を牽いているトナカイは8頭でした。しかし、「赤鼻のトナカイ」が一躍有名になってしまったので、急遽1頭増やされ9頭に。それも歌に合せて「ルドルフ」がみんなの先頭に、ということになりました。意外にいいかげんなんですね、サンタの世界って。

 適当なのはトナカイだけではありません。もともと、プレゼントをもらう日は、12月6日の「聖ニコラスの日」(もしくは前夜)でした。

 聖ニコラスは「サンタクロース」のモデルとなった人物で、キリスト教の実在の聖人です。「セントニコラス」がなまって「サンタクロース」になったと言われています。Wikipediaによると、聖ニコラスが貧しい家に金貨を投げ入れたところ、その金貨が暖炉の近くに干してあった靴下に入ったという逸話がもとになり、”サンタクロースがプレゼントをくれる”という伝説が広がっていったようです。それがいつの間にか、12月25日のキリスト生誕祭とくっついてしまったんですね。

 また、最近では「クリスマスを1月にしよう」という案が出たことがありました。世界の公認サンタクロースを取りまとめている「グリーンランド国際サンタクロース協会」の「世界サンタクロース会議」で議題に上り、05年から数年間話し合われました。

 これは、「年末は何かと忙しいので、年が明けた1月に落ち着いてお祝いした方がよいのではないか」という理由によるものでしたが、「たしかに年末は忙しいけど、とりあえずは現状のままのほうがよいのではないか」という温厚な発言のほか、「カレンダー業者が困るだろう!」というストレートな商業路線の意見も出て、結局のところ、見送りになっています。クリスマスは年末商戦と密接に結びついているので、経済面から見てもやっぱり1月にずらすのは難しいということでしょうか。

 そもそもサンタクロースの概念は国によって違います。「グリーンランド国際サンクロース協会」の本部が置かれているグリーンランドは、国ではなくデンマークの自治領。デンマークは男女同権の国なので、大勢の”女性サンタ”がいます。また、他国にはかなり”ブラックなサンタ”がいるようです。

 建前上は「よい子にはプレゼントをくれる」サンタ。では「悪い子」には……? 実はお仕置きが待っています。単純に「プレゼントをあげない」というライトなものから始まって、悪さの度合いでどんどんお仕置きはエスカレートしていきます。「ムチでそっとお尻叩く」、「プレゼントの代わりに石炭のカスやゴミを置く」。やがて、「悪い子が寝ている間にベッドに牛やブタの内臓をぶちまける」なんて非情な手段にまで発展。それでも言うことを聞かない悪い子は、プレゼントの包装紙に詰められてさらわれ、他国に置き去りにされたり、そのまま冷たい川に投げ捨てられるそうです。

 同じサンタクロースが一人で「よい子、悪い子」を判別し、こうしたお仕置きをする場合もあるし、ドイツのように最初から「よい子にはプレゼントする赤サンタ、悪い子には罰を与える黒サンタ」と、二人組で一緒に活動する国もあります。
 
 単なる宗教行事にとどまらず、経済や道徳教育などさまざまな外部的要素と複雑に絡み合い、どんどん形式を変えているクリスマス。これからも時代に合わせて形を変え続けるのでしょうか。
(文=のり・たまみ)

<参考文献>
『誰もしらないクリスマス』(舟田詠子著/朝日新聞社)
『サンタクロース学』(荻原雄一著/夏目書房)
『サンタクロース公式ブック』(パラダイス山元著/小学館)
『サンタクロースの秘密』(中沢新一著/せりか書房)

●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。

さむがりやのサンタ

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最終更新:2010/12/24 18:00
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