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椎名誠絶賛! イスラム圏の豊かな暮らしをレポートした『ハビビな人々』

habibi.jpg『ハビビな人々 アジア、イスラムの
「お金がなくても人生を楽しむ」方法』
(文藝春秋社)

 GNPならぬGNHという言葉をご存知だろうか? 前ブータン国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱した概念でGross National Happiness、つまり国民総幸福量を量る指数である。「自分はいま、幸せか?」という問いに、ブータンの国民の9割はイエスと答える。ちなみに日本のGNHは参加178国中90位。先進国の中では最下位である。

 ブータンはGDPからすれば最貧国だが、日本とのGNHの差は歴然としている。彼らにあって日本にない”何か”とは何なのか。『ハビビな人々 アジア、イスラムの「お金がなくても人生を楽しむ」方法』(文藝春秋社)は、旅行ライターの中山茂大氏が、アジア、イスラム圏を旅して、その人々の暮らしを記したノンフィクションだ。イスラム圏の経済、貧困、文化、各地方の特色などについて全6章で構成されている。この本の特色は、評論、新書から多くの言葉を引用している点にある。普通、旅行記といえば旅の軌跡をなぞっただけのものが多いが、この本は50カ国以上を巡ったという著者の経験と豊富な知識を背景に、イスラム圏の人々の行動原理を解析している。単なる旅行記にとどまらず、fanなエピソードとともに文化的考察などinterestingな要素も兼ね備えた内容となっている。

 ”ハビビ”とはアラビア語で「最愛の人」「仲のいい関係」という意味で、イスラム圏の人は家族、親友を何よりも重んじる。「富者は貧者に喜捨(寄付)する義務がある」というイスラム教の考え方から、外国人旅行者からは平気でぼったくるが、ハビビな人には情を尽くし、どんな苦労もいとわない。所得は低いが、食えるぐらいに適度に仕事をし、時間にあくせくすることもなく、皆どこかノーテンキに暮らしている。住所を持たない遊牧民には、納税も仕事もカンケーないのだ。

「南国の海を見て喜んでいるのは、寒いところからやってきた欧米人や日本人だけである。(中略)”エコロジー”とか”ロハス”とか言っていられるのは、先進国の人々だけである。語弊を恐れずに言えば、それは衣食住が満たされ、社会保障が充実し、十分な給料をもらっている人々の”戯言”に過ぎないのではないだろうか」(本文より)

 現在、途上国のほうが「幸せだ」と感じ、先進国のほうが「不幸せ」だと感じる割合が概して高い。経済発展を遂げ、核社会が進む中で、日本人はノーテンキさ”ハビビ”を見失ってしまった。エコより優雅で、ロハスより快適な”ハビビ”は、不況下に適したライフスタイルだと言えるだろう。
(文=平野遼)

●なかやま・しげお
1969年、北海道深川市生まれ。上智大学文学部卒。在学中(探検部)、南米大陸6000kmをロバとともに縦断。出版社勤務の傍ら、『ロバと歩いた南米アンデス旅行記』(双葉社)を著し独立。旅行ライター。他に、『ソウルの食べ方歩き方 路地裏安食堂探検ガイド』(山と渓谷社)、『韓国陸軍、オレの912日 爆笑ノンフィクション いま隣にある徴兵制』(共著 彩流社)、近著に『世界のどこかで居候』(共著 リトルモア)。

ハビビな人々

ハビビ。

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最終更新:2010/12/18 18:00
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