U吉? 苺佐保? 『親は知らない ネットの闇に吸い込まれる子どもたち』
#本 #ネット
「U吉」「苺佐保」「やわらか銀行」と聞いてピンとくるだろうか? 10代の間で交わされる隠語で、U吉は諭吉(=1万円)、苺佐保は1万5,000円でサポート(=援交)希望、やわらか銀行は自身の携帯電話キャリアがsoftbankであることを意味する。親や捜査官に見つからないよう、体を売る子どもたちは巧みに言葉の意味を隠し、男たちとやり取りをする。
現代の子どもはネット・ネイティブ世代で、ごく幼いころからネット社会に親しんでいる。ネットやケータイの扱いにおいて、親より格段の知識を有しているのだ。『親は知らない ネットの闇に吸い込まれる子どもたち』は、読売新聞で2008年8月から2年間に渡って連載された「親は知らない」シリーズを、新たにまとめ直したものだ。現代の子どもたちを取り巻くインターネットや携帯電話利用の実情が丹念に取材されている。「家出少女」「援助交際」「プロフ」「ネットいじめ」「ネット詐欺」「大麻、ドラッグ」「児童ポルノと性表現の規制」「ケータイのフィルタリング」などの問題が、全6章にわたって詳細に記されており興味深い。巻末には子どものケータイ依存度チェックリスト、携帯サイトでの隠語集なども掲載されている。
出会い系サイトが生まれたのは90年代末。援交や傷害、果ては殺人など、未成年者を巻き込んだ性犯罪が相次いで社会問題となり、規制が強化された。しかし事件は「mixi」「グリー」「モバゲー」「前略プロフ」などのSNSや家出掲示板、下着姿を公開する掲示板などに舞台を移し、一層複雑化しているという。
ひとつの事例を紹介すると、君津市中3女子刺傷事件がある。08年5月、千葉県君津市の集合住宅で、中学3年生の女子生徒が突然、男に襲われた。男は少女の自転車の前カゴに入っていた財布を取り、中身を確認すると「ミカだよね?」と尋ねた。直後、いきなりナイフで切りつけられ、顔や腹部をメッタ刺しにされた。病院に運ばれ一命は取り留めたが、重い後遺症が残ることを宣告された。少女はプロフで男と交流していたという。男の供述によると「返信がこなくなり、拒絶されたと感じた」ため、犯行に及んだという。少女はプロフに顔写真や住所も掲載していた。
そもそもなぜ少女たちは抵抗なくプロフに顔写真や個人情報を載せてしまうのか。奈良女子大教授の浜田寿美男氏によると、「思春期は”他人に認められたい”という思いが強いが、ケータイはそれを簡単に満たしてしまう。(中略)ケータイは直接的な身体の危険を感じないので、通常ならためらうはずの行為であっても、簡単に一線を越えてしまう」(本文より)ためだという。
現在、教育の現場では、フィルタリングの重要性を説くとともに、制服ならぬ「制ケータイ」を導入するなどして、子どものネットリテラシー向上に努めている。児童ポルノ法や都の青少年健全育成条例で盛んに議論が行われているいま、子どもを持つ人でなくともその実情を認識しておく必要があるだろう。やり場のない怒りがふつふつと煮えたぎってくる一冊だ。
(文=平野遼)
ダメ。ゼッタイ。
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