究極のRPG? 極限状態に置かれた人間の本当の姿『エクスペリメント』
#映画 #洋画
RPGは冒険ファンタジーの専売特許というわけではない。1970年代初頭に米スタンフォード大学で実際に行われた、看守役と囚人役のロール・プレイング(役割演技)こそ、究極のRPGなのかも?
12月4日に公開される『エクスペリメント』(日活配給)は、ドイツ映画『es [エス]』(01)でも題材となった有名な”スタンフォード監獄実験”を、『戦場のピアニスト』(01)のエイドリアン・ブロディと『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)のフォレスト・ウィテカーというオスカー俳優共演で映画化した心理スリラーだ。監督・脚本は、人気テレビドラマ『プリズン・ブレイク』の企画・脚本・製作総指揮を手がけたポール・シェアリング。
失業したばかりのトラヴィス(ブロディ)は、反戦デモで出会ったベイ(マギー・グレイス)と恋仲に。彼女とインド旅行をするため、14日間の実験参加で日給1,000ドルという高額報酬の被験者募集広告に応募。温厚で気さくなバリス(ウィテカー)らと共に24人の被験者に選ばれる。
実験の内容は、模擬刑務所の中で看守役と囚人役に分けられ、それぞれの役割で振る舞い、ルールに従って過ごすというもの。両グループの間で次第に高まる緊張。それぞれリーダー格となった囚人役のトラヴィスと看守役のバリスは対立を深める。人が変わったかのように攻撃性を増したバリスは、看守側の横暴に服従しないトラヴィスに対し、体罰や精神的屈辱を加えていく。対立と緊張が極限に達したとき、予想外の事件が起きる。
極限状態に置かれた人間が、社会生活の中で培ってきた理性や人格を保てるのか、あるいは闘争本能をむき出しにして、弱肉強食の世界に生きる動物のように他者を攻撃するのか? 自分がもし、どちらかの”役”を割り当てられたらどうなるだろう? 鑑賞後はきっとそう考えてしまうはずだ。
本作の隠れた注目ポイントとして、登場人物の髪型やヒゲの変化を挙げておきたい。心理状態の変化の象徴として、あるいは精神に変化をもたらす外因として、髪やヒゲを切る、剃るといった行為が描かれている。これらをファッションの観点から応用して、髪型などを変えて「自分をもっとマッチョに見せたい」あるいは「ナイーブさを演出したい」といった具合に活用するのもアリだろう。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
「エクスペリメント」作品情報
<http://eiga.com/movie/53812/>
耐えられない。
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