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アジア・ポップカルチャーNOW!【vol.11】

「造形師・竹谷隆之に憧れて……」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター

1000_06.jpg(c)1000Tentacles

 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。

第11回
クリエイティブ・チーム

1000Tentacles(1000テンタクルス)


 1000Tentaclesは、マレーシア出身のWanKokとKhorによるクリエイティブ・チーム。イラストレーターとしてのバックグラウンドを持つWanKokと、ゲーム業界でコンセプト・デザイナーとしてキャリアを始めたKhorが手がけるのは、広告のイラストレーションからコミック・アート、フィギュアまで、幅広い。クアラルンプールをベースに、すでに15年以上のキャリアを持つ2人は、大の仕事オタク。

「週6.5日から7日は働いています。この仕事が好きでヨカッタ……!」

 彼らの作品に出てくるモンスターや、奇怪な生物や昆虫(?)たちは、初めて見るようでどことなく懐かしく、なんとなしに愛嬌がある。そして、その色使いからは、ちょっと気だるい熱帯の熱気と湿気が漂ってくる。

SCI.jpg「S.I.C. VOL.57 仮面ライダーW
サイクロンジョーカー」

 それにしても、このモンスターたちの造形ときたら。マレーシアの作家は、みんなこんなに”粘着質”なのだろうか。

 イラスト、クリエイティブ・ディレクション担当のWanKokは、それこそ日本の作家から学んだことだという。フィギュア造形家の竹谷隆之の大ファンであり、彼の作品のコレクターでもある。

「特に、仮面ライダーのS.I.C.シリーズが最高なんです。ボディの形がスリムで、すごくフィットしている。これこそが竹谷さんのタッチであり、彼独自のスタイルなんですよ! 彼の名著『漁師の角度』(ホビージャパン)は、常に僕のバイブルですよ!」

1000_10s.jpg(c)1000Tentacles
<クリックすると画像が拡大されます>

 WanKokの最近の一番の関心事は、『漁師の角度』のリ・エディション版が発行されるかも、ということ。

「それって本当ですか? もしそうなら、いつでも購入する心の準備はできてます!」

 一方、コミュニケーション、コミック・スクリプト担当のKhorは、ジャパニーズ・コミックの「ストーリー展開」に大きな影響を受けたという。

「話の持って行き方が”スムーズ”なんです。コマとコマの間の飛躍が大きすぎないから、まるで映画を見ているように感じます。欧米のマンガとはそこがちょっと違いますよね」

 手塚治虫の『ブッダ』や『火の鳥』は、その真骨頂だと彼女は言う。

 テレビやコミックの『ドラえもん』『ウルトラマン』『仮面ライダー』を見ては、「次回が待ちきれない!」という幼少期を過ごしていたという二人。

1000_02s.jpg 1000_03s.jpg 1000_01s.jpg(c)1000Tentacles
<クリックすると画像が拡大されます>

「ウルトラマンが怪獣を退治すると、最後にちょっとだけ、次の回に出てくる新しい敵が紹介されるでしょう。そこで”次週をお楽しみに”ってなるんだけど……その”次週”がどれだけ待ち遠しかったか!」

「『仮面ライダー』は、ヒーローが”虫”というのが、たまらなくツボでした! あと、バイクがカッコよすぎます!」

 彼らのチーム名にある”Tentacles(触手、触角)”は、そんな”モンスター好き”の2人の嗜好を現したものだ。

「マンガや映画、ゲームには、必ず悪巧みをしかけるモンスターがつきもの。でも彼らは、いつだってデザイン的には誰よりもクールで、革新的なんです」

「僕にとって”Tentacles”という言葉は、モンスターっぽい何か、海の底深くに潜んでいる、歪んだ(でもイカした!)姿をしたエイリアン、というものを思いださせます。そして、まさにそういう”僕らを捉えて話さないもの”を、僕らは描きだしているんです」

1000_05.jpg(c)1000Tentacles

 1000の触手を持つモンスター。KhorとWanKokは、「次週」を待ちきれず、自分たちでそれらを作り出すようになったというわけだ。

 現在、彼らは、イギリスのコミック雑誌「Heavy Metal」(http://www.heavymetalmagazinefanpage.com/)のコミック『War of The World Goliath』(http://www.wotw-goliath.com/)の仕事や、ゲーム会社のコンセプト・デザインワーク、1000Tentaclesシリーズのトイ・シリーズなど、多くのプロジェクトを抱えている。自分たちのストーリーとデザインをベースにしたアニメーション制作も計画中とのこと。近い将来、1000Tentaclesの作ったモンスターが、世界の子どもたちから「次週が待ちきれない!」と言われる日が来かもしれない。
(取材・文=中西多香[ASHU])

* Special Thanks to Si Juan from Bigbrosworkshop
<http://www.bigbrosworkshop.com/html/>

1000.jpg(左)Khor、(右)WanKok

●1000Tentacles
マレーシア出身のLeong WanKok(レオン・ワンコク)とKohr PheikHoy(コー・フェイコーイ)によるクリエイティブ・チーム。15年以上に渡り、コマーシャル・イラストレーション、コミック、キャラクターデザイン、トイ・スカルプチャー、3Dアートなどの分野で活躍。国内外のアートショーや展覧会に招聘され、『Imagine FX(イギリス)』『CGWorld China(中国)』『3dTotal(イギリス)』『DPI(台湾)』『CGTalk(オーストラリア)』などへの寄稿も数多い。著書に『Twisted Mind of 1000Tentacles』『Liquid City』『Monster Mania』など多数。
<http://www.1000tentacles.com>
* 現在、静岡市クリエーター支援センター(CCC)で開催中の展覧会『Asian Creative Culture』展に、1000Tentacles の作品が出展中です。
詳細は:<http://www.c-c-c.or.jp/nowonview/adc2010/exhibition.html>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>

S.I.C. VOL.57 仮面ライダーW サイクロンジョーカー

2011年3月30日発売予定。

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最終更新:2012/04/08 23:19
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