M-1戦線異状あり!? 初の「両国国技館セミファイナル」開催で今年のM-1はどう変わるのか?
#お笑い #M-1 #ラリー遠田
年の瀬が近づき、今年もM-1グランプリの季節がやってきた。現在、12月26日の決勝戦に向けて各地で予選が行われている。
今年のM-1予選では、注目すべき大きな変化がいくつかあった。まず、3回戦と準決勝の間に新たに「準々決勝」が設けられたこと。そして、従来は東京・大阪で二回に分けて行われていた準決勝が、東京・両国国技館で一度に行われるようになったことだ。このことによって、今年のM-1戦線にはいくつかの変化が起こることが予想される。それについて考察していきたい。
第一に、準決勝の会場のキャパシティが変わる、ということだ。今年行われる両国国技館の準決勝では、観客6,000人の動員を予定しているという。6,000人というのは、お笑いライブ会場の収容人数としては、極端に大きい。これまで準決勝が行われていた会場は、大阪のなんばグランド花月(NGK)、東京のよみうりホール、メルパルクホールなど、1,000~1,500人規模のホールばかり。今年は準決勝会場が一気に巨大化することになる。
一般に、お笑いライブの収容人数には上限があると言われている。あまりに大きいと、観客は芸人の表情や動きが見えづらくなり、集中力を保つのが難しくなる。また、芸人にとっても、大きすぎる会場では笑いが散ってしまうので、空気をつかみづらいという難点がある。
そんなわけで、今年の準決勝では、会場が巨大化したことによる弊害が起こることが予想される。それは、簡単に言うと、芸風による有利不利が出てくる、ということだ。大きな会場では、小さい声の芸人、落ち着いたネタ運びをする芸人は、それだけで不利になる恐れがある。勢いがあって、よく声が出ている芸人の方が、遠くから見ていても笑える空気を作りやすいからだ。
実際、M-1予選の常連でもある、比較的おとなしい芸風の某コンビは、両国国技館で準決勝が行われるということを知って、今年のM-1は半ばあきらめたような気分になったという。会場のキャパシティは、舞台に立つ芸人にとってそれほど重要なことなのだ。
また、もうひとつ見逃せない変化がある。それは、今回の準決勝では、M-1史上初めて、客前で決勝進出者が発表されるということだ。これまでのM-1では、決勝進出者の発表は、出場者たちの目の前でひっそりと行われていた。だが、今回は、両国国技館で準決勝が行われた後、その場で決勝進出者が公表される。
そのことによって、今年のM-1では、より観客目線の審査が行われるようになるだろう。これまでのM-1では、準決勝で必ずしも大きな笑いを取っていない芸人が、審査員に評価されて決勝に上がるということがしばしばあった。だが、今年はそういうことがやりづらくなる。あまりにウケが悪い芸人が決勝に上がるとなると、発表された瞬間に客席から「えーっ!?」というブーイングの声があがるかもしれない。主催者側としてもそれは避けたいはずだ。今年のM-1では、目の前の観客から爆笑を勝ち取った芸人が、順当に勝ち上がることになるだろう。それは、事あるごとに予選審査の不透明性を指摘されてきたM-1が、一気に生まれ変わるきっかけにもなるかもしれない。
出場するそれぞれの芸人にとっては、これらの変化がもたらすメリットもデメリットもあるだろう。ただ、いずれにせよ、最後の最後にはいちばん面白い芸人が優勝する、というM-1の理念に偽りはない。予選審査にマイナーチェンジが加えられた今年のM-1が果たしてどんな結末を迎えるのか、期待は高まる一方だ。
(文=ラリー遠田)
M-1 グランプリ the BEST 2007 ~ 2009 初回完全限定生産
初回限定版がまだ売れ残ってる!
【関連記事】
視聴率は大惨敗 松本人志9年ぶりのコント『MHK』とは何だったのか
島田紳助がいよいよピンチ!? 加速する「若手芸人離れ」の現実──
「学園祭がゼロ!?」チーフマネが占いに傾倒でソニー「SMA」お笑い部門が崩壊危機
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事