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「真実は単純で平凡なもの」岡田武史前代表監督がテレビに出ない理由とは?

okada1114.jpg代表監督を務めていた間、メディアの報道は一切見なかったという岡田氏。

 去る11月8日、東京・町田市民ホールにて「サッカー日本代表 前監督 岡田武史 トーク in まちだ ~スポーツによる夢のあるまちづくり~」が行われた。

 FIFAワールドカップ南アフリカ大会閉幕以後、テレビ番組への出演はあったが、公衆の面前でワールドカップ日本代表について振り返るのは初めて。もちろんチケットは完売し、最後方の記者席も埋め尽くされていた。

 付き合いの長い山本浩アナウンサー(NHK)が司会進行を務め、岡田氏に質問。役目を終えて「言えないこと」の範囲が狭まったせいか、滑舌はよく、冗談交じり、皮肉交じりに思いを吐露。ときにメディア批判も飛び出しての独演会となった。

 1998年のFIFAワールドカップフランス大会でマスメディアに追い回され、批判に晒され、もうこりごりだと思ったはずなのに、再度日本代表監督を引き受けたのはなぜか。あとになって考えてみれば、それは日本に蔓延する外国(欧州)崇拝への悔しさからだったと言う。

「悔しかったんですよね。ヨーロッパではこうだ。ヨーロッパの誰々はこう言っている」

「なぜそんなにヨーロッパに南米(を持ち上げるのか)。自虐的すぎる。日本だってもっといいものがあるだろう、日本人だってもっとできるだろう」

 サッカー界だけに限らず、外国人に対するコンプレックスがある。それへの反発心がベスト16へのスタートだった。

 アジア予選通過後の09年秋、欧州での強化試合二試合(オランダ、ガーナ)を通じて相手ボール保持者へ身体を寄せて自由に攻撃をさせないタイトな守備の重要性を思い知った選手たちは、1対1の局面で厳しくいくようになった。

 そこで彼らは、自分たちが積み重ねてきた体幹トレーニングの成果で、外国人選手を相手にしても、ボール際で争う肉体的な接触で勝てるようになっていることに気がつく。

 本大会直前の強化試合は三連敗。苦ではなかったのかと問われた岡田氏はこう答えた。

「いやいや。苦にならないわけがないです、あれだけボロカス言われてねえ、ほんとに。ありがとうございます(場内笑)。でも僕はコーチにこう言ったんですよ。こういうときに”ゾーン(極度に集中した状態)”に入るんだと。みんながなんとかしなきゃ、というときにグーンと上がるんですよ」

 プレッシャーとは重力のようなもの。強すぎると潰されてダメになるが、自らを鍛えてくれるものでもあると岡田氏は言う。

 戦術的なキーポイントは中盤に5人を並べることだった。現代サッカーではディフェンダーとミッドフィルダーがそれぞれ4人並ぶことが多いが、規定のピッチ幅68メートルを埋めきれず、隙間ができてしまう。そこでミッドフィルダーをひとり増やし、隙間なく幅を埋めて守備を強化しようとした。

 本大会前の最後の試合であるジンバブエ戦でテストしたところ、結果は0-0だったが組織は機能。手応えを感じていた。ところが無得点の結果にメディアは悲観的な報道をした。

「僕は基本的に、代表監督になった瞬間から新聞、テレビ、雑誌は一切見ないんですよ。インターネットも見ない。頭にくるだけですから。絶対そういう人よりも、オレのほうがこのチームが勝つために考えている、という自信がありますから」

 感動のドラマを作ろうとする報道姿勢への注文が続く。

「僕はいま、あまりテレビに出ないでしょ? ものすごい数の依頼が来ているのに、何が(断っている理由なのか)と言えば、みんな、いろんなものをドラマチックに面白く報道したがるんですよね」

「真実というのは、得てして単純で面白くないもの平凡なものなんですよ。それを体幹トレーニングをしてそれで勝った(と言うがしかし)、サッカーをやらないと勝てないんですよ。いちばん大切なのは自分たちのサッカーをやることなんです。それをメディアはこの情報でこうやった──僕はそれに対して何も言わないですけど、見た指導者がそういうことばっかりに気を取られるのが怖いんです。だから僕は出ないんです」

「勝負の神様は細部に宿るという言い方をする。よく試合に負けると戦術論システム論と言うんですけれども、勝負を分けるのは、僕の感覚ではね、8割は小さなことなんですよ」

 どれだけ戦術が正しくとも、選手が一瞬怠慢なプレーをしただけで失点してしまう。しかしディテールを詰め、怠らなければ神様がご褒美をくれる。

 サッカーには偶然が作用し、少なからず運、不運に試合の行方を左右されるが、幸運をつかむには、それがやってくるまで戦わなければならない。

 少々オカルトめいてはいるが、本質をついた意見だった。

 第2部はFC町田ゼルビアの相馬直樹監督、町田市出身で最後はヴァンフォーレ甲府でプレーし、昨年現役を引退した林健太郎氏も登壇。コンサドーレ札幌の監督経験もある岡田氏との三人で、地方クラブの成長を題材に「まちづくり」についてのトークを行った。

 岡田氏は最後に「目標に向かって何かをやろうとしたら必ず耳元で囁く人がいます。”そんなの無理だよ、やってどうすんだよ”。ドリームキラーと言います。ぜひドリームキラーにはならないで、夢を作る人になってもらいたいと思います」と、名言を残して会場を去った。

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 ところでこの日は会場前に「FC町田ゼルビアを支える会」が集結していた。FC町田ゼルビアは、Jリーグの下部カテゴリーであるJFLで規定の成績を上げていながら、スタジアムの改築計画が新しい基準に達しておらず不備があるとしてJリーグ加盟を断られている。そこで加盟に必要な支援を自治体に求める請願をすべく、署名活動を行なっていたのだ。

 詰めかけた聴衆に用紙を配布できたせいか、今週は署名が順調に増えた模様。これも「ワールドカップ余波」「岡田武史効果」の一端と言えるのかもしれない。
(取材・文・写真=後藤勝)

指揮官 岡田武史―アルマトイ、フランス、そして札幌

誤解されやすい性格なんです。

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最終更新:2010/11/16 20:00
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