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日刊サイゾー トップ > 社会  > 母の代から続く、日本ユニセフ協会との縁
【橋本大二郎氏が語る「表現の自由」(上)】

母の代から続く、日本ユニセフ協会との縁

hashimotodaijiro1108.jpgNHK勤務を経て、4期16年高知県知事を務めた
橋本大二郎氏。

 
 「表現の自由」をめぐる問題の中で、幾度となく俎上にあがる「児童ポルノ法」。今年に入ってからは、東京都のいわゆる「非実在青少年」問題に比べて、目立った動きはあまり見られない。その要因は、昨年の衆議院選挙における政権交代である。昨年7月、自民・公明党が国会に提出した「児童ポルノ法」改定案は単純所持の禁止をめぐり激しい議論となった。しかし、改定案は、この月の衆議院解散によって廃案。同法の改定に慎重な民主党が政権の座についたこともあり、同党内部では継続的に検討が行われているが、新たな法案が浮上する気配は、見られない。

 そうした中でも、同法の改定・強化を求める人々の活動は継続している。今年10月5日、(財)日本ユニセフ協会(以下、ユニセフ協会)は「児童ポルノがない世界を目指して国民運動(以下、国民運動)」の第1回報告会を、同運動賛同団体向けに開催した。今年5月から行われているこの運動は「児童ポルノ」を「見ない」「買わない」「持たない」「作らせない」ための啓発活動をはじめ、「国会に対して、児童ポルノの根絶に必要な法的対策(児童ポルノの単純所持の違法化や児童ポルノ犯の厳罰化、被害者の保護体制の確立など)に取り組んでいただくため」の署名活動を実施している。運動には90を超える団体・個人が賛同しているが、果たして賛同する人々は、どのような意図を持っているのだろうか。

 もちろん、児童虐待の一つである「児童ポルノ」を禁止することに反対するものはいないだろう。問題は「児童ポルノの単純所持の違法化」の部分だ。ここに、さまざまな問題が内包されていることは、既にさまざまな報道で語り尽くされている。海外では既に発生している冤罪への危惧。警察に新たな「魔法の手」を与えてしまうことの危険性。そして、所持を違法化することによる文化の抹殺や表現活動を萎縮させる可能性への危惧だ。

 こうした問題を聞く相手として橋本大二郎氏を選んだのには理由がある。前述の国民運動の報告会では、各界の著名人の発言が紹介されているが、橋本氏は「東京都の条例などは議論の余地があると思うが、子どもたちをよりよい環境で育てていくことに反対する人はいない。まずは児童ポルノの所持を禁止し、法律を実効性のあるものにしていくためにも法改正が必要」と語っていたからだ。橋本氏は1991年に当時全国最年少の県知事に就任して以来、07年まで高知県知事として辣腕を振るう。加えて、知事になる以前はNHKで社会部畑を歩き、88年から当時の夜9時のニュース番組『NHKニュース TODAY』で社会部門のキャスターを務めていた。行政は時折、暴走する。法律は当初の目的とは別の意図に濫用される可能性を持つ。NHKは当時から巨大なメディア産業ではあっただろうが、それでも現在よりはジャーナリズムの精神を持ち得る人は多かったと思う。その上で、ジャーナリズムの中で培われた「権力観」と行政のトップとして視点を兼ね備える、ある意味で稀な人物ではないかと考えたのだ。それゆえ「児童ポルノ法」をめぐる問題に、どういった意見を持っているかは、ぜひとも聞いてみたかった。

 正直に言えば、取材を受けてもらえるとは考えていなかった。これまで、何年にも渡って「児童ポルノ」の問題を追いかけているが、規制を進める側に立つ人々は、なかなか門戸を開けてくれない。アグネス・チャン氏には、対面での取材を受けてもらえていない。なにより、昨年、筆者はユニセフ協会から「今後のご取材・お問い合わせ等につきましてもご協力いたしかねます」とのメールを受けていたりする。

 ところが、橋本氏の対応は早かった。取材を申し込むメールを送ったところ、翌日には早くも返事を頂くことができた。それだけで、橋本氏が規制に賛成・反対のいずれにせよ、確固たる知見を持っているであろうことは、想像できた。それもそのはずで、橋本氏とユニセフ協会の縁は長くて深い。現在、高輪にあるユニセフ協会の本部事務所「ユニセフハウス」にあるホールは「橋本正ホール」の名が冠されている。ホールの名前になっている橋本正氏が、ユニセフ協会の専務理事であった橋本氏の亡母だ。

「母は、まだ海外旅行が自由化されていなかった昭和30年代に世界各国を旅したときに、ユニセフ協会の仕事という名目で出国させてもらった。それが縁で、母は62年に理事になり、66年からは専務理事になった。私の高校から大学までの学費なんかは、その給料から出してもらっていた」

 その後、正氏はユニセフ協会の仕事に献身し、晩年になっても海外に出かけ、徹夜で原稿を書いたりするようなハードな生活を続けた末、88年に当時、麻布大交差点の傍にあったユニセフ協会の事務所へ行く途中、脳溢血で倒れ入院、その後も91年にはユニセフ協会顧問として活動を続け98年に死去した。

 正氏が倒れる直前の88年に、当時、竹下内閣の幹事長代理を務めていた故・橋本龍太郎氏(大二郎氏の兄、元首相)らに勧めて設立されたのが、超党派の議員による日本ユニセフ議員連盟だ。龍太郎氏は00年から死去する直前の06年4月まで会長を勤めた。

 こうした家族ぐるみのユニセフ協会との縁もあってか、アグネス氏とは高知県知事時代に「児童ポルノ」とは別の問題で協力してもらってから、縁が深まったという。昨年、東京に戻ってきてからはアグネス氏の自宅兼事務所を訪問したこともあるそうだ。

「二つの義理と、”児童ポルノ”をなくしていくことに反対する、あまり積極的な理由はないなという思いで(国民運動に)賛成したんです」

 こうして橋本氏が語ったのは、これまでの規制論議の中では出てこなかった新しい視点だった。
(【中】につづく/取材・文=昼間たかし)

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最終更新:2010/11/08 18:00
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