人生の一大事にはぜひ使いたい! じゃんけん必勝法
#へんな社会学
Flicker.
世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。
「最初はグー、じゃんけんぽん!」
私たち日本人は、生まれてからいったい何回の「じゃんけん」をやっていることでしょう。大人になるにつれてじゃんけんをする機会は少なくなっていくんでしょうけど、それにしてもすごい回数だと思います。単なる遊びのこともあるし、何かを賭けたりすることだってあると思います。時には人生の一大事を賭けちゃうことも。
最近では、「センターの座」をめぐって、AKB48のメンバーがじゃんけんで争っていましたね。昔なつかしい『アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ系)でも、解答者が半分に減らされる「じゃんけんコーナー」がありました。
時には人生を左右するほど重要なときにも使われる、じゃんけん。いったい、いつ頃から日本に存在しているのでしょう? 清少納言や紫式部、徳川家康も子どもの時はじゃんけんをして遊んでいたのでしょうか。
調べてみると、じゃんけんの誕生は19世紀の後半で、意外と最近のことでした。誰がどこで発明したのかはハッキリしていません。もともと古くからあった各種拳遊び(本拳、球磨拳、虫拳、蛇拳、狐拳など)から派生したもので、そのシンプルさがウケ、一気に広まりました。
今でもいくつかの拳遊び(出す指の数を当てる●●遊びなど)は残っていますが、子どもを含めた日本人全員が説明無しに出来る拳遊びと言えば、じゃんけんだけではないでしょうか。
その後、数十年は日本国内で小さな覇権争いをしながら、じゃんけんは成熟していきました。小さな覇権争いとは、例えば「チョキは親指と人差し指で作るか、人差し指と中指か」「かけ声は『じゃんけんぽん』か『じゃんけんホイ』か」などです。ほぼ国内でじゃんけんの形が統一されて安定したのも束の間、じゃんけんは大きな転換を迎えます。
それは海外への輸出です。
よくヨーロッパなどで行われる「コイントス」(投げたコインの表裏を予想)がサッカーと共に世界で知られるようになったように、日本のじゃんけんは意外なところから世界に向けて発信されました。それはアニメです。
日本製のアニメが世界中で放送されるにつれ、「あのアニメの中でやっている”じゃんけん”て何だ?」という感じで、徐々に世界に広がっていきました。
また、日本人が海外旅行に出かける機会が増え、その影響で広まっていったという経緯もあります。こうして少しずつじゃんけんは世界に広がり、今では世界大会が開かれるほどになりました。
決してみんながやってるわけではないですが、知ってる人は知ってる、やってるというレベルです。そういう意味ではルービックキューブとかUNOと同じような立場かもしれませんね。日本でもルービックキューブやUNOは有名ですが、頻繁にやってる人はそんなにいないでしょう。
日本では「後出し」や「ズル」などを除いて、「じゃんけんに必勝法はない。あくまで平等、時の運」と思われています。しかし欧米人にとってじゃんけんは、遊びというより新しい知的なスポーツのようなもので、マジメに「必勝法」が研究されています。「必勝法」と言いつつ、実際には「勝率をあげる方法」ですが。
たとえばこんな感じです。
「同じ手を続けて出す(チョキチョキ、パーパー、グーグーなど)ことに人間は抵抗を覚えるので、その心理をついて、あいこの次は<前に相手が出した手に負ける手>を出す」
「野球のバッターが投手の癖や指の動きを見て球種を予想するように、相手の癖や筋肉の動きを見て予想する」
「いきなりじゃんけんする場合、人はチョキよりグーかパーを出しやすいので、パーを出すと勝つ確率が高い」
などです。
もちろん、相手も同じことを知っていたら通用しないのですが、何も考えずに適当にじゃんけんしている人(ほとんどの人がそうですが)相手なら、それなりに通用しそうな必勝法ですよね。
実際、あるテレビ局が上のような「じゃんけん必勝法」を収得させたレポーターさんとAKBじゃんけん選抜で優勝しセンターの座を勝ち取った内田眞由美さんを勝負させたら、レポーターさんが圧倒的に勝っていました。
じゃんけんはあくまで「平等」「運任せ」であってほしいという気持ちはもちろんありますが、大きな運命の分かれ道になるような時には、ちょっと必勝法を使ってみたい気もします。
(文=のり・たまみ)
●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。
あんまり売れてないって噂。
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