自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』
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若い頃はバカやったし、今でもちょっとイイ男を見つけるとすぐ夢中になっちゃう。お気に入りのスイーツと同じで飽きるのも早くてバツ2になったけど、全然ヘコたれていないわ。だって、それが私だもん! あけっぴろげな性格で人気のセレブ女優ドリュー・バリモア、35歳。決して美人じゃないし、セクシーなくびれボディの持ち主でもないけど、明るく元気なアメリカ娘役がよく似合う。7歳のときに『E.T.』(82)に出演して以来、米国民はみんなドリューのことなら公私にわたって何でも知っている。10歳でマリファナを覚え、12歳でコカイン中毒、14歳からリハビリ施設のお世話に。2度結婚するも、いずれも数カ月で離婚。子役出身のドリューは、猛烈な早送り人生を歩んできた。でも、何度つまずいても、自分の力で立ち上がるところが彼女のチャームポイント。女優業だけでは飽き足らず、『25年目のキス』(99)からはプロデュース業に進出し、『チャーリーズ・エンジェル』(00)を大ヒットに導いた。製作も兼ねた最新主演作『遠距離恋愛 彼女の決断』では元カレであるジャスティン・ロング(『ダイ・ハード4.0』のハッカー青年)を恋人役に起用し、元サヤに収まるという荒業を披露している。
ドリュー・バリモアが製作・出演した『そんな彼なら捨てちゃえば?』(08)にジャスティン・ロングが参加したのがきっかけで、交際をスタートさせた2人。全米公認のいちゃいちゃカップルに認定されるも、お互いに仕事多忙&恋多き性格ゆえに1年ほどの付き合いで破局。ところが『遠距離恋愛』の製作と前後して、2人の仲が復活することに。ラブコメ『遠距離恋愛 彼女の決断』(原題『GOING THE DISTANCE』)の舞台裏は、ハリウッド式恋愛修復メソッドを実践するリアリティー・ドラマだったようだ。3歳年下のジャスティンのことが忘れられなかったドリューがプロデューサーとして”強権発動”したのか、復縁してから「もう、あなたとは片時も離れたくないわ」と映画も共演することにしたのか。どちらにしろ、ドリューの決断はすごいよ。
『遠距離恋愛』はNYとサンフランシスコが舞台。NYの大手新聞社で研修生として働くエリン(ドリュー・バリモア)は研修生と呼ぶにはツラいお年頃。20代のときに恋愛に突っ走ってしまい、キャリアを棒にした痛い過去がある。もう30歳、斜陽産業と言われようが何とか新聞社に正社員入社したい。一方、NYのレコード会社に務めるギャレット(ジャスティン・ロング)は何となく付き合っていた恋人と別れたばかり。レコード業界も不景気だし、ぱっとしない日々。そんなとき、酒場にあった旧式のテレビゲームがきっかけで、エリンとギャレットは意気投合。その晩、さっそくギャレットのアパートでメイクラブ。エリンは夏期研修が終われば実家のあるサンスランシスコに帰ることになっており、2人のひと夏だけの割り切り恋愛が始まる。
軽い気持ちでエリンと付き合い始めたギャレットだが、エリンは下ネタ、エロトークも全然OKの”出来た女”。ギャレットのオタク系男友達とうまく付き合い、近場の安レストランでの食事も、イヤな顔をせずに盛り上げてくれる。男は下ネタNGな美人よりも、ルックス的にはいまいちでも下ネタOKな女に高得点を与えるもの。過度に気を遣わず、普段着の付き合いができるエリンはギャレットにとってリラックスできる相手。それはエリンも同じ。新聞記者として一人前になることが優先される時期だけに、自分を拘束しないギャレットのゆるさは好都合なのだ。SEXの相性も確認済み。ん? もしかして、自分たちはお互いにウマの合う、ベストカップルなのでは? エリンがサンフランスシコに戻る日が訪れ、2人はアメリカ大陸を挟んだ遠距離恋愛に挑戦することに。
バリモア)は地元新聞社の採用試験を受ける
ことに。恋人のギャレットはNYのレコード
会社勤務。エリンは仕事と恋愛のどちらを
選ぶ?
ウディ・アレンに自分から売り込んで『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(96)に強引に出演したドリュー・バリモア。『25年目のキス』以降もラブコメのプロデュースに力を注ぎ、『2番目のキス』(05)では『メリーに首ったけ』(98)のファレリー兄弟を監督に起用、『そんな彼なら捨てちゃえば?』はテレビシリーズ版『SEX and the CITY』の脚本家チームによる同名原作本の映像化。流行ものには手を付けずにはいられない、分かりやすい性格だ。本作でも『40歳の童貞男』(05)で人気を博したジャド・アパトー作品ばりのお下劣ギャグを取り入れている。遠距離恋愛中のエリンとギャレットがテレフォンセックスに励んだり、久々の再会に我慢できずにエリンの実家のダイニングテーブルの上でドッキングを始めるなどSEXネタがふんだんに盛り込まれている。
本作の監督は、ドキュメンタリー映画『くたばれ!ハリウッド』(02)が好評だったナネット・バースタイン女史。『くたばれ!ハリウッド』は、『ある愛の詩』(70)、『ゴッドファーザー』(72)などハリウッド史に残る大ヒット作を飛ばした大物プロデューサー、ロバート・エヴァンズの武勇伝を掘り起こしたもの。二枚目俳優でありながら、さっさと俳優業に見切りをつけてプロデューサーに転職して成功を収め、人気女優たちとの数多くのラブロマンスを残したエヴァンズは、ドリューにとって親近感が湧き、尊敬できる人物だろう。そんなドリューのおメガネにかなったナネット女史は、デジカメによる最少人数での撮影クルーを組むなど、ドキュメンタリー出身者らしい演出を見せている。ドリューとジャスティン、いやエリンとギャレットか、2人がセントラルパークでデート中にいちゃつくシーンなどはゲリラ撮影。野次馬が集まる前に、ちゃちゃっと撮影したとのこと。
劇中でも現実でもラブラブのお2人だが、長いこれからの人生を生きていく上で、恋愛と仕事のどちらを優先するのか、という普遍的テーマで最後まで引っ張る本作。ラブコメとして充分に楽しめる作品だが、どうも気になるのがドリューのノーメイクに近いすっぴん顔。『チャーリーズ・エンジェル』のときはかなりCGで修正されたなんて噂になったけど、本作はナネット監督が「ドキュメンタリータッチのリアルな映像で行きましょう」と主張したのか、ドリュー本人が「ファンのみんなも、ジェスティンも飾らない私のことが大好きなはず」と考えたのか、これまでの早送り人生で酷使してきた年齢肌をさらしている。
ドリューとしては、『ローラーガールズ・ダイアリーズ』(09)で監督デビューもできたし、監督やプロデューサーとしての裏方業務に比重を置くことを考えているようだ。本命のジャスティンと無事に寄りを戻せたし、プロデューサーなら自分で作品を選び、時間も調整できるしね。それこそ『くたばれ!ハリウッド』のロバート・エヴァンズが元俳優としてのキャリアを生かして、パラマウント社の重役たちを相手に見事なプレゼン能力を発揮したように、ドリューも持ち前のバイタリティーと押しの強さで辣腕プロデューサーとしてハリウッドに君臨する日も近いに違いない。でも、ドリューのことだから、また気になる若い男優が現れたら、ちゃっかり共演するんだろうなぁ。
(文=長野辰次)
『遠距離恋愛 彼女の決断』
監督/ナネット・バースタイン 出演/ドリュー・バリモア、ジャスティン・ロング、ジェイソン・サダイキス、ジム・ガフィガン、クリスティナ・アップルゲイト 配給/ワーナー・ブラザーズ映画 10月23日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
<http://www.enren.jp>
ト・モ・ダ・チ?
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