キングオブコメディ 極限の不運と”顔芸人”のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」
#お笑い #この芸人を見よ! #キングオブコメディ #ラリー遠田
お笑い芸人とは、自分たちの知恵や発想だけでなく、趣味、特技なども含めて、手持ちのあらゆる武器を臨機応変に使うことが求められる職業である。そんな彼らが持っている武器の中でも、最も重要なもののひとつが「顔」だ。顔や外見は芸人にとって名刺のようなものだ。顔面で笑いが取れる人、覚えやすい特徴的な顔をしている人は、それだけで他の芸人よりも一歩リードしていることになる。
ただ、「笑いを取るための武器」としての顔の破壊力があまりに大きすぎると、それが時として邪魔になることもある。「悔しいです!」でおなじみのザブングル・加藤歩は、「何やっても顔芸だと言われる」とその苦労を語っていた。
お笑い界には、加藤のように、「何やっても顔芸」という聖域に到達している者がいる。彼らのような「奇跡の顔面」の持ち主は、舞台に上がった瞬間から笑いが取れるというメリットがある一方で、どんなに優れたネタを演じても顔芸のイメージがつきまとう、というデメリットも抱えているのだ。いわば、「名前負け」のように、ネタが顔に負けてしまうという現象がしばしば起こるのである。
そんな「顔面vsネタ」という仁義なき戦いを10年以上も続けてきたのが、キングオブコメディである。日本一の「稲中」フェイスとして名高い今野浩喜の顔面は、一度見たら忘れられないものがある。ただ、その印象があまりに強すぎるために、顔面ばかりが注目されてしまうという悲しい宿命を背負ってきた。
今野はもともと、少し皮肉っぽい鋭い発想力に秀でたタイプの芸人である。それは、彼らのコントにも十分に生かされている。だが、それがなかなか世間には伝わらなかった。いつまで経っても「キンコメ=あの(強烈な)顔」というイメージをずっと引きずってきたのである。そこで彼らも、『爆笑レッドカーペット』などのショートネタ番組に出るにあたっては、顔面を飛び道具として、それを軸にしてネタを組み立てていた。
ただ、そこで今野が女子高生役で連発した「……みたいな」というフレーズがちょっとした流行語になってしまったのも、コント芸人である彼らにとってはむしろ足枷になっていた。一発ギャグのような「フレーズボケ」は、必ずしも彼らの本業ではないからだ。
また、彼らは私生活でも、不幸なアクシデントに巻き込まれて、遠回りを強いられたこともあった。それは、2007年に起こった高橋健一の痴漢騒動である。その年の7月、地下鉄車内における痴漢容疑で高橋は逮捕され、芸能活動休止を余儀なくされた。本人は容疑を否定しており、最終的には不起訴処分となって08年1月に復帰を果たした。
そうやってずっと寄り道、回り道を繰り返してきた彼らが、ようやくその真価を見せつけたのが9月に行われた『キングオブコント2010』だった。ここで彼らは、並み居る強豪を振り切って、爆笑をもぎ取るパワフルな2本のコントで高得点を獲得して快勝。念願のビッグタイトルを手にした。
思えば、「キングオブコメディ」というコンビ名も、かなりの大風呂敷である。芸名に負け、顔面に負け、いつもいろんなものに振り回されてきた彼らが、コントの面白さを真正面から評価された意義は大きい。実はコント芸人としてずっと王道を歩んできた2人は、名実共にコント界の「キング」となることに成功したのである。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
【イベント情報】
10月31日(日)
ラリー遠田×岩崎夏海トークライブ
「もしM-1芸人がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
出演:ラリー遠田、岩崎夏海
※前売券はローソンチケット(Lコード:32626)、電話予約、ウェブ予約にて販売。
電話予約:tel.03-3205-1556(Naked Loft)
ウェブ予約:http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
@俳優座劇場
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